~第9夜~「異世界同士の交流(その3)」「アンアンの受難」「異世界での単身赴任生活」
異世界同士の交流で最初の障壁になったのが「言葉」の問題です。
ただし、現代は翻訳技術も進んでおり、翻訳ソフトも進歩しているので、時間さえかければ確実にクリアできる問題でもありました。
半年後には、かたことでカタコトでコミュニケーションが取れるようになり、数年もすると正式な契約書を交わせるレベルにまで達しました。
スマホのアプリも開発され、英語やフランス語と同じように、日本語で話しかけるとその場で音声通訳してくれます。
もちろん、細かいニュアンスまで伝えようとすると相当量の勉強が必要ですが、簡単な意思の疎通をはかるだけならば、これで充分!
次は、異世界同士がつながり合った結果、実際にどのようなコトが起こったのかを見ていきましょう。
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「アンアンの受難」
アンアンの家には、エルフが住んでいます。
アンアンの本名は安藤杏(縮めてアンアンと呼ばれています)
異世界間で人々の行き来が可能になり、異世界の住人がこちらの世界に住むのもあたりまえになった時代。交換留学生としてやって来たのは、エクセオールという名の男性エルフ。
耳はとんがってますが、一般的な女性の観点から見れば「かなりの美形!」ということになるでしょう。
「お父さんも向こうの世界に単身赴任で仕事に行っちゃうし。寂しくなったところにあなたがやって来てくれて、ほんと助かったわ。エクセオール」と、アンアンのお母さんも喜んでいます。
「ほんと!ほんと!エルフって、何かにつけて優秀でしょ?手先は器用だし、力も強いし。おまけに魔法まで使えるし」と、アンアン。
「いや~、そんなコトありませんよ。僕らにとっては、これが生まれた時からあたりまえで。逆に、あなた方にはあなた方の特技がありますよね?」と、エクセオールは謙遜して答えます。
「ま、特技って言っても、私は料理したりお洗濯したりくらいかしら?」と、お母さん。
「エクセオールは料理も上手いんでしょ?」というアンアンの質問にエクセオールは答えます。
「ま、男の料理ですけどね。シカだとかタヌキだとか、家の周りに現れる動物を狩ってさばいてたくらいで。実家は、深い森の中で、そのくらいしか楽しみがなかったもので」
エルフという種族は、身体能力が高く、弓矢など武器の扱いにもたけています。寿命も長く、1000年くらい生きる人もいるくらい。
「それに日本語だってペラペラだし。翻訳機なしでこんなに喋れる人、なかなかいないわよ!」と、アンアン。
「この数年間でみっちり学びましたからね。他にも、英語だとかドイツ語だとかイタリア語だとか。あ、でも、日本語が一番得意かな?」
「ほんと、エルフって頭がいいのね~」と、お母さん。
「エルフの中でも特別なのよ!ね?エクセオール?」
「いや~、どうでしょうね?」と、エクセオールは恥ずかしがります。
見ての通り、アンアンはエクセオールのコトが大好きなのです。ところが、このコトが将来問題を引き起こします。
しばらくの間は、こんな風に平和に暮らしていた3人でしたが、「交換留学生」としての期間が終了し、エクセオールは自分の国に帰ることになりました。当然、地球とは別の「向こうの世界」です。
アンアンはとても寂しがりましたが、仕方がありません。
「大丈夫!またいつでも会えるさ!だって世界はつながっているんだもの」と、エクセオールは爽やかに答え、異世界へと帰って行きました。
問題は、この後になってから発覚します。
実は、アンアンのお腹の中には赤ちゃんが住んでいたのです。もちろん、エクセオールとの子です。
「どうしよう、お母さん…」
「どうしようって、おろすしかないでしょう。エクセオールは自分の世界に帰って行っちゃったんだし」
「いやよ!いや!私、産む!あの人との子供を産んで、自分で育てるの!」
「ワガママ言うんじゃありません!」
などという会話が交わされましたが、結局アンアンは赤ちゃんを産みます。エルフとの子なので「ハーフエルフ」ということになるでしょうか。
ところが、ここでまた問題が起こります。
アンアンは、せっかく産んだ子をこちらの世界へ残して、異世界へと旅立ってしまったのです。愛するエクセオールのコトが忘れられなかったんですね~
こうして、ハーフエルフの子は、アンアンのお母さんによって育てられることになります。
今でこそ異世界種族間で結婚したり、赤ちゃんを作ったりということがあたりまえになっていますけど、当時は社会問題になっていたんですね。
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「異世界での単身赴任生活」
続けて、アンアンのお父さんのエピソードも語っておきましょう。
エルフのエクセオールが交換留学生として地球を訪れていた頃。
アンアンの父親は、逆に「向こうの世界」を訪れていました。もちろん、お仕事で。
アンアンこと安藤杏の父親。名は、安藤総一郎。
現地では「アンさん」と呼ばれています。
「こりゃ、酷いなぁ~」
それが、赴任先の異世界での安藤総一郎の第一声でした。
安藤総一郎は国家公務員です。
今回の任務は「戸籍作り」
いえ、正確に言えば「個籍作り」と表現した方がいいかも。
日本のように家族全員の情報が載った身分登録簿でなくても構わないので、とにかく身分登録制度を確立しようというのです。
「名前」「性別」「出身地」「誕生日(死亡した者に関しては「死亡日」も)」などが記載された帳簿を作成し、税金の取り立てなどに利用しようというわけ。
ところが、こちらの世界(地球から見たら異世界)では、まともに身分登録が行われておらず、かなりいい加減な状態です。
冒険者を中心に、まともに税金を納めていない者も多く、身分登録させることが急務でした。
「こりゃ、大変だ。何年も家に帰れないかも…」
総一郎の勘は当たっていました。
この後、数年間、現地での勤務が続くことになります。
おっと、そろそろ夜が明ける時間ですね。
では、この続きはまた明日♪




