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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~テーラやサルサラの物語~
319/1003

~第318夜~「退屈な星のサルサラ(その6)」

 サルサラが訪れたのは、エレフォルティスいう名の街でした。

 この星では何もかもが電気を中心に動いており、世界各地に太陽光パネルが設置されています。街の建物の壁にも薄いシート型の太陽光パネルが貼りつけられていて、ちょっとした発電が行えるようになっています。

 ちなみに、サルサラが乗ってきたバスも、電気で動く自動車であり、ほぼ自動運転で街中を走り回っています。一応、運転手と車掌(しゃしょう)を兼ねた職員さんが乗ってはいますが、何かあった時のために乗車しているだけで、バスの運転時代は完全にコンピューターが行っています。


「へ~、便利なモノね。アタシが住んでいた星では、まだここまで完全な自動化は進んでなかったのに。やっぱり世界は広いわ。もっともっといろいろ見聞きして回らないと!」

 感心するサルサラでしたが、同時にこうも考えます。

「でも、アタシが暮らしてきた世界も、いつかはこんな風になっていくのかしら?」

 そんなコトを考えているうちに、バスは街の中を走る地下鉄の中央駅に到着しました。

 ポンッ!とバスの階段を飛んで降りると、サルサラは中央駅の真ん前にたたずみました。


「さて、これからどうしようかな?」

 時間に(しば)られず何の目的もない人生というのは、意外と不安を感じるもの。

 昨日までは、やるべきコトが決められていて、ただ命令に従っていればよかったのに、突然ポ~ンッと世界の真ん中に放り投げられてしまったサルサラは、これから何をすればいいのかわからなくなってしまいました。


「さっきまでは楽しかったけど、今は寂しい。なんだか、今までの生活が恋しくなってきたわ…」

「なら、戻ればいいじゃないか」

 サルサラがポツリともらすと、背後から声がしました。

 振り返ると、そこには背の高い少年が立っています。

「何、あなた?あなた、私の何を知ってるというの?」

「別に。何も知らないさ。ただ、戻りたい場所があるなら、戻ればいいと思っただけ。僕にはそんな場所はないからね」

「あなた、みなしごなの?家族とかいないの?」

「いないね。そんなもの」

「ゴメン…なんか変なコト聞いちゃって」

「別に。気にしてないさ。ところで、君。この街は初めてかい?」

「ええ、なんでわかったの?」

「そんなもの態度を見れば一発さ。他の人たちと全然違うからね」

「そうなの?そんなに態度に出てたかな~?」

「出てたさ。ま、それはいいさ。もし案内が必要なら、僕が買って出ようか?」

 サルサラは一瞬「どうしようかな~?」と迷いましたが「これも何かの運命かな」と思い直し、少年にこの街の案内を頼むコトに決めました。

「じゃあ、お願いするわ」

「オッケ~!」と答えて、少年は手を出します。

「何これ?握手?」

「違うよ。料金。まさか無料(ただ)でってわけにもいかないだろう?」

「まったく。ちゃっかりしてるわね」

 そう言いながらも、サルサラは少年が要求する代金を払ってやりました。

「まいど。僕はソルタリオ。君は?」

「アタシ、サルサラ。今日からひとり旅を始めたの。よろしくね♪」

「今日から?なんか、わけありっぽいな。ま、いいや。じゃあ、まずは食事に行こう。腹が減っては何とやらとよく言うしね。そこで詳しい話を聞かせてくれよ」

「わかった!ちょうどアタシもお腹が減ってきたとこだったし」

「よし、決まりだ!美味(うま)い店があるんだよ。料金もそんなに高くないし。そこに行こう!」

「いいわ。さっそく案内してよ」


         *


 ソルタリオに案内されて、街の中心地から外れた裏通りへと入っていったサルサラ。

 しばらくすると、1軒のレストランが見えてきました。看板を見ると「ルナピエナ」という店名です。

「ここだよ。僕の行きつけの店」

「フ~ン。どんな料理が出るの?」

「いろいろ。けど、パスタが絶品。あと、ピザも結構いけるよ!とりあえず入ろう」

 ソルタリオに導かれるまま、店内へと入っていくサルサラ。

 席に案内され、一通り注文を済ませると、ソルタリオがたずねてきました。

「そういえば、君。『今日からひとり旅』みたいなコト言ってたけど、どういう意味?」

「あ~、それね」

 そこで、サルサラはこれまでの経緯を話し始めます。1人でトラックに潜り込み、自分の星を逃げ出したこと。それから、テーラ商団で働き始めたこと。すぐに仕事は覚えてしまったんだけど、再び退屈さを感じるようになったこと。などなど。

 一通り聞き終えて、ソルタリオは感心して声を上げました。

「へ~!サルサラ。君って意外と大胆なんだね!恐れ入ったよ!」

「そっかなぁ?アタシとしては、特別すごいコトをしたつもりはないんだけど…」

「いや、大したもんだと思うぜ!ちょっとした家出ならまだしも、いきなり世界を越えて大冒険だものな!」

「そうかしら?でも、そのおかげで今こうしてあなたにも会えたってわけ」

「なるほどね。こりゃ、運命の女神様のお導きかもな」


 さて、今夜もそろそろお時間となったようです。

 それでは、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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