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プロローグ

――カシャっ!カシャっ!

  「いいよ、Kaoruちゃん!顎を手に乗せて微笑んでみようか!」


 激しいフラッシュの中、カメラマンがあるモデルの前で色んなポーズで撮影しながら、指示を出す。

 プラチナブロンドをなびかせながら、絵に描いたような美人モデル『Kaoru』が椅子に座りながらカメラマンの指示通りにポーズを取る。

 そして、スタッフに囲まれながら、様々なポージングでたくさんの写真を撮り、雑誌の撮影が進んでいく。


 ここは、街のカフェテリア。『最新のカフェテリア特集』で、外での撮影だ。一般人が入ってこられないように貸し切り状態。


  「よーし、これで撮影終了だ。Kaoruちゃん、お疲れ!今日もいい写真が撮れたよ!さすが人気モデルは違うね〜」

 撮影し終えたカメラマンが、誇らしげに言う。

 ひと息つき、スタッフから飲み物と上着を受け取ったKaoruは、

  「ありがとうございます。これもマネージャーやスタッフの方々のおかげです」

  「そういう謙虚なところも魅力の一つだよー!じゃあ、次も期待してるよー。雑誌の完成、楽しみにしててね?」

  「はい、頑張ります!ありがとうございました!」

Kaoruは礼儀正しくお辞儀をして、去っていくカメラマンを見送り、マネージャーの元へ。


 車の近くで、スーツ姿の20代後半の男性が立っている。Kaoruのマネージャー、西門拓海だ。

  「お疲れ。この後は、雑誌のインタビューが別スタジオであるけど、それまでは少し時間がある。近くのカフェで休憩してきたらどうだ?移動時間考えても、そのぐらいの時間はある。」

 「ありがとうございます、西門さん。じゃあ、行ってきます」

  「あぁ、近くにいるから、なんかあったら呼んでくれ」

  「はい!」

 そう返事しながら、帽子の中に髪を全部まとめて入れて、帽子を深く被りサングラスをかけて走り出す。


 先程とは別のカフェに入ると、中には何組かお客はいたが、こちらには気づいてない。

 コーヒーを注文し、いそいそと窓際の席に座り、ほっと一息ついた。すると、背後から

 「ねぇ!見た?さっきの撮影!」


 思わず肩を震わせた。どうやら後ろの席に座っている女性2人組の会話らしい。『さっきの撮影』とは、おそらく自分たちのことだろう。コーヒーを飲みながら、Kaoruは聞き耳を立てた。


  「見た、見た!すごかったよね!」

  「さっき、ちらっとKaoruちゃん見えたんだけど、雑誌で見るより顔ちっちゃかった〜!!」

  「可愛すぎる!」


 2人の会話を聞きながら、ニヤニヤが止まらなくなった。再びコーヒーを口につけようとしたとき、ふと窓の外を見ると、何人かの女子高生が楽しげに会話しながら街中を歩いてるのが見えた。その光景に、胸が痛くなり、唇をきゅっと噛み締め

  「……っ、戻らなきゃ……」

 コーヒーを一気に飲み干し、急いで立ち上がるとその勢いで帽子が床に落ちてしまう。


 ――しまった!やばい……!


 急いで帽子を拾おうとすると、先に別の手が帽子に触れ拾い上げた。

  「あ、落としました……よ」

 先程、背後で会話していた女性の1人だった。拾った帽子を渡そうと顔を上げた瞬間、固まり、目を大きく開いた。

  「え!!Kaoruさん!?」

 その驚きの声に反応して、店内にいた全員がこっちを見た。


  「嘘!?」「本物?」「マジでKaoruだ!!」


 先程の静かさはどこへやら。Kaoruをひと目見ようと店内が一斉に騒ぎ出したのだ。Kaoruは頭を抱えそうになったが、すぐに笑顔を振りまく。

  「拾ってくれてありがとうございます」

  「い、いえ!あ、あ……あの、大ファンです!いつも応援してます!握手して下さい!」

 帽子を拾ってくれた女性が、興奮気味に言いながら、手を差し出した。その手はわずかに震えていた。Kaoruは帽子を受け取り、

  「ふふっ、ありがとうございます。そう言ってもらえるともっと頑張れます。これからも応援、よろしくお願いしますね。」

 そう言いながら、握手に応える。

  「あぁ、ありがとうございます!!もちろんです!」

  「じゃあ、予定があるのでこれで…」


 人だかりになる前に、この場を去ることにしたKaoruは、帽子を被り直し、会計を済ませていそいそと車に戻り、車内の後部座席に乗り込んだ。


  「随分、急いで帰ってきたな…まさか、バレたのか?」

  「油断して、帽子落としちゃって、少し騒ぎになっちゃった…」

  「おいおい、気をつけてくれよ?お前は世間じゃ誰もが知る有名人なんだからな」「分かってるよ…」

  「わかってればいいんだが……じゃあ、急いで出発するぞ。」


 その後の雑誌のインタビューは滞りなく進んだが、Kaoruの心には先程の女子高生たちの姿が残っていた。


 帰りの車内で、後部座席の背もたれに身を任せながら、ぼんやりと車の窓に目を向ける。流れていく景色をただぼーっと眺めながらポツリと呟く――

  「『普通の高校生』……か……」


 ――モデルを辞めたいとは思わない。むしろ、楽しいし、やりがいは感じてる…けど……普通の高校生として過ごしてみたい……そんな夢見るくらい、いいよね……?


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