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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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8/10

自宅②

「よいしょっと……」


2つの箱を重ねて持つ。重みで秋子(あきこ)の体がよろけた。大きなモニターの電源がついて、見知らぬドラマが流れ始める。


(私がいるのに)


2人には明らかに無視されている。もはや怒る気もおきない。


(……もう帰ろう)


箱を両手で持って、彼女はゆっくりと移動する。背中で2人が話す言葉が、耳に入った。


「あの子も大変ね。あんなにたくさんの荷物を抱(かか)えて」


「お前は本当に優しいな。でも、あいつのことはもう気にしなくていいんだよ。何の関係もない相手だから」


(……何の関係もないって)


雪也(ゆきや)の言葉が、頭の中に残ってしまう。泣いてもどうしようもないとわかっていたのに、秋子は玄関で涙を流した。箱を置いて、靴(くつ)をはく。


(ダメだ、これ……)


気持ちが沈(しず)む。彼女は床に置いた箱を持って、外に出た。アパートの前に、春斗(はると)がいる。


(……あ)


目があった。彼は小さく頭を下げてから、階段を上がってくる。


「すいません。ご迷惑かとは思ったんですが、どうしても気になってしまいまして。お手伝いしますね」


「あ、いいよ、そんな……」


「おかまいなく。僕がしたいだけですから」


そう言って、春斗は荷物を取り上げた。横に並んで、彼が微笑む。天使のようだと言われる顔で。


「どうか僕を頼ってください。秋子先輩」


その目は真剣で、彼女は何も言えなくなる。並んで車に向かいながら、秋子は黙ってうつむいた。


「……雪也にね、もう関係ない相手だって言われたの」


やがて彼女はポツリとつぶやく。春斗は目を細めて、耳をすませた。


「苦しかった。辛(つら)かった。……これから、どうすればいいのかわからない。無視され続けて、いろいろ言われて。同じ会社だから、明日からまた顔をあわせて仕事をしなきゃいけないのに」


「……どうしてもイヤなら、辞(や)めて次を探せばいいんですよ。僕のマンションに住みながら、再就職を目指しませんか」


本当は、結婚してほしいと言いたかった。だが、彼は自分を抑(おさ)えこむ。秋子の負担(ふたん)にはなりたくなかったから。


「……ありがとう」


しばらくしてから、彼女は小さな声で言った。


「須東(すどう)くんに迷惑だから、次の仕事が見つかったら、すぐに出ていくね」


「迷惑だなんてことは、まったく思っていませんよ」


そこはすかさず否定した。春斗はトランクに箱を入れて、扉(とびら)を閉めながら柔らかく笑う。


「ですが、あなたがどうしても気になるのなら、代(か)わりにご飯を作ってください。朝と夜だけでもありがたいです」


「……そんなことでいいの?」


秋子は首をかしげていた。


「私、レパートリーは多くないから、すぐに飽きると思うけど」


「いいんです」


春斗は無理やり押しきった。飽きることなど、ありえないと思いながら。

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