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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~箱の中の世界~
717/1003

~第716夜~「箱の中の世界(その13)」「貧しき国のミラーグレ」

 神様に匹敵する能力を身につけ、アリ人間たちの望みをかなえ、理想の街を作り上げたと思っていたエルピージョ。

 ところが、何もかもが思い通りで働く必要さえない社会は、人々から生きる気力を奪ってしまいました。

 いつの間にか、すぐそばにいるレーベさえも、生きるコトに飽きてボ~ッとするようになっています。


 困ったエルピージョ。

 ハッ!と、いいアイデアを思いつきます。


「そうだ!やる気のなくなったアリ人間は削除して、新しいのを出せばいいんだ!」


 レーベも他の住民たちも、生きる気力をなくしてしまったら1度消滅させ、新鮮な気持ちを持っていた頃のを新しく出してやればいいのです。

 なにしろ、エルピージョには神にも匹敵する力が与えられているのですから。その程度の願い、雑作もありません。


 思った通り、住民たちを入れ替えることで、再びやる気満々で生きるようになりました。

 もちろん、しばらくするとまた生きるコトに飽きてボ~ッとして過ごすようになるのですが、そうしたらまた新しいのと入れ替えればいいだけです。


 ただし、1つだけかなえられない願いがありました。1人だけ変えられない人間がいました。

 それはエルピージョ自身。自分自身だけは入れ替えることができないのです。


「世界がどんなに理想的になっても、人々がどんなに幸せになっても、僕だけは不幸なまま!退屈なままじゃないか!」

 絶望に打ちひしがれるエルピージョ。段々とひとりごとが多くなっていき、人との会話も避けるようになっていきます。


「フフフ…ハハハ…アッハッハッハッハ!」

 段々と狂っていくエルピージョ。


「そうだ!戦争だ!戦争を起こして退屈をまぎらわせよう!かつて神様たちがやってたみたいに!」


 さっそくエルピージョは新しい世界を創造しました。

 “ゾウ人間たちの世界”や“ライオン人間たちの世界”を作り出しては、種族間でイザコザを起こし、戦争をさせます。


「いいぞ!もっと!もっとだ!もっと争い合え!戦争が(みにく)ければ醜いほど、より楽しめる!生きる気力が湧いてくる!僕の寿命も延びるというものだ!」

 不気味な笑いを上げては、人々が争い合う世界を楽しむエルピージョ。


         *


 遠くからその様子を眺めていたプリオとポステリ。


「ああ~あ、壊れちゃったよ」と、プリオ。


「結局、私たちと同じコトしかできなかったわね」と、ポステリ。


「これで何体目だっけ?」


「もう覚えてないくらいたくさんよ。誰か、もっと別の解決策を出せる人はいないのかしら?」


 無数の世界を作り、戦争を起こし、選ばれし者を神様に仕立て上げてきたプリオとポステリ。

 けれども、誰も彼もが最後には限界に達してしまうのです。


 2人と同じように別の世界を創造して戦争を起こすか、みずから消滅を選ぶか。

 たとえ、その過程で平和や理想郷を追求したとしても、最終的には同じ選択をしてしまうのでした。


「きっと、何もかもが自由過ぎるからいけないんだ。世界には、ある程度の不自由さ…言い換えれば“制限”が必要なんだよ」


 プリオの意見にポステリもうなずきます。


「そうね。遠い昔に“絵を描く”という行為があたりまえに行われていた時代。『白紙の紙になんでもいいから好きに描いてみなさい』と指示されると、多くの人たちが戸惑って何も描けなかったというわ」


「制限をつけたら描けた?」


「そう。“家の絵”とか“動物”とか“家族”とかテーマを与えてあげると、ほとんどの人たちがスラスラと描けるようになったそうよ」


「どうやら僕らが生き残る道も、その辺りにありそうだ」


「そうね。その辺を踏まえて、もう1度世界を作ってみましょう」

 そう言って、2人はまた新しい世界を創造しました。




「貧しき国のミラーグレ」


 ある世界の片隅で、少女が泣いています。


「ああ…どうして、うちはこんなに貧乏なのかしら?もっとお金持ちの家に生まれたかった」


 彼女の名は、ミラーグレ。

 ミラーグレの家は非常に貧しく、今夜食べるパンにさえ苦労しています。

 オマケに、隣の大きな国が攻めてきていて、常に戦争状態なのです。


「こんなんだったら、いっそ生まれてこない方がよかった…」


 そうつぶやくミラーグレの前に、ひと組の少年少女が現われます。

 プリオとポステリでした。


「何をそんなに泣いているの?」と、ポステリがたずねました。


 驚きながらもミラーグレは答えます。


「うちは、とても貧乏で。食べる物にも困ってるんです」


「食べ物が欲しい?」と、今度はプリオが質問します。


「ええ、それはもちろん!恵んでいただけるんですか?」


 ミラーグレがたずね返すと、2人はクビを横に振ってから答えます。


「恵んであげるのは、あなたの方よ」と、ポステリが言いました。


「アタシ?アタシは何もできませんよ」


「これからできるようになるのさ」と、答えるプリオ。


 それからプリオとポステリは2人で手をつなぎ、余った方の手をミラーグレの頭の上にかざしました。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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