10ー10 冬の祭り
10ー10 冬の祭り
このアダムズ王国の北部地方では冬が厳しく長い。
セフィール辺境伯領にも長い冬がやって来る。
そんな冬の始まりにあるのが冬の女神ロミエルの祭りだ。
街では、家々の軒先に冬にも緑の葉をつけるロミの木の枝と固く焼いた黒パンをぶら下げる。
それは、勤勉を重んじる冬の女神への捧げ物だ。
なんでも『我々は、黒パンを食べて冬の間も勤勉に過ごしていますよ』ということなんだとか。
平民のふりをして潜り込んだ俺とテイルズさんに抱っこされているロッテ、それにラザニエルさんとグレンアイヒ、アネッサ親子も一緒だ。
ロリス以外は、みな、平民の服装に暖かなコートを羽織っている。
「あれは、なんだ?」
グレンアイヒが露天に並んだ店を指差す。
それは、精霊の形をした焼き菓子の店だった。
「冬の精霊のお菓子ですわね」
ロッテがグレンアイヒに教えてやる。
「これからそれぞれの家で子どもたちに配るために買い込むお菓子を露天で売っているのです」
ロッテは、物知りだ。
しかし、ほとんど家敷から外に出ることがないロッテにこういうことを教えているのは、テイルズさんだった。
子供好きで、ロッテのことを可愛がってくれているテイルズさんは、ロッテの騎士になった。
この国では、貴族の娘が年頃になると守り主として騎士が選ばれる。
ロッテも7才になり守り主が選ばれたのだった。
そういう俺ももうそろそろ8才になる。
まあ、まだまだお子ちゃまな年齢だけど。
10才になれば正式に家督を継ぐことが許される。
それまでに俺は、地盤をしっかりと固めなくてはならない。
領地経営は、ラザニエルさんとカイさんがいるから安心なんだが今までの代でしてきたことのせいで財政は苦しい。
それでも豊かなこの地だ。
数年耐えればなんとか持ち直せるのではないか、とカイさんは言っている。
俺が提案したラムの実からの砂糖作りも始まったし。
イームス布の売り上げも順調だ。
俺たちは、家敷で配るためのお菓子を露天商から買い込むことにする。
「もっと色とりどりのお菓子があればいいのにね」
ラザニエルさんが言うので俺は、にっこりと笑う。
「たぶん、来年の祭りには色とりどりのお菓子が並びますよ」
「そうなのか?」
グレンアイヒが破顔する。
「楽しみだな!主よ!」




