15ー2 ルース
15ー2 ルース
「だから」
ロシナンテは、少し涙ぐんでいるように思われた。
「あの時……ほんとは死ぬ筈だった私をあなたが救ってくれた時、私は、素直に受けとることができなかったのです」
ロシナンテが言葉を詰まらせる。
「聖女になることができなくなった私なんて生きる価値なんてないのだから」
ロシナンテは、自嘲する。
「実際にあの失態の後、家族は私を捨てました。それに教会も。私を聖女として利用していたルースにすら捨てられました」
「ルース?」
俺が口を挟むとロシナンテがはっとした。
「ルースは……私も詳しくはわからないのです。ただ、いつ頃からか私の側にいて仕えてくれていた」
いつの間にかロシナンテの側仕えとなっていたルース。
「彼に聖女の花を育てることで聖女としてのアピールができるときいて私は、喜んで花を育てることにしました」
ロシナンテが苦しげな表情になった。
「でも……私は間違えていた。人の命を軽んじて……あの時の私は狂っていたのです。あの花を咲かせなければルースにすら見捨てられると思っていたのです」
「ルースは、いったい何者なのですか?」
俺の問いにロシナンテは、首を傾げる。
「あれが何者かはわかりかねます。
でも人の世のものではないのかもしれません。あの男の持つ力……あれは、ただの魔法ではなかった。何か、もっと穢らわしいもののような気がします」
「穢らわしいもの?」
ラザニエルさんにきかれてロシナンテが考え込む。
「なんと言えばいいのか……魔物とか魔族とか、そんなものに近く思われます」
魔族?
俺は、ラザニエルさんと顔を見合わせる。
この世界に魔族は、存在しないことになっていた。
魔王が全ての魔族を産み出す。
そして。
魔王が勇者に封じられて以来、魔族は産み出されてはいない。
でも。
それは、本当なのか?
もしかしたら魔族が残っているのでは?
俺の考えにラザニエルさんは、首を振った。
「この世界には、あたしの知る限りでは、もう魔族はいないわ、クロウズ君」
「じゃあ」
俺は、自分の手の平に残された傷を見つめた。
「あの黒い炎は、いったい?」




