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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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5/10

後輩の家③

泣きつかれて、秋子(あきこ)は眠くなってきた。カクンと頭が落ちそうになって、彼女は慌(あわ)てて顔を上げる。


「……ベッドに行きますか?」


気がついたら、整った顔が近くにきていた。春斗(はると)は彼女を抱きあげて、優しく微笑む。


「僕が運んであげますよ」


「や……その、私、重いから」


「そんなことはありません」


彼の目が細められる。春斗(はると)は秋子を大きなベッドまで運んで、そっと寝かせた。


「むしろ、先輩は痩(や)せすぎです。ちゃんとご飯を食べられてますか?」


「う。そ、それは……」


秋子が目をそらす。痛いところを突(つ)かれてしまった。


(……だって、食べすぎるなって言われてたから……)


太って見苦しい姿になるのはやめろと、雪也(ゆきや)に何度も言われてきた。頑張って自炊して、栄養バランスを考えて、食べる量も少なくして。


(……でも、それも全部ムダだったんだ)


1度枯(か)れたと思った涙が、また流れだす。大きなベッドに横たわったまま、彼女は彼の顔を見上げた。


「……ねえ、先輩」


枕もとに春斗が立つ。彼は秋子の体に、かけ布団をかぶせながら言った。


「今は、何も考えなくていいんですよ。ゆっくり休んでください」


「……うん」


彼女はうなずいて目を閉じる。しばらくして、寝息が聞こえ始めた。


「……秋子さん」


身を屈(かが)めて、春斗は彼女の寝顔をのぞく。涙のあとが残る顔も、とても愛らしくて。彼はベッドのそばから離れられなくなった。


「明日も休みだし、いいか」


諦めて、彼は床に座りこむ。眠る彼女は、まるで天使のようだった。


「……やっぱり、可愛い……」


『先輩はダメだよ』


昔、彼女に紹介された女の子が、言っていたことを思いだす。


『あの人、彼氏のことが大好きだもん。……アタシじゃダメ?』


彼女は最初の飲み会にいた。1番、長く関係が続いた相手だ。だけど。


『……ゴメン。もう、別れてほしい。このままじゃ、アタシ、先輩のことを嫌いになるから』


そう言われて、手を離した。仕方がなかったのだと思う。春斗は彼女に、どうしても興味を持てなかった。


『……ままならないね。春斗くんは、先輩と付き合いたかったんでしょ』


それでも、彼を理解してくれたのは彼女だけだった。感謝はしている。だが、それだけだ。


「……北松(きたまつ)雪也(ゆきや)。別にいいよな? お前は別れたんだから」


彼女がいても女遊びをやめない。そんな男は、秋子にはふさわしくない。薄く笑って、春斗はつぶやく。


「人のものが欲しいだけの女と、色々な女をとっかえひっかえしたい男か。ある意味、お似合いだな」


スヤスヤと眠る秋子は知らない。彼が今まで、何をしていたのか。初恋をこじらせて、探偵まで雇って、欲しかったものが何なのか。


「先輩は、僕がもらう。2度と、お前の手には渡さない」


春斗の言葉は、氷のように冷たかった。

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