第一話 突撃はつらいよ⑥
「おい!あれを見ろ!」
寅二郎が空を指さすと、
巨大な十字架が現れたところだった。
「今だ!行くぞ!」
戦場が動くこれ以上ない合図に寅二郎たちは走り出した。
「“隙間”なら見つけた!あそこだ!」
シドも一か所を指さしながら先頭を走る。
その先には帝国陣地の後方にある白い陣幕。補給所らしく荷車が行き来している。その奥には白いローブの一団が魔法防御結界を張っている。さらにその奥で白衣の集団が見えた。
陣幕に迫る寅二郎たちに誰何の声がかかった。
「止まれ!」
「貴様ら、何者だ!」
続々と陣幕から兵士が出てきた。
「くそ!ここまで来て」
兵士たちに囲まれ寅二郎が歯噛みする。その時だった。
「おい!あれは!」「今度は何だ!?」兵士たちが騒ぎ出し、寅二郎も空を見る。
すると、今度は太陽かと思えるほどの巨大な火球が三個こちらに振ってくる。騒ぐ兵士を掻き分け寅二郎たちは走り出す。陣幕を搔い潜り白衣の集団を目前に捉えた瞬間――
初めに感じたのは熱だった。
そして爆音が轟いた。
ドゴオォーーーーーーーーーーーーーーーン!
兵士たちの絶叫が響き、集団魔法で張られた結界と爆風がせめぎ合う。何かが軋む音が聞こえ隙間から爆風が吹きすさぶ。爆心地となった黒焦げた大地の向こうから魔王軍が押し寄せる。
「おい!馬鹿!止めろ!」寅二郎の叫びは届かなかった。
混乱の極みとなった“魔弾銃部隊”の面々が次々と発砲した。ある者は泣きながら、ある者はへたり込んだまま、そしてある者は叫びながら――引き金を引いた。
そして、次々と死んでいった。
「噓でしょ……」
呆然と呟くリラに寅二郎は何も言えなかった。
そして、もう一人、
返り血で全身を赤く染めたレオンが馬上から呆然と見ていた。
「これは、何だ?」
そっと馬から降り、死んだ若者たちへと歩き出す。
「何を見せられている?」
固く握っていたはずの剣が手から離れ大地に刺さった。
「俺の“正義”は届かなかったのか?」
暴発したのか破壊された魔弾銃を握ったまま、
こと切れた若者を見下ろしていた。
レオンの後ろにはいつの間にか、ベルゼの姿があった。
そして、一言呟いた。
「まだ、“正義”の側にいるつもりか?」




