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第1話 完堕ち。

ーーーーーーー




その日は暑い昼下がりであった。

四季の起伏が少なく、過ごしやすいこの地域にしては珍しい気候である。



ぼんやりと座り込む自分が感じたのはその暑さと、ぼたぼたと音を立てる朱色の感触。




赤いアサガオが逆さに咲いたようなその光景は、霞む目には何故か綺麗に見えていて。

かき集めるように伸ばした手は、空を切った。




そういえば、手...無いんだったな。




急速に呆けていた頭へ記憶が蘇り、感じた頭痛に耐え切れず嘔吐する。

吐き出された内容物もまた、アサガオと同じ色をしていた。





「ここまでだね。君は強かった。でも、ここまでだ」




「...ハッ。まぁ、そうやねぇ」




「言い残す言葉はあるかい」




「...」




一瞬考える。

両手が切り飛ばされ、腹部には腕が入りそうな大穴が空いていても...繰り出せる何か。

形成逆転の手段はあるか?




(いや、無いね。あったとしても...)




今回の戦闘で、今使える手段は全て使った。

それでも負けたのだ。

後悔も、悔しさも無い。



あるのは清々しさと、少しの申し訳なさ。




「ごめんねぇ、アルちゃん。...やっぱ負けたわ」




アルセア。この2年間、一緒に過ごした寂しがり屋の女の子。

きっと彼女は悲しんでくれるだろう。俺がいなくなったことに。



でも、俺の死を悼んでくれる人がいる。

だからこそ、俺は悔い無く逝ける。



充実した人生だったと胸を張って言える。




(ごめん。ごめんな)




視界に黒いモヤがかかる。

遠のく体の感覚や重さ、そして代わりに訪れる、朧げな過去の記憶。

指で四角を作った幾つもの景色。手ずから赴いて見つけた絶景。何気ない日々に見つけたもの。それらを彩る...彼女の笑顔。



この世界の全てを見にいくんだと、そう決めた人生だったのに...この2年間は君を見てばかりだったな。



出会ったのは秋頃だったか。

あの日の俺は、いつものように散歩に出掛けて...




ーーーーーーーー





いたいけな異世界人を骨抜きにした黒髪少女の卑劣な手法を存分に書いていきたい。



ただこちらは息抜きで書き始めた小説が詰まった時の更なる息抜き


ひっそりとゆっくりと不定期に。

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