第七章 辺ぴ村襲撃その二
魔界の絶対君主たるマオウ率いる魔王軍は、再び人間界の辺境『辺ぴ村』へと向かっていた。しかし、今回の彼らは一味違う。前回の惨敗を受け、魔界一の頭脳を持つ軍師グンシーが導き出した必勝の作戦を引っ提げての再戦なのだ。
しかし、ぞろぞろと移動する大軍勢の中で、全身包帯だらけのセバスが、ふと素朴な疑問を口にした。
「なぜに全軍で来る必要があるのか…?」
「マオウ様が『全軍出撃じゃい!』とノリノリだったから、誰も止められなかったんですよ」
ヒショカが黙っていなさいとばかりに小声で返した。
マオウはそんなヒソヒソ話を耳に留めることもなく、傲然と前を向いて尋ねる。
「おい、中継地点となるキョジャクの準備はどうだ!?」
「はっ! 先ほど本人から『ばっちこ〜い!』と、気合い乗り十分な連絡が届いております!」
「よし! では作戦通り、あの宿敵ちゃすけめを地の果てまでぶちかますぞ!!」
マオウは両手に禍々しい魔力を集中させ、お気に入りの超ロングネーム大魔法の詠唱を開始した。
「喰らうが良い! 超スーパーハイパーウルトラメガエクストリーム鬼異次元……ええと、なんだっけ奥義!!!」
「恥ずかしいからやめてください!」
ヒショカの鋭いツッコミが飛ぶが、そんなことは気にせずマオウから究極奥義の技が唱えられた。
「すけさん はどーほー」
慌てて、セバスに「か、かく」と訂正されるが、そこもまた気にせず
「発射!」
マオウの手から、世界の終わりを告げるような超巨大なエネルギー砲の魔法が盛大に発射された。
「よ〜し、がんばるぞ〜!」
マオウと辺ぴ村の間に配置されたキョジャクは、迫り来る超巨大魔法を前にして、文字通り体を張ってその場に立ちはだかった。
ズドォォォーーンッッ!!!
魔法は計算通り、キョジャクへ見事にジャストミートした。「しまっていこ〜!」というキョジャクの気合とともに、彼のユニークスキル『魔法攻撃反射』が発動する。
キィィィィーンッ!!!
小気味良い音を立てて、魔法の軌道がぐにゃりと反転した。
「おぉ! 反射したぞ! すげ〜!グンシーのいう通り、入射角=反射角だ」
完璧な作戦の成功に、魔王軍一同は歓声をあげた。だが、歓喜したのも束の間。跳ね返った超巨大な魔力の塊は、なぜか辺ぴ村の方向ではなく、自分たちの方へ向かってまっしぐらに突き進んできた。
「……ん? センター返し……!?入射角=反射角=0?」
マオウが間抜けな声をあげる。ヒショカは冷や汗をダラダラと流しながら、この世界の恐るべき、そして至極当然の物理法則を口にした。
「あの、グンシーさん……。普通に考えて『反射』って……攻撃を撃ってきた術者に向かって真っ直ぐ返ってくるってことなのでは……?」
キョジャクからすれば、攻撃をしてきたのは目の前のマオウである。彼のスキルは、届いた荷物をそのまま送り主へ正確に返送しただけだったのだ。
「ふふふ、おわった」
マオウは、もう笑うしかなかった。その次の瞬間
ドゴォォォォーーンッッ!!!!!
天地を揺るがす大爆発が、魔王軍本陣を直撃した。辺ぴ村に届くどころか、最初の中継地点で1ミリの狂いもなく見事なブーメラン自爆を遂げたのである。
「……というか、おい。この大爆発のエフェクト、前回の襲撃のときの絵の使い回しだろうが!」
「ってか、笑いごとじゃね~ぞこれ」
断末魔の叫びと共に、魔王軍の面々は派手に夜空へと吹き飛んでいった。




