~第302夜~「未来を予見する少年(その2)」
予言者の言葉に頼り切りになってしまった村人たち。畑仕事はおろか、家の掃除や食事の準備すらサボるようになります。
それを見た予言者が怒りました。
「コラッ!貴様らは一体何をしているのだ!怠けている暇があったら働けい!」
すると、村人たちの中から反論の声が上がります。
「けど、予言者様がいれば、そんなに無理して働く必要なくないですかぁ?」
「そうですよぉ。いつもの調子で、またパッパッパ~と未来を見て、ワシらにどうすればいいか教えてくださいな。そしたら、そん時だけ一生懸命に働くんで」と、この調子。
あげくの果てには、毎日昼間っから酒を飲み、ギャンブルにうつつを抜かす者ばかりになっていきます。当然のように、村人たちの収入は減り、生活はどんどん苦しくなってしまいました。
「オイッ!みんな、しっかりしてくれ!このままでは、村が滅んでしまうぞ!」
村長は必死で村人たちを説得しますが、のれんに腕押し、ぬかに釘。全く聞く耳を持ちません。
それでも、村長はあきらめず説得を続けます。
「お前たちだってわかっているはずだ。この村が今までずっと豊かだったのは、予言者様のお力があったればこそだというコトを!もしも、予言者様がいなくなったらどうするんだ!?」
「いゃあ~、大丈夫だって、村長さんよぉ。きっと何とかなるさ。予言者様がいなくなったら、そんときゃ本気を出して働きゃええんじゃし」
「そうそう。今までも、なんとかなってきたんだし、これからもきっとうまく行くよ」
「それより、今日はどこで遊ぶ?カジノか?それとも競馬かい?」
「さぁ、いくべ!いくべ!」
結局、村には村長の叫び声が虚しく響き渡るばかり。誰も言うコトを聞いてはくれませんでした。
そんなある日のコト。
「オイッ!予言者よ。ワシらの村を救ってくれ!」と、隣村の村長がやって来ました。
「ホウ。誇りの高いアンタが、プライドを捨ててこの私に救いを求めるとは、よほどのコトらしい。一体何が起きた?」
「実はな…ウチの村には毎年鬼が現れて、祭りの際に生け贄を捧げることで許してもらっておるのじゃ」
「生け贄?人をか?」
「いや、ブタやウシといった生きた家畜じゃな。ところが、今年は事情が違っていて…」
「若い娘を要求してきたとか?」
「いやいや、それが要求してきたのは、年頃の若い男なのじゃ。鬼の姫が適齢期になって、ぜひとも人間の男を婿に迎えたいと申してきた。だが、皆、恐れて鬼なんぞに近寄りたくないと言っておる」
「それで、私にどうしろと?」
「予言者の力で、どうか鬼を退治してくだされ!」
「フ~ム…これは、なかなかの難問だな。どうしたものかな?」と、考えはしたものの、予言者も人のよい性格をしていたので、隣村の村長の要請を受け入れることにしました。
ここで種を明かすと、実は予言者の“未来予知”の能力は、世界中のあらゆる情報から未来を予測する力だったのです。そういう意味では、正確には未来予知ではなく“未来予測”の能力でありました。
なので、天候や豊作・不作を当てることはできても、鬼の行動までは見通せません。
それでも、1度引き受けた手前、断るわけにもいかず、仕方がなく予言者は鬼の元を訪れることに決めました。
「ああ~あ、これで私の人生も終わりかもしれんな。ま、それなりにおもしろおかしく生きることもできたし、悔いはないか…」などと考えながら、鬼の住む村までエッチラオッチラと山道を進み続けます。
そうして、ついに目的の村に到着しました。
すると、そこに待っていたのは…豚の頭をした巨大な怪物と、牛の頭に小さな角が生えた奇妙な生き物たちでした。
「ウワァッ!なんだコイツらは!?」と、予言者が驚いていると、その声を聞きつけたのか、ブタ頭の化け物が叫びます。
「人間じゃ!人間が来たぞ!」
ブタ頭の声に従って、ワラワラと現れる鬼たち。しかし、意外なコトに予言者は鬼たちに大歓迎されます。
「よくぞ参られた、人間殿!我らはあなた様をお待ちしておりました!」
「へ?どういうコトだ?」と、戸惑う予言者に、鬼は言います。
「実は、我が一族にはある決まりがありまして、50年に1度、人間界から婿を迎えねばならぬというモノなのです。そこで、今回は最も勇敢なあなたの伴侶として選ばせていただきたい!」
「フ~ン、そんな風習があるんだね。けど、残念ながら私はただの仲介役だ。鬼の婿になどなる気はない。どうにか、君らの要望を取り下げてもらえないかと話をしに来ただけなのだよ」
予言者の言葉を聞いて、失望の色を隠せない鬼たち。
「なんということじゃ。せっかくのチャンスだと思ったのに…」
「どうしよう。このままでは、あの方のお怒りに触れてしまうぞ!」
「やはり、この方法しかないようだな…」
「そうだな。こうなった以上、もはや手段を選んではいられない」
「よし、みんな!やるぞ!」
一斉に立ち上がり、予言者を取り囲む鬼の軍団。手に手にドデカイ包丁を持っている者たちまでいます。
あわれ、予言者はそのままどこへやら運ばれていきました。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




