13ー5 涙
13ー5 涙
暗闇を染め上げる炎が鎮まるとロシナンテがよろよろと燃え落ちた聖女の花へと歩み寄っていった。
「そんな……バカな……」
ロシナンテは、まだ火が燃えている崩れた花の根本を素手で掘り返し始めた。
「まだ、完全に死に絶えてはいない筈よ!根さえ生きていれば!」
ロシナンテが声を上げた。
「あなたも手伝いなさい!ルース!」
泥にまみれて手を焼かれながら花の根本を掘り返しているロシナンテを離れた場所から見つめていたローブの男は、冷ややかな声を発した。
「この聖女もここまでか……」
ローブの男がすぅっと手を上げてロシナンテへと向ける。
黒い魔方陣が浮かび上がり中から槍が現れる。
「せめて、この地に眠る聖女の仲間となるがいい」
槍がロシナンテに向かって放たれた。
ロシナンテの振り向いた表情が凍りつく。
「なぜっ!?」
ロシナンテを槍が貫くその瞬間に俺は、ロシナンテの前に飛び出していた。
「なんだと!?」
ロシナンテを狙った槍を空中で掴んで止めた俺を見て男が驚愕の声を漏らす。
「この私の槍を素手で止めただと!?」
「ぐっ!」
槍を握る俺の手が闇に侵食されて皮膚が溶け落ちる。
鋭い痛みに俺は、顔を歪め槍を男に向かって投げ返した。
手を見るとひどく焼け爛れていた。
「クロウズ様!」
駆け寄ってきたレイラ様がすぐに俺の傷を嫌そうと治癒の術をかける。
「無駄だ」
ローブの男の口許が弧の形を描く。
「闇の炎で燃やされた傷は、聖女の力でも癒せん」
「くぅっ!」
癒えない傷から血が滴り落ちるのを呆然と見つめていたロシナンテが呟く。
「なんで?なんで、あなたが私を助けるの?クロウズ・セフィール」
「人を助けるのに理由なんていらない!」
俺は、癒えない傷にハンカチを巻きながら答える。
ロシナンテは、表情の消えた顔で俺を見上げている。
「あなたは、私を憎んでいるんでしょう?それなのに……」
ロリスがロシナンテの前に跪くと炎で焼かれたロシナンテの手に治癒魔法をかける。
「主様は、泣いている女の子を見過ごせない人だからな」
「えっ……」
ロシナンテがはっと気付いたように自分の頬を流れ落ちている涙を拭った。




