~第305夜~「予言者と鬼の娘テーラ(その2)」
人生経験を積むため、世界へと旅に出ようとするテーラ。そのための条件として、父親から「3人のお供を連れて行くように」と命じられてしまいます。
村に住む者たちの中から3人を選ぶことになったテーラは、1人目に薬草使いのミーシャを選択しました。
14歳の少女ミーシャは、光栄にもテーラに指名されますが、勇気がなくて渋っている様子。
そこに助け舟を出したのは、彼女の祖父サフルでした。サフルは高齢ではありますが、ちょっとした魔法を使うことができます。
「ホッホ!こんなか弱い女の子ひとりでは、いくら何でもかわいそうじゃろう。ワシも一緒について行ってやろう」
そう言って、祖父はテーラに向かってウィンクをします。
「ありがとう!おじいちゃん!」と、ミーシャは感謝の意を表しました。
これで、3人の内、2人が決まりました。
「さて、残り1人は誰がいいかなぁ…」
言いながら村中を見回す鬼の娘テーラ。
「こういう時は、男手が必要よねぇ。それも、腕力・体力のある男が…」
その時、ひとりの男と目が合いました。
男は背が高く、年齢も20代後半といったところでしょうか。その顔つきからは知的な印象を受けますが、どことなく陰気な雰囲気を漂わせており、それがさらに彼の知的さを際立たせているようにも見えました。
「あの男に決めるわ!」と、直感だけで決定してしまうテーラ。
しかし、見た目は知的に思えたこの男、実は村一番の怠け者でありました。世の中で、働くのが一番大嫌い!なので、日々の生計をギャンブルで立てているといった具合。当然、面倒くさがり屋の彼は、旅のお供になるのを断ります。
「イヤだよ!面倒くさい!働きたくない!俺は絶対に行かないぞ!」と、拒否する男。
「もう!ワガママ言わないでよ!あなたが来ないと私の旅は始まらないの!」
「だったら、オレ以外の誰かにしてくれよ!どうせ、誰だっていいんだろう?」
「いいえ!決めたの!アナタしかいないわ!私の直感がそう言ってるのよ!」
散々すったもんだがあって、「3食の食事代と宿泊代を支払う」ということで交渉が成立します。
「ま、いっか。この村にいても、旅に出ても働かないコトに違いはないか…」
…というわけで、3人目の仲間はギャンブラーのモカメルに決まりました。
*
こうして旅に出たテーラと3人のお供たち。路銀は両親からたっぷりいただいてきたので、しばらくはお金に困りそうにありません。
「さて、まずはどっちに向かおうかしら?」
テーラの言葉にギャンブラーのモカメルが答えます。
「ここはオレにまかせてくれ!なにしろ、普段から賭け事で生計を立ててるからな!」
そう言って、地面に棒を立てると、倒れた方向を指さしました。
「北だ!まずは北に向かおう!」
モカメルを先頭に北に向かって歩き始める4人。
ところが、しばらく歩くと、さっそくサフルが不平をもらし始めます。
「ハァハァ…待ってくれ。年寄りに長旅はこたえるわい。この辺でそろそろ休憩にしようや…」
孫のミーシャがあきれ顔で答えます。
「おじいちゃん。休憩って言っても、まだ村を出たばかりよ」
「やれやれ。こりゃ、先が思いやられるな…」と、モカメルもボヤきます。
結局、この日は、あまり進むこともできず、道ばたの木陰で野宿することになりました。4人は焚火の周りに集まって、夕食の準備を始めます。
テーラが父親から持たされたバスケットを開けると、中にはたくさんのサンドイッチが入っていました。
「さあ、召し上がれ!」
さっそくサンドイッチをぱくつくお供たち。
「それにしても、このままじゃあ、あまり遠くまで行けそうにないわね。次の村に到着したら、何か乗り物を調達しましょう。それで、サフルも楽になるでしょう」
「かたじけない」
テーラの言葉に頭を下げるサフル。
「ところで、テーラ様はどうして村を出ようと思ったのですか?別に、あの村の生活に不満があるようには見えなかったけれど…」
ミーシャの質問に、テーラは少しうつむいて答えました。
「不満はないわ。でも、私もお父様やお母様みたいに世界を旅して回りたかったの。人生は短いんですもの。せっかくなら、好きなコトをやってみたいでしょ?広い広い世界で見聞を広めたいと思ったのよ」
テーラの言葉に3人はウンウンとうなずきました。
*
翌日。
一行はさらに旅を続けます。しかし、やはりサフルの体力が限界を迎えてしまいました。
「ハァハァ…もうダメだ。歩けん。ここで休ませてくれ」
「もう!おじいちゃんたら!情けないわよ!」とミーシャ。
「無理もない。こんな年寄りを連れてきたコト自体が間違えだったんだ。完全に人選ミスだ」と、モカメルが身もふたもないことを言い出します。
「そんなコトないわ!きっと、これにも意味があるはず!私の勘がそう言ってるわ!」と、相変わらず自信満々のテーラ。
「すまんのう。ワシのせいで、こんなコトになって…」と、申し訳なさそうな顔をするサフルに、「気にしないで!」と答えるテーラ。
そこに、一筋の影が近づいてきます。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




