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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~いろいろな小話~
9/1003

~第8夜~「異世界同士の交流(その2)」

「『異世界モノ』の物語は、大抵、『閉じた世界』で終わりを告げてしまいます。ところが、世界の外にも世界はあるのです」と、僕は語り始める。


「宇宙には様々な星があって、それぞれの星に文明が築かれているという考え方ね」と、シェヘラザード。


「実は『物理的な距離』とは別にも世界は存在しているのですが、そのお話はまたいずれ。とりあえず、今回は『異世界同士を移動する』のお話です」


         *


 世の中には、様々な能力者がおりまして。「異世界を渡り歩く能力者」というものも存在しております。

 たとえば、有名どころでは「神様が、死んだ人間を別の世界に転生させる」というものですね。

 あるいは、生きている人間をそのままの姿で転移させたり。この場合、1人だけではなく、クラス丸ごと、学校ごと、時には街ごと異世界へと移住させてしまいます。


 ただ、大抵は「一方通行」なんですね。

 異世界へ行ってしまったら行ったきり。もしくは、物語の最後にようやく元いた世界へと帰ってくるというパターンがほとんど。

 自分の意思で行ったり来たりはできないのです。


 ところが、時として「自由に2つの世界を移動することのできる能力者」というのが生まれることがあって。この場合も、特定のキャラクターだけに限られます。主人公だけとか、そのライバルだけとかいった具合に。

 実は、このような能力者は昔から何人も存在していて、ただその存在を知られていなかっただけなのです。


 さらに発展してくると、世界に扉が開いたり、巨大な穴が空いたりして、人々が自由に行き来できるようになります。

 こうなってくると、もはや「旅」とか「貿易」とか「移民」などと呼ばれるようになってくるでしょう。


 たとえば、日本という国が江戸時代の頃、黒船がやって来て国を開いたように。あるいは、コロンブスがアメリカ大陸を発見した方が、例としてはわかりやすいですかね?

 大陸は、ある日突然誕生したわけではなく、元からそこにあって人だって住んでいたんですよ。そこにヨーロッパの人たちが押し寄せて占領してしまっただけで。

 同じように、異世界への移動方法が発見され、交流が始まるということがあるのです。


 さて、おおっぴらに異世界との行き来が可能になったとしましょう。どうなると思います?

 そう!最初は混乱するでしょうね。場合によっては戦争です。けれども、それも長くは続きません。どちらの世界の住民も、そこまで愚かではないでしょうからね。やがて、戦いは終わり、健全な交渉が始まります。


 特産物・人的資源・文化・情報といったものを交換するようになるでしょう。

 たとえば、「こちらからは医学や科学の知識・技術・道具を提供するので、そちらも何かを提供してください」「いいですよ。では、こちらからは魔法を伝授しましょう。魔法石や宝石、貴重な金属もお譲りしましょう」といった形で。


 人類が突然大きく進化を遂げるのはいつでしょう?

 1つは戦争です。人々は、争い憎しみ合って成長を遂げる者ですからね。「争い」というのは言い換えれば「競争」だとも言えるのです。

 もう1つは、疫病・地震といった災厄の後。大きな被害を受けた後というのは、大きな進歩や進化もあるもの。

 そして、最後は「異文化との交流」

 人と人との交流もそうですが、それが国同士・異世界同士となれば、短期間に格段の進化を遂げることが可能です。


 前置きが長くなってしまいましたが、ある時、世界の扉が開かれて、「我々の住む世界」と「異世界」との交流が開始されました。

 しばらくの混乱の後、お互いの利益の為に物資や情報の交換が始まります。


 この頃、日本では失業者が街にあふれかえっていました。「技術はあるのだけれど、仕事がない」という人が大勢いたんですね。

 そこで有志を(つの)って、異世界へと出稼ぎに行くことになりました。 


 瞬く間に、向こうの世界の生活は一変します。

 それまで石造りだった街は、高層建築が立ち並び、新幹線が走ったり、飛行機が飛ぶようになりました。

 田舎の方も、農業中心だったのがサービス業へと転身します。

 特に観光業はうるおいました。そりゃ、そうですよね。人々は物珍しさで、向こうの世界を訪れたがりますから。


 もちろん、問題も起こりました。むしろ、問題だらけですよ。

 初期の頃は勝手がわかっていなかったので、お互いの世界でトラブルが頻発しました。毎日のようにイザコザが起こり、調停役の人たちが四苦八苦したのを覚えています。


 たとえば、「武器の持ち込み」ですね。

 向こうの世界は「剣と魔法の世界」なので、当然みんな武器を持って歩いてるわけですが、こちらの世界はそうではありません。

 こちらの世界から軽い気持ちで出かけていった丸腰の旅行者が、追いはぎにあったり、盗賊に襲われるということがよく起こりました。そのたびに、テレビや新聞でニュースになったものです。

 そこまででなくとも、置き引き・スリ・詐欺などの被害は後を絶ちませんでした。


 病原菌の問題もありましたね。

 こちらの世界から持ち込んだ菌が、向こうの世界で繁殖して大流行し、バタバタ人が死んでいったり。あちら側の世界は、ウイルスだとかワクチンだとかの考え方がまだ普及していませんでしたから。


 逆に未知の毒物や生物が持ち込まれるなんてこともよくありました。生態系が一変して、危険な生物が海に住み着くようにもなりましたし。

 クラーケンだとかシーサペンとだとか、元々こちらの世界には住んでませんでしたよね?今ではメジャーな生き物ですけど。

 おかげで、マグロだとかイワシだとか激減しちゃいましたし。


 ま、そんなこんなで初期には混乱をきたした異世界交流ですが、数年もするとだいぶ落ち着いてきます。

 おっと、そろそろ時間ですね。では、この続きは、また明日の晩に♪

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