エピローグ
一応、同意書にサインした弟夫婦だったがすんなりと慰謝料を支払う事はなかった。
催促しても一切音沙汰がなかった。だから宣言通りに弟の給与の差し押さえを申請。そのせいで弟の職場に弟夫婦が実の息子への虐待がバレた。
『何で給料の差し押さえしたんだよ!! お陰で職場の連中からは白い目で見られるし上司から『いるだけで我が社の信頼が落ちるから』て言われて子会社に左遷の上に窓際社員だ! せっかく出世街道に乗っていたのに!!!!』
「……そりゃあ、お前の勤めている会社は子供の教育関連の会社だろうが。バレたのもお前が慰謝料を全く支払いをしなかったし、催促しても払わなかったから強制執行する事になったんだ。自業自得だろ」
『何で親が息子に慰謝料を支払う羽目になるんだよ……俺の人生終わった……』
弟は電話越しで嘆いていたが、今まで理貴が苦しんでいたのを見て見ぬふりをしていたツケだ。全く同情出来ない。
それから弟は左遷先の上司や同僚達がしっかりと監視されているお陰であれから慰謝料を滞る事はなかった。
それと、左遷先の上司が弟とサシ飲みしてくれて何か色々と言ってくれたのか自分の身勝手さを反省して、この間の電話の時には理貴への謝罪の言葉を口にする様に。……もっと早く気づいて欲しかったが。
最大の癌である弟嫁は最後まで問題ばかりを起こしていた。
何と理貴の幼馴染を養女にしようと相手家族に交渉したが、勿論拒否。幼馴染はそのまま少年刑務所に入れられた後、遠くにいる親戚の元へ性根を叩き直す事が決定された。無論、弟嫁には親戚の所在地は教える事はない。
そしてそのまま幼馴染の両親はひっそりと引っ越して行った。
弟嫁は発狂したが、それでも彼女に課された慰謝料分を払わないといけない。渋々パート等をして働いてはみたが、長年専業主婦でしかもあんな身勝手な性格だからトラブルを起こして解雇か自主退職を繰り返す。そのせいで弟と毎日の様に喧嘩をする様になり、そのストレスを高級レストランや買い物で解消していた。(どうやら幼馴染の御機嫌取りをキッカケに癖がついた様だ)
家族カードで支払いを行なって浪費を弟にバレない様にしていたが、弟がそのカードを使おうとしたときに、月の上限超えていた事がキッカケに発覚した。
これには弟も我慢の限界で離婚も視野に入れられたが、何処から聞いたのか弟嫁の大祖母に当たる人が『息子が経営している建設会社の食堂が人手不足だからと住み込みで働かせる』と手を挙げて名乗り上げてくれた。その息子が経営している会社は、外食する場所がない、しかも買い物する場所は自転車で三十分漕がないと行けない、その上大祖母が経営している小さな商店しかない場所だ。
弟嫁は泣いて嫌がったが、弟に自分の名前が書かれた離婚届を叩き付けられた上に親から無理やり弟嫁の欄を書かされて、『この条件を飲まないのなら、直ぐに離婚届を役所に出す』と宣言されて泣く泣く受け入れるしかなかった。
現在は馬鹿な事を起こさない様に食堂の仕事以外の建設会社の雑用やら住み込みの寮の掃除やらを怖いおばちゃんや男の人に怒られながら仕事をし、今では見る影もない位にしょぼくれているとか。
ただ、『もし慰謝料を完済しても夫婦生活をそのまま続けられるのか分からない、そのままそこにいて貰うか或いは家庭内別居か最悪離婚になるかもしれない』と弟は疲れた顔でそう言っていたと弟嫁の件で集まった母から聞かされた。
そして理貴の幼馴染の家族の方はウチよりもかなり酷い修羅場となった。
いじめが発覚してその事が原因で親戚から相当な怒声を幼馴染の両親に浴びせられた。何せいじめの主犯と言う立場だったし、その余波で職場を去る事になったり子供の縁談が破談となったから怒り狂うのも仕方がない。
この事がキッカケに幼馴染の両親は親戚の殆どから絶縁される事となった。
しかも既婚者だった長男も両親とは縁を切る事となった。奥さんの家族が娘に旦那との離婚を勧めていたのだが、奥さんが泣いて嫌がり何時間も長男夫婦と嫁の家族で話し合った結果、一度離婚して直ぐに奥さんの家に婿入りする形で再婚する事となった。
後に長男夫婦に子供が産まれた事がキッカケに絶縁は解除されるが、それでも可愛い孫に会えるのは一年に一回しか出来ない。
長女の方は大学卒業後はIT企業に就職後は海外の支社へ転勤後はあまり両親と連絡を取っていない。『仕事が忙しいから』と何時も連絡が取れた時に親にそう言っているが、彼女の兄家族とは度々帰国する度に会っている事を幼馴染の両親は知らない。
長女が一番、幼馴染に対して育児放棄気味だった両親と理貴と珈さんのいじめを行った妹に怒っていた。
だから両親と妹の顔を見た瞬間酷い事を言いそうになるから、二度と会わない覚悟で海外の会社に就職したのだ。
そして幼馴染は……預けられた親戚宅から脱走後、幼馴染が理貴達に行った報いを受けるが如く質の悪い犯罪者の男に監禁されて―――今は精神病院で余生を送っている。
そして幼馴染の両親は―――反省して長男家族と縁を切って幼馴染を引き取ろうとしたが、兄姉だけではなく幼馴染を引き取っていた親戚からも反対された。
『今まであの子を放置した結果がこれだ。今のあの子の状態では精神病院に入院した方が一番の最善策だし、あの子の面倒を見る事が出来ない事がアンタ達への罰だと思いなさい』
そう牧場を営んでいる親戚から諭されて二人は泣き崩れた。何でその事を知っているかと言うと幼馴染の今後について諸々の手続き等を弁護士として立ち会ったからだ。
幼馴染の両親は仕事を早期退職し、何方か片方の祖父母の実家だった(つまり幼馴染達にとって曽祖父母)山奥の廃屋を最低限住める様に改装して暮らしている。そこで自給自足しながら静かに過ごしている。そして時間があれば家族のアルバムを開いてーーー中学頃の末っ子の写真と思い出が殆ど無い事に泣いて後悔する日々だと、偶々仕事先で再会した長男から話を聞く事があった。
正直、幼馴染の両親に関してはそこまで責められる事なのかと同じ仕事先の同僚達に疑問を呈した事があるが、結構批判的な意見が多かった事に驚いた。
「そうね……海外では子供を一人で留守番させた事で逮捕されたケースもあるし、中学生とはいえまだ子供でしょ? まだまだ社会のルールや倫理に乏しいわ。中学・高校だからこそ犯罪に巻き込まれる事が多くなるからこそ親がしっかりと監督するべきだと思うの」
と所長の意見に目から鱗が溢れた。
まぁ例えどうしようも無い親だったとしても、理貴にとっては優しいおじさん・おばさんたった事には代わりがない。
理貴には幼馴染の両親のその後を多少ぼやかして黙っていよう。
救いなのは後に結婚したいじめ被害者の珈さんと結婚して良き父・良き夫になってくれた事だ。
「本当に箕央には苦労ばかりかけてしまった。我が家の問題に巻き込んで本当にごめん」
「もう何回も聞きました。それ以上謝るなら本気で怒るよ」
「うん。……それでお金に余裕が出来たから今度の長期休みに何処か旅行に行こう。箕央が行きたがっていた京都のパワースポットになっている神社巡りはどう?」
「ホント⁉︎ 嬉しい! それならルートを決めなきゃ!」
子供の様にはしゃぐパートナーを見て、本当に箕央と結婚出来て良かったと心から思った。
そして偶々理貴達家族が日本に戻る時期と旅行が重なり、皆で京都観光巡りする事が決定した時に、この騒動が終わったと俺はやっと実感出来た。
ヤンデレ&モラハラが酷い幼馴染~の番外編はこれにてお終いです。
前作はかなりの反響でした。
色んな感想があったのですが、意外にも幼馴染の両親に対して批判的な感想があったのは想定外でした。
その上で主に双方の『両親』に対しての落とし前をテーマに番外編として書きました。
このシリーズ最後はヒロインの座を~の番外編で終了します。(主人公は誰にするのかまだ決めてませんが……)
またの次回にお会いしましょう。