6ー4 聖なる神のご座所
6ー4 聖なる神のご座所
「でも、山を越えてじゃ、あまり大きな荷を運べないし不便だよね」
「それでもこの山を越えるしか道がないからな」
俺たちは、宿屋の1階にある酒場で夕食をとっていた。
アイダさんとルーア君、それにライザは、なんとなくまだ馴染めていない様子だ。
アネッサは、ジョッキで酒をあおりながら足下にいるロリスに干し肉を与えながら世間話的に俺に話す。
「ならば、もっと違う道をつければいいのではないか?」
違う道?
俺が首を傾げているとアネッサがふんと鼻を鳴らす。
「山が邪魔ならそれを無くせばいいだろう」
「山を無くせるわけがないだろうが!」
アイダさんが言うが俺は、ちょっと考え込んでしまった。
前世では、トンネルを造って道を変えていた。
それをここでもできないものだろうか?
俺は、食事の後、1人部屋にこもって考えていた。
この世界では、トンネル工事なんていう大がかりな工事のことはまだ聞いたことはなかった。
俺は、魔鏡を取り出すと訊ねた。
「このロームニス山脈にトンネルを掘ることは可能だろうか?」
『可能です。ただし、山の民を説き伏せることができればですが』
魔鏡は答えた。
『山の民にとってロームニス山脈は、聖なる神のご座所なのです。なのでその山に穴をあけることはとても許せることではないでしょう』
「山の民、か」
俺は、小声で呟いた。
このライズの街には、山の民も商いにやってくる。
しかし、山を離れてこの地にいつく者は少ないとルーア君が言っていた。
実際には、山を降りてこの街で暮らしている山の民というのは、山を追われた者が多いらしい。
なんらかの禁忌を侵した者やら山を勝手に抜けた者とかが山に戻ることが許されずこの街で暮らしているのだとか。
ルーア君たちもよそ事ではない。
街で人さらいに拐われたライザはともかく勝手に山を抜け出したルーア君は、もしかしたら山に戻ることが許されない可能性があった。
俺は、ルーア君のこともあるし、なんとかして山の民のもとを訪れ話し合いたいと思っていた。




