15ー6 笑顔
15ー6 笑顔
ミリィは、キラキラ輝く瞳で俺をじっと見上げていた。
何かを待つように。
グレンアイヒが俺の脇をつつく。
「名前!」
あっそうか!
俺は、慌ててミリィに応じた。
「俺は、クロウズ・セフィールだ」
「クロウズ様」
ミリィは、噛み締めるように俺の名を呼んだ。
「わたし、この学園にきてからまだちょっとしか経ってなくて。よかったら一緒に馬車停めまでエスコートしてくださいませんか?」
上目使いに見つめてくるミリィに俺は、冷めた眼差しを向ける。
「別にいいけど……君の他の取り巻きはいいの?」
「取り巻き?」
ミリィが首を傾げる。
「もしかしてわたしにいつもよくしてくださる皆さんのことですか?」
ミリィは、にっこりと無邪気な笑みを浮かべる。
「皆さん、優しくしてくださって喜んでいます。最初、とっても不安だったんですけど親切な方ばかりで安心してるんですぅ」
なんだか不毛な会話だな。
俺は、仕方なく馬車停めまで彼女と一緒に行くことにした。
「クロウズ様、それにもしかしてグレンアイヒ様でいらっしゃいますか?」
ミリィに問われてグレンアイヒが答える。
「いかにも、我はグレンアイヒだ」
「やっぱり!」
きゃっ、とミリィが両手を胸の前で握って微笑む。
「噂聞きました。入学試験の時、クロウズ様とグレンアイヒ様、それにロリス様がすごい記録を打ち立てられたとか」
すごい記録?
俺は、小首を傾げる。
そういやそんなこともあったっけ?
「わたし、まだ、この学園に来たばかりで心細くって。皆さん、わたしのお友だちになってくださいませんか?」
うん?
俺は、自分がなぜか、彼女の言うことを簡単に受け入れそうになっていたことに気付いてしまう。
おかしい!
俺は、気を引き締めるとミリィをじっと見下ろした。
「聖女候補の方からお友だちに、と言われると悪い気はしませんね」
俺は、にっこりと貴族の笑みを浮かべる。
「どうか、よろしくお願いします、ミリィ様」
ミリィは、俺に向かってぱぁっと花が綻ぶような笑顔を浮かべた。
「嬉しいですわ、クロウズ様」




