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4ー8 蓮

 4ー8 蓮


 俺たちは、最初にロームニス山脈の麓にある街ライズへと向かうことにした。

 「商売するならライズへ向かう方がいい」

 そうアイダさんが俺に言った。

 なんでもライズは、山の民が集まってくる街なんだとか。

 山の民というのはロームニス山脈にすんでいる人たちで正式にはこのセフィール辺境伯領の領民ではない。 

 はっきりいうなら王国民ですらなかった。

 いずれの国にも属することのない人々。

 まつろわぬ民である人々らしい。

 そんな人々がいるとはアイダさんに聞くまで俺は知らなかった。

 というか。

 俺、アナゼルの街から出るのも初めてだし!

 赤っぽい土ぼこりが舞う街道をのんびりと進みながら俺は、ドキドキしていた。

 だが。

 いくら進んでも草原が続くのみ。

 すれ違う者すらいないし!

 退屈してきている俺にアイダさんが含み笑いを漏らす。

 「この辺は、湿地帯だからな。村も当分ない。子供には、退屈かもしれんな」

 「湿地帯?」

 どうりで道がぬかるんでいると思った。

 俺は、よくよく目を凝らしてみた。

 すると。

 繁っている草は、湿地に生息しているものばかりのようだった。

 しかも、その草に紛れて見覚えがある大きな葉っぱが?

 「あれ……蓮じゃない?」

 「はす?」

 アイダさんが首を傾げる。

 「はすってなんだ?」

 俺は、蓮についてできるだけ詳しく説明した。

 「水の中にはえる植物で綺麗な花を咲かせるんだ。そして、根っこは食べられる」

 「へぇ」

 アイダさんが興味深げに俺の話に耳を傾ける。

 「この湿地帯にそんなものがあったとはな」

 「確か、蓮の実も食べられる筈だよ」

 俺は、記憶の糸を手繰りよせる。

 だが、それぐらいしか思い出せることがない。

 「クロウズは、食べ物のことはよく知っているんだな」

 荷馬車の奥から聞いていたらしいアネッサがからかうように言うものだから俺は、ちょっと顔が熱くなる。

 「俺が知ってるのは、食べ物のことだけじゃないし!」

 ちょっとぷんすかしているとアイダさんが笑いながら俺にポケットから取り出した小さな木の実らしいものをくれた。

 「ほら、ラムの実だ。甘くてうまいぞ」


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