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隣に住む高嶺の花のクラスメイトは俺にだけ世話焼きな幼馴染のソングライター  作者: 月城曇


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プロローグ

 リビング横にあるオープンキッチンそこにはエプロン姿の幼馴染、雪乃美緒が身体を左右に揺らしながら鼻歌を歌い鍋をかき混ぜていた。


「その歌、新曲か? 聞いたことないメロディーだけど」


「うん、そうだよ~っていつの間に背後に……」


 食卓椅子に座っていた俺がいきなり背後に現れたのが驚いたのか左右に揺れていた身体がびくりと一瞬跳ねた。


「さては、甘えたくなってきたんでしょ~いいよ後ろから抱きつくのくらいは許してあげる」


 ふへへっとはにかむようにこちらに微笑む美緒、昔からそうだった。俺と美緒はこれくらい距離の近い幼馴染で周囲からはあの二人将来結婚間違いなしなどと冗談か本気か分からないことを言われていた。


「料理の邪魔はしたくないからな、やめておく」


 俺のその返答に今度はむぅと不服そうに頬を膨らませる美緒、学校では一つの顔しか見せない彼女も俺の前だと表情や喜怒哀楽は豊かになる。


「じゃあ、強制味見の刑!」


 そう言って美緒はスプーンで味噌汁をすくって俺の口に運んだ。


「熱っ」


「あはは、私に期待させて裏切った罰」


「別に期待させたわけじゃないけど、新曲のメロディーが良かったから傍で聞きたかっただけ」


 ふーんと美緒はなにか考える素振りをして、ハッと何か閃いたように目を少し見開く。


「そんなに近くで聞きたいなら──耳元で」


「もう充分聞けたし、やっぱり料理の邪魔しちゃ悪いから食卓に戻ってるわ」


 美緒がそれを実行する前に俺はそそくさと食卓椅子の方へと戻っていった。危ないそんなことされたら心臓がいくつあっても足りないぞ。


「……いくじなし」


 美緒は口を尖らせて小さくそう呟いた。いくじなし、確かにその通りかもしれないだからこそ俺と美緒の関係は距離の近い幼馴染で止まっている──それは間違いないのだ。


 夕食を食べてからはお互いリビングに並んで座り、好きな音楽をスマホのスピーカーで流してホットミルクティーを飲んでいた。このマンションの一室に美緒が通うようになってからずっとこの夕食後のリラックスタイムは日課のようなものになっていた。


「ふーふふん~」


 美緒が鼻歌交じりに身体を揺らすたび柑橘系の香りが鼻腔をかすめる。触れようと思えばすぐに触れられる距離、それなのに俺は──


「明くんのお膝もーらい」


 そんなことを言って美緒は俺の膝を枕替わりにして横になった。そしてポツリと呟く。


「曲作り沢山頑張ってちょっと疲れちゃった……かも。膝きつかったらごめんね」


 その声はどこか弱々しくて、ちょっとだけ申し訳なさそうだった。きっと頻繁にこうして甘えることに彼女の中で多少の抵抗を感じているのかもしれない。


 俺はポンっと美緒の頭に手を置いてゆっくりと撫でた。


「お疲れ様、また歌聴けるの楽しみにしてる」


「ありがと……んう」


 美緒はどうやら余程疲れていたみたいで、俺の膝にのったまま眠ってしまった。


 外では完璧な優等生で人気者の彼女には実は俺しか知らない姿が沢山ある。


 でもそれも全部──俺と美緒がすぐ間近に住むようになった高校生の時から昔よりもはっきりと分かってきたことだ。

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