第4話
「嘘……」
アルバートさんの言葉を最初私はどうしても信じることが出来なかった。
もちろんそれはアルバートさんが人間として信用できないとかそんな理由ではない。
それどころか、アルバートさんには私がマルクスの側仕えの中でも一番信用している人なのだ。
……しかし、それでもマルクスの側仕えが凄惨な過去を持っているいるということは信じることが出来なかった。
マルクスの側にいる彼らはいつもきらきらと楽しそうな笑みを浮かべていた。
そしてそれは私と真逆の表情だった。
今まで迫害されてきた私だからこそ、彼らが悲惨な過去を持っているとは信じられなくて。
「やはり信じられませんか。ですが彼らも元は貴方と同じような顔をしていたのですよ」
「っ!?」
……そして、そんな私の考えを見通したようにアルバートさんはそう告げた。
「だからマルクス様は貴女を引き取ったんですよ。出来る限り守れるように」
アルバートさんの言葉に、令嬢達に絡まれた時、マルクスがやってきてくれた時のことが蘇る。
たしかにあの時マルクスは私を守りにきてくれていて……
「信じなくても構いません。けれど、この場にいる限り貴女は守られます。だから少し気を抜いてくれても構わないですよ」
混乱のせいで、言葉をとめてしまった私にアルバートさんが無理に答えを求めることは無く。
アルバートさんはそう優しく告げて去って行ったのだった……
◇◆◇
それから私はしばらくの間動くことが出来なかった。
その時の私にとって、王族に与する存在は全て敵だと思い込んでいた。
そしてだからこそ私はマルクスの存在をどう扱っていいかわからなくなっていたのだ。
「お前何やってんの?」
「ひゃうっ!?」
……最悪のタイミングでマルクスが現れたのはその時だった。