14ー2 春の雨
14ー2 春の雨
王都に早い春が来る。
しとしとと雨が降り続く空を俺は、じっと見上げた。
灰色の空の遠くに光が走る。
遠雷が響いていた。
俺は、アイダさんに用立ててもらった馬車に乗ってラザニエルさんと2人、教会を目指していた。
ロシナンテに会うために。
王都にある大聖堂の門を叩くと神官たちがここで待つようにと言い残して去っていった。
そのまま何時間もの時が過ぎた。
さすがに俺は、我慢の限界で!
俺が門に向かって片手を振り上げたその時、突然に扉が開いた。
現れた神官がぎょっと目をむく。
俺は、慌てて腕を下ろして背後に隠す。
「……セフィール辺境伯代行、クロウズ卿こちらへどうぞ」
おそらく高位神官なのだろう若い男に案内されて俺とラザニエルさんは、大聖堂の門をくぐった。
大聖堂の中は、薄暗くて湿っぽい臭いがしていた。
腐敗した臭いだ。
俺は、ムカついていた。
教会は、腐っている。
神官は、俺たちをそのまま地下にある牢獄へと連れていった。
辛うじて蝋燭の灯りが点っている程度で人の顔も見分けがつきにくい。
木の扉の前で足を止めた神官は、俺たちを振り向くと告げた。
「面会は、お1人のみです」
俺は、頷くとラザニエルさんを外に残して牢の中へと入っていった。
すえた臭い。
暗闇に目が慣れると壁の側の床の上に何か白いものが転がっているのに気がついた。
「……ロシナンテ、嬢?」
呼び掛けるがしばらく返事がなかった。
もしかしてロシナンテは、眠っているのか?
俺がそう思いかけた時、不意に低い軋むような声が聞こえた。
「何のようかしら?婚約者殿」
ロシナンテの言葉に俺は、ちょっとホッとしていた。
まだ、心は生きてる!
「なんでこんなことに?」
俺が問うとロシナンテが笑いだした。
狂ったような、悲鳴のような笑い声が辺りに響き渡る。
「なんで?それをあなたが問うかしら?私をこんな状況に堕としたあなたが?」
「俺は!」
言いかけて言葉を飲む。
暗闇にいるせいか息苦しくて!
俺は、首もとをくつろがせながら手を前に上げて魔法で光を灯す。
不意に明るくなった。
照らしだされた牢内の情景に思わず吐き気を感じ俺は、呻いた。
ロシナンテは。
あの美しかったロシナンテは、今では面影も残されてはいなかった。




