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隣に住む高嶺の花のクラスメイトは俺にだけ世話焼きな幼馴染のソングライター  作者: 月城曇


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7/7

美緒の朝

 んぅ──もう朝か。


 私はどうやらパソコンの前で作業していてそのまま机に突っ伏して寝てしまったみたいだ。立ち上がると身体のあちこちが痛む。時刻は朝の六時半、確か作業が終わったのは四時半ぐらいだったから二時間は寝れたのかな。


 ピピピっとスマホの着信音が鳴る。灰原さんからだ。私はベッドの上に放ってあるスマホを取ろうと作業机から離れようとしたけれど──ガクンと膝から崩れてその場に座り込んでしまう。


 仕方ないのでそのまま四つん這いになって歩き、なんとかスマホをとって通話に出る。


「もしもし美緒、先方からokが出たわ」


「そうですか、良かったです」


「それで次のスケジュール……てこれは後にした方がいいかしらね」


「そうですね、ほぼ徹夜明けなので」


 通話の切れたスマホをベッドの上に置いて私は重たい身体を気合いで立ち上がらせて制服に着替えると彼の住む場所へと向かった。


 玄関から入って寝室の前で止まり、そっと音を立てないようにドアを少し開ける。私には高野くんに言えない秘密がある。これはその一つで私はいつも彼の寝顔を盗み見てから朝食を作ることにしている。


 とはいえ、今日は止められているので私は二人分の食パンにバターを塗りトースターで焼くだけにしておいた。私が高野くんに世話を焼く理由はいくつかあるけれど、そのどれも彼には知られていないと思うしまだ知られなくていいと思う。


 眠い目をこすりながらパンをかじっているとリビングの扉が開き寝起きのぷかぷかしてる高野くんが入ってきた。


 はあっと思わず息が漏れそうになる。なんて可愛らしいのだろう、このゆるんだ高野くんが見れるだけで早起きする価値はあるのだ。


「ん、おはようって美緒朝食は無理しなくていいって言っただろ」


「無理はしてないよ、トーストだしお昼のお弁当も今日は作らないし」


「とは言っても明かに疲れてる顔してるんだが……」


 あれれ、念入りに冷水で顔を洗ったのにどうやら隠しきれていないみたいだ。でもこの問答は正直切りがない。


「いいから、食べる!」


 私はまだ眠たげな高野くんの口元にトーストを突き出す。


「分かった分かった、自分で食べるから」


 高野くんはそう言いながらもパクパクと数口はそのまま食べた。ペットは飼ったことないけど可愛い動物に餌をやる時の心境はきっと今みたいなものなのだろう。


 私も高野くんも早起きしてしまったので登校まで時間があった。私たちはソファーに並んで座りちょっとだけテレビゲームで遊ぶことにした。


 このレースゲームで高野くんに勝てたことは一度もなかった。だからこそ今日こそは──その気合いは充分だったのだけど。


「んう──」


 ふいに身体から力が抜けて隣に倒れそうになる。寸前で高野くんが支えてくれたので完全に倒れはしなかったけど。


「少しだけ寝た方が良いよ、時間になったら起こすから」


 おかしいな、と思う。いつもならもっとそつなく自分の疲労を隠しきれるのだけど、今回は少し甘えたくなってしまった。


「うん」


 ゆっくりと高野くんの膝の上に頭を乗せて、そのぬくもりを感じながら徐々に意識が遠のいていく──。夢の世界に入る直前、なにかが頭を撫でた気がした。もしかして高野くんが私の頭を撫でてくれたのだろうか? もしそうなら良いなと思うし気のせいだったとしても幸せな勘違いだ。


 そうして私は登校時刻ギリギリまで高野くんの膝の上で眠っていたのだった。

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