~第318夜~「退屈な星のサルサラ(その6)」
サルサラが訪れたのは、エレフォルティスいう名の街でした。
この星では何もかもが電気を中心に動いており、世界各地に太陽光パネルが設置されています。街の建物の壁にも薄いシート型の太陽光パネルが貼りつけられていて、ちょっとした発電が行えるようになっています。
ちなみに、サルサラが乗ってきたバスも、電気で動く自動車であり、ほぼ自動運転で街中を走り回っています。一応、運転手と車掌を兼ねた職員さんが乗ってはいますが、何かあった時のために乗車しているだけで、バスの運転時代は完全にコンピューターが行っています。
「へ~、便利なモノね。アタシが住んでいた星では、まだここまで完全な自動化は進んでなかったのに。やっぱり世界は広いわ。もっともっといろいろ見聞きして回らないと!」
感心するサルサラでしたが、同時にこうも考えます。
「でも、アタシが暮らしてきた世界も、いつかはこんな風になっていくのかしら?」
そんなコトを考えているうちに、バスは街の中を走る地下鉄の中央駅に到着しました。
ポンッ!とバスの階段を飛んで降りると、サルサラは中央駅の真ん前にたたずみました。
「さて、これからどうしようかな?」
時間に縛られず何の目的もない人生というのは、意外と不安を感じるもの。
昨日までは、やるべきコトが決められていて、ただ命令に従っていればよかったのに、突然ポ~ンッと世界の真ん中に放り投げられてしまったサルサラは、これから何をすればいいのかわからなくなってしまいました。
「さっきまでは楽しかったけど、今は寂しい。なんだか、今までの生活が恋しくなってきたわ…」
「なら、戻ればいいじゃないか」
サルサラがポツリともらすと、背後から声がしました。
振り返ると、そこには背の高い少年が立っています。
「何、あなた?あなた、私の何を知ってるというの?」
「別に。何も知らないさ。ただ、戻りたい場所があるなら、戻ればいいと思っただけ。僕にはそんな場所はないからね」
「あなた、みなしごなの?家族とかいないの?」
「いないね。そんなもの」
「ゴメン…なんか変なコト聞いちゃって」
「別に。気にしてないさ。ところで、君。この街は初めてかい?」
「ええ、なんでわかったの?」
「そんなもの態度を見れば一発さ。他の人たちと全然違うからね」
「そうなの?そんなに態度に出てたかな~?」
「出てたさ。ま、それはいいさ。もし案内が必要なら、僕が買って出ようか?」
サルサラは一瞬「どうしようかな~?」と迷いましたが「これも何かの運命かな」と思い直し、少年にこの街の案内を頼むコトに決めました。
「じゃあ、お願いするわ」
「オッケ~!」と答えて、少年は手を出します。
「何これ?握手?」
「違うよ。料金。まさか無料でってわけにもいかないだろう?」
「まったく。ちゃっかりしてるわね」
そう言いながらも、サルサラは少年が要求する代金を払ってやりました。
「まいど。僕はソルタリオ。君は?」
「アタシ、サルサラ。今日からひとり旅を始めたの。よろしくね♪」
「今日から?なんか、わけありっぽいな。ま、いいや。じゃあ、まずは食事に行こう。腹が減っては何とやらとよく言うしね。そこで詳しい話を聞かせてくれよ」
「わかった!ちょうどアタシもお腹が減ってきたとこだったし」
「よし、決まりだ!美味い店があるんだよ。料金もそんなに高くないし。そこに行こう!」
「いいわ。さっそく案内してよ」
*
ソルタリオに案内されて、街の中心地から外れた裏通りへと入っていったサルサラ。
しばらくすると、1軒のレストランが見えてきました。看板を見ると「ルナピエナ」という店名です。
「ここだよ。僕の行きつけの店」
「フ~ン。どんな料理が出るの?」
「いろいろ。けど、パスタが絶品。あと、ピザも結構いけるよ!とりあえず入ろう」
ソルタリオに導かれるまま、店内へと入っていくサルサラ。
席に案内され、一通り注文を済ませると、ソルタリオがたずねてきました。
「そういえば、君。『今日からひとり旅』みたいなコト言ってたけど、どういう意味?」
「あ~、それね」
そこで、サルサラはこれまでの経緯を話し始めます。1人でトラックに潜り込み、自分の星を逃げ出したこと。それから、テーラ商団で働き始めたこと。すぐに仕事は覚えてしまったんだけど、再び退屈さを感じるようになったこと。などなど。
一通り聞き終えて、ソルタリオは感心して声を上げました。
「へ~!サルサラ。君って意外と大胆なんだね!恐れ入ったよ!」
「そっかなぁ?アタシとしては、特別すごいコトをしたつもりはないんだけど…」
「いや、大したもんだと思うぜ!ちょっとした家出ならまだしも、いきなり世界を越えて大冒険だものな!」
「そうかしら?でも、そのおかげで今こうしてあなたにも会えたってわけ」
「なるほどね。こりゃ、運命の女神様のお導きかもな」
さて、今夜もそろそろお時間となったようです。
それでは、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




