わたしの生まれた日
『なれば、私が名をつけてもよいか』
そう言って愛おしげに細められた瞳のあたたかさを、わたしは一生、——いや、たとえ生まれ変わったとしても、忘れることはないだろう。
茶色の毛に黒の瞳。それが、わたしの種族が本来持っている「色」だった。けれどわたしはそのどちらも持たずに生まれてきてしまった。
重なり合って白に見える透明な髪。砕けてしまいそうに透き通った真っ赤な瞳。肌は皮の下を流れる血潮の色が透けて見える。まるで作り物のような身体。日の下に長時間いることも叶わない脆弱な身。それでも、その奇特さをかわれて「神の供物」として育てられたことは、きっと恵まれたことだったのだろう。
『ゆめ忘れるな。お前は供物。いつか森の神に捧げられる贄。それを肝に銘じて在れよ』
ことあるごとにそう言われ、必要最低限の世話をされ、ほぼ飲まず食わずで十数年を過ごした。奇特なこの身は命の有り様すら狂っているようで、いつまでたっても幼児のままだった。そのくせ飲まず食わずでも生き存えるその様がまた不気味さを助長して、ヒトは皆わたしを「ヒト」とは見なさない。
そんな生活が十数年、もしかしたら数十年続いていた。その頃の記憶は定かではないのだ。最低限の言葉は解していたけれど、悲惨な生活故か情緒というものが欠落していたため、まるで人形のように部屋の隅に丸まっていたから。
だから別段、この生活を厭ってはいなかった。満ち足りることはないが、死ぬようなことはないし、この生活以外知らなかったのだから当たり前と言えば当たり前なのだけれど。
ただ、ちらちらと視界の端に映る他の子供たちが、当たり前に愛されることを知る子供たちが、ほんの少しだけ、眩しかった。望んだところで、わたしがその愛情を手に入れることはできないのだと理解していたから、妬ましく思うことはなかったけれど。けれど、憧れに近いものは抱いていたと思う。
そんな生活が終わるのは、思ったよりも早かったように思う。
『近頃、森が騒ついておる。お前のお役目が果たされる時も近かろう』
記憶にあるより随分と老いた呪い師が、そんなことを言ってしばらく経った頃。
わたしはある日、急に「外」へ出された。
わけもわからないままに豪奢な服を着せられ、輿に乗せられ森へと連れてこられて、そこで初めて「ああ、ついにその時が来たのか」と理解が追いついた。
森へ向かう道道で聞いた話を察するに、近頃急に魔獣被害が急増し、畑の実りも悪く、更に雨が妙に長く続き、極め付けに村一番の呪い師が大きな災いの到来を予見した、災いが降りかかる前に森の神に供物を捧げて災いから守ってもらおうと、そういうことらしい。
ぼんやりと会話を聞いていたわたしの手を、同行していた村長が妙に恭しく握った。神に気に入られ、村に救いをもたらしてくれと嘯く村長の、脂肪を蓄えころころとした手の温度が、無性に気持ち悪かった。
村長はその後森に着くまでの間、ずっとわたしの細い手を握っていた。久方ぶりの日光にやられて手を振り払う気力もなかったわたしはなされるがままだったが、それに気を良くしたのかあちこち手を這わせるのはいただけない。吐き気を催すという感覚を初めて知った。
そうこうしている間に森の入り口へ到着した。村の人々がわたしを乗せた輿を森の入り口付近に降ろすと、同行していた呪い師が森の神に捧げる祝詞を唱える。朦朧とする意識の中でその様子を見るともなく見ていたわたしを気にかけるヒトは誰もいない。
祝詞が終われば村人の仕事は終了となるらしい。そのまま何も言わずにいなくなってしまった。ああ、お役目を果たせよ、みたいな言葉はかけられたかもしれない。なんにせよ、その時のわたしは久しぶりに浴びた太陽の光にやられてしまってまともに意識を保っていなかったから、よく覚えていないのだ。無駄に飾り立てられた衣装もすこぶる重くて、貧弱なわたしの体は陽の光と服の重みに負けて限界に達していた。
そうして、死にかけていたわたしは、かみさまに出会った。
かみさま、と言うと、当の本人は少し困ったような顔をして否定するから、そう呼んたことはほとんどないのだけれど、彼は確かに、かみさまだった。
あの瞬間のことは、不思議とよく覚えている。死にかけていて意識も朦朧としていたのに、初めてあの方の姿を目にした衝撃だけは、強い歓喜とともに脳裏に刻みつけられているのだ。
美しいものを見た。発光しているわけでもないのにキラキラと眩しく輝くものが存在することを初めて知った。それは見知った馬の形をしていたけれど、根本的な何かが決定的に違う存在だった。とても、美しいものだった。
一目見て、目の前の存在が「森の神」だと悟った。ずっと聞かされて育ったその存在は、わたしの貧弱な想像力で思い描いていたものよりずっと神聖で、ずっと神々しかった。これの供物になれと育てられてきたのだと思い至って、その畏れ多さに泣きそうになる程度には、圧倒的な存在だった。
しばらくの間その姿をぼんやりと眺めていたわたしは、白い馬の姿をしたそれが静かに近付いてくるのを見て、ハッとして姿勢を正した。正直死ぬほど身体が重くてとても辛かったけれど、物心ついた頃からずっと言い含められてきたおつとめを果たさねばならないという、今思えば強迫観念でしかない思いに駆られて死ぬ気で上体を起こして体裁を取り繕った。
「……あ、あの……」」
もしかしたら、生まれて初めて自分の意志で言葉を発したかもしれない。
ひりつく喉をこじ開け、ありったけの気力を持って発した言葉は、けれどそれ以上紡がれることなく森辺の空気の溶けて消えた。
『よし、決めた。私の仔を産んではくれんか』
「えっ」
その時の衝撃をなんと言えばいいんだろうか。筆舌に尽くし難い、というのはこういう場合に使うんだろう。肉体的に限界だったのも手伝ってか、それ以降の記憶はとんと曖昧なのだが、開口一番とんでもないことを言われたのだけはわかった。
混乱の中でなんとか「はい」とだけ返事をしたことは覚えている。そのまま、あれよあれよと言う間に拉致されて、気が付いたら干し草の上に寝ていた。
その時はとにかく頭がぐらぐらしていて、ついでに世界がぐるぐる回っていたから、正直どんな話をしたかの仔細までは憶えていない。今から思えば、神の寝床に寝かされ御身自らに介抱されていたなどというとんでも無い状況にあったのだが、その時のわたしは「ああここが噂に聞く天国か」程度にしか考えていなかった。
たくさん話をした。今までほとんど喋らなかった分を取り戻すかのようにたくさん喋った。夢だと思っていたから、彼のことを「お馬さん」だなんて呼んでしまったけれど、どうしてか咎められることはなくて。彼はわたしの話を根気強く聞いてくれ、あまつさえ名を付けてくれるとまで言った。
その瞬間の言いようもない歓喜を、他の誰に伝えることができるだろうか。
夢か何かだと、そう思って目の前の存在に甘えた。慰めるように頬へ触れる温度にただただ安らいで、物心ついて初めてぐっすりと眠った。
次に目が覚めた時、わたしの顔を心配そうに覗き込む人型を取った彼を見て、その完璧な変化にただただ目を丸くした。一目見た瞬間に、わたしに名をくれると言った神馬様と同じ存在だと気付いたけれど、きっと他の人だと普通の人間だと勘違いしていたと思う。御身から溢れ出していた膨大な魔素を完全に制御し隠し通すその力量は、正しく神業だと言えた。
ただ、残念ながらそのお姿を取られた彼とは言葉が通じなかった。それまでずっと相手に直接意思を流し込むようにして会話をしていたらしく、言葉を使って話すのは初めてだったらしい。
あの時の彼の慌て様は、今思い出しても少しおかしい。
そう、その時に、名前をもらった。
ユキコ、と、そう呼ばれた時の感覚は、一体どう表現すればいいだろうか。
例えるなら、ずっと目の前を覆っていた霧が一気に晴れたような。ただ漠然と存在していただけのものに、確固たる依り代を与えられたような、そんな感覚。
その時わたしは理解した。
ああ、わたしは今、初めて、この世に生まれたのだと。
名前は呪である、とは、彼の言葉だ。
わたしに「ユーマ」と呼ぶことを許してくださった彼曰く、名は単なる固有名詞ではなく、そのひととなりを表し、それを縛る短い呪だと。
彼の、ユーマ様の知る言語で「しあわせな子」と言う意味を持つらしいわたしの名前の由来を知って、名前は呪だと深く納得したのを覚えている。彼らしい祝福だと思った。現にわたしはこんなにしあわせだ。
だからだろうか。彼は、自身の名を呼ばれるのが好きだ。
それこそ、こんな小娘に名を呼ばれて泣く程度には。
神とは、なんだろうか。
神域の森で生活するようになって、他の聖馬様からユーマ様の話を聞いて、そうしてユーマ様の在り方を見て、そう思う。
その身を包む、いっそ神々しさすら覚える余剰魔力と、それを一切気取らせることなく隠蔽することすらできる魔力制御の力量。孤高を好む一角聖馬という種族にあって、自らその王として君臨する彼は、異種族を含めた他者と共にあることを好んでいる。
そうであるが故の、孤独。
『ふむ、孤独か』
「はい。ロンファさんはそう思いませんでしたか?」
コタツというらしい暖房器具に足を入れ、ドテラというらしい防寒具を身にまとった、なんとも緊張感に欠ける姿でリョクチャというらしい飲み物を啜っているロンファさんが、わたしの言葉に反応して眉間にしわを寄せた。
彼女はこの森近くの山に住む、齢千近くを生きた『龍』だ。ロンファ、という名もユーマ様が名付けたもの。ユーマ様はよく「巨大トカゲ」なんて呼んでいる。
本来はこんな場所で呑気にお茶を啜っていていい存在ではないのだけれど、ユーマ様の手にかかれば凶暴な暴れ龍も愛らしいカナヘビになってしまう。
『我はそういった感情の機微とやらには疎いからのぉ…。というか、彼奴の感性が人間に近すぎるのだ。この森深くで生活しておって、何故あそこまで感受性豊かになるのかが皆目見当がつかん』
齢千近くを生きているらしい龍の本気で訝しんでいる顔と、リラックスして湯呑みを片手にだらけている姿との差異に思わず破顔する。ユーマ様が作ったこのコタツとドテラ、寒い冬でもぬくぬくと暖かいのは嬉しいのだが、こう、なんというか妙な魔力でも働いているのか、何をしていてもだらけて見えるのが玉に瑕だ。
「まぁ確かに妙に俗っぽいのは否定しませんけれども。こういう変な発明をするところとか。ユーマ様は寒さなんてほぼ感じないハズなんですけどねぇ…」
『このコタツに関してはいい仕事をしたと思うぞ。我とて霊獣の端くれ、寒暖差なぞ気にしたこともなかったが、これはいいものだ』
「天下に名を轟かせる千年龍さまをして、この体たらくですものね」
『おっ言いよるわ小娘』
わたしの数十倍は長く生きている、暴れ龍と名高かったロンファさんが、今やすっかり牙を抜かれてしまっている。恐るべしコタツの魔力。流石ですユーマ様。
『しかし、まぁ、ほんによくここまで育ったものよの』
コタツに載せてあった籠から果物を取り上げながら、ロンファさんがしみじみと遠い目をした。最近やっとヒト型時の力加減がわかってきたのだと、常になく嬉しそうにユーマ様に報告していた通り、水分が多く柔らかい果物を握り潰してしまう事無く器用に皮を剥いていく。
『ちょっと前まではあんなに小さく弱かったのになぁ』
「あら、今でも充分弱々しいですよ。ユーマ様やロンファさん、シラウオさまと比べればまだまだ」
『ぬかしおるわ』
これ見よがしに溜息をついてわたしの方を見てくるロンファさんのご期待に応えて、図々しくもうふふと笑った。
そう、わたしはあの頃とは比べ物にならないほど大きく育った。人の身に似合わない桁の魔力を持って生まれたわたしは、あの劣悪な環境下で生き永らえるため、持てる魔力の全てで以って生にしがみ付いていたらしい。こうしてユーマ様と暮らすようになって初めてその事実に気がついた。
美味しい食べ物、暖かい寝床、そして溢れるほどの愛情。「生きる」ために必要なことは全てユーマ様が与えてくれた。「肉体」という器に満たされたそれらが、成長を忘れたわたしの身体をここまで大きく育てたのだ。この身はユーマ様に与えられたものだけで出来ていると言っても過言ではない。
笑うわたしに呆れたような表情を向けつつも、ロンファさんの瞳はやわらかく笑んでいる。
『百年程度しか生きておらんくせにその域に達しておいて、どの口が』
「ふふふっ。ならロンファさんを出し抜ける日も近いでしょうか?」
『ぬかせ。我の方が500年は先にユーマと出会っておる。そういったことは先輩に譲って然るべきであろ』
「知ってますか? 早い者勝ちって言葉があるんですよ」
『ふん、やってみるがよい。まだまだ若い者には負けぬわ』
ふふん、と豊満な胸を張ってみせるロンファさんに、思わず笑い声が溢れた。額でその存在を主張している黒曜石の2本角も、ヒト型をとって尚溢れる膨大な魔力も、わたしのように矮小な人間には畏怖しか抱かせないはずのものなのに、着込んだドテラとコタツの所為でどこかとぼけた印象しかない。
「そう言うと年寄りくさいですよ」
『なればその年寄りよりまだ年寄りに恋慕の情を抱いておるお主は生粋のヘンタイじゃな』
「その理論でいくとユーマ様も超がつくヘンタイさんになりますけどいいんですか」
『彼奴はよいのだ。言ったところで今更もうどうしようもない故にな』
飄々と嘯きながらすっかり皮を剥いてしまった果物を一口サイズにして口に放り込むロンファさん。酸っぱかったのか、ちょっとだけ顔をしかめて半分に割った果物の小さい方の塊をわたしに押し付けてくる。
こういう姿を見ていると、わたしがユーマ様の借り腹候補となったのを知った時に、『我という最上級の借り腹候補がありながらそのような仔ウサギとまぐわおうとは何事か!! 気が触れたなら正気に戻してやろう!!』とかなんとか言いながらやってきて森の3分の2ほど吹っ飛ばしかけた龍と同一個体だとはとても思えない。恐るべしコタツ。
『あれの性癖はまっすぐなようでいて歪みきっておるからの。永い時を生きる者の宿命とも言えるか。今更矯正などできぬわ』
「宿命、ですか」
果物が酸っぱいのか、ユーマの性癖に思うところがあるのかよくわからないがとにかく顔をしかめたロンファさんに、同じような表情で相対する。この果物すごく酸っぱい。
『ユキよ、お主はあれを孤独だと言ったな』
「はい」
真面目な表情で、どこか遠いところを眺めるような目をしたロンファさんが纏う雰囲気の変化を察して、わたしも真面目な顔を取り繕った。
そんなわたしを見て、ロンファさんは何故か薄い笑みを作る。
『彼奴に孤独を教えたのは、お主だ。そのことだけは、お主を評価しておる』
「……?」
言葉の意味がわからなくて首をかしげたら、少し寂しそうな笑顔をしたロンファさんに頭を撫でられた。数年に及ぶ努力の結晶であるロンファさんのてのひらは、わたしの物と寸分違うことなく、あたたかい。
『だからと言って、彼奴を譲る気にはなれんがな。折角ユーマ好みの「だいなまいとぼでー」とやらを手に入れたのだ、存分に活用してくれるわ』
「あら、ただ大きければいいというものでもないのですよ? 形や触り心地も重要なのです」
すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべたロンファさんに負けじと微笑み返せば、わたしたちの間に見えない火花が散る。力は圧倒的に弱いわたしですが、ユーマ様の「初めて」を譲る気はサラサラありません。
『なんだ、楽しそうだな』
他愛ないじゃれ合いをしていたら、玄関の戸が開いて愛しいヒトの声が聞こえた。途端にわたしたちはじゃれ合いをやめて声の主を振り返る。
「お帰りなさい、ユーマ様」
『ユーマか。遅かったの』
『なんだ、ロンファも来ていたのか。そんなに足繁くここに通って、山は大丈夫なのか?』
笑いながら首を傾げて銀色に輝く髪を揺らすユーマ様。昨日森に侵入者が出たらしく、その対応に行っていたのだけれど、どうやら大事には至らなかったみたいだ。
『誰にモノを言っておる。千年龍の塒を襲おうというモノ好きな輩など、お主以外におらぬわ』
『ほう、先に仕掛けてきたのはそちらだったと記憶しているが? あの時はロンファの八つ当たりで危うく森の半分が消失するところだったなぁ』
『ぐっ、それは謝ったであろうが!』
楽しそうな顔でロンファさんをいじめるユーマ様は機嫌がいい。出かける時はどちらかというと機嫌が悪かったから、出先で何かいいことがあったのだろうか。
『ああ、そうだった。ユキ、こっちに来なさい』
「?」
喚くロンファさんを軽くあしらっていたユーマ様がわたしをちょいちょいと手招きする。なんだろう。特に嫌な予感はしないので悪いことではなさそうだけれど。
小首を傾げつつユーマのもとに行けば、彼はにこにこと上機嫌に笑ったまま、袂から何かを取り出してきた。それを、大切そうに両手に乗せてわたしに見せてくる。
『迷い込んできた行商の者から貰ったのだ。ユキの瞳と同じようにきらきらとして綺麗だろう? 似合うと思って持って帰ってきたのだが、受け取ってくれるか』
「わぁ……」
ユーマ様が取り出してきたのは、大粒の紅玉魔石を使った白金細工の首飾りだった。しかも宝石、細工共にとんでもなく質の高い物で、買おうと思えば城の1つや2つ余裕で建つだろう代物。わたしも育ち故に物の価値には疎いけれど、ユーマ様の疎さはつくづく、彼が人外の者であることを窺わせる。
ユーマ様は「行商の者」なんて言ったけれど、ただの行商人がこんな高価な物を持っているはずがない。が、こんなことは日常茶飯事なのでわたしも動じない。慣れという物は偉大だ。
「ありがとうございます! 嬉しい!」
両手を胸の前で合わせてにっこり微笑む。この時ユーマ様の顔を覗き込むのも忘れない。変に遠慮してはユーマ様がしょんぼりしてしまうので、感情表現は全力投球だ。おかげでわたしは大陸有数の資産家になってしまった。使われる予定のない貴金属や宝石たちが少し哀れだ。
『そうか、嬉しいか。喜んでもらえたのならよかった』
至高の御尊顔をふにゃりとやわらかく崩して笑うのがユーマ様のくせ。森の神様なのにやさしくて傷付きやすくて慎ましい。それを腑抜けだと蔑む輩もいるけれど、わたしはそんなユーマ様が大好きなのだ。
『ユーマよ、我に土産はないのか』
『只飯喰らいの大蜥蜴がほざけよ。そういうことは手土産の1つや2つを持ってきてから言うがいい』
『持ってきているであろうが! 千年龍の牙や鱗はちょっとやそっとでは手に入らぬ代物だぞ!』
『それは単なる老廃物だろう!!』
ロンファさんとぎゃーすか言い合いながら、わたしを背後からすっぽり抱え込むようにしてコタツに入るユーマ様。最近お気に入りの体勢だ。される方は少し鬱陶しいけれど、ユーマ様を独り占めできるので文句はない。ちょっとだけ優越感の篭った視線をロンファさんに向けたら、悔しそうな涙目で睨み返されてしまった。何も泣かなくていいじゃないですか。
『ああ、落ち着くな。やはり家族はいいものだ』
わたしの耳を撫でながら眼を細めるユーマの言葉に、嬉しくなる。
この孤独な神様の「家族」になれたのなら、それ以上のしあわせはないのだ。
「ユーマ様」
『うん?』
「なら、家族を増やすために子作りしましょう?」
そう言ったら、ユーマとロンファさんが同時に咽せた。
なんでだろう?
ヒント:念話は言葉のニュアンスのみを伝える




