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異世界千夜一夜  作者: 大西平洋(ヘイヨー)
~邪神、勇者、時々人~
298/1003

~第297夜~「邪神、勇者、時々人(その87)」

「ケロ吉くんの言う通りだ。みんなが同じ場所に住んでいるから、争いなど起きるのだ。ならば、同じ思想の持ち主同士が集まり、違う考えの者とは別々に暮せばいい」と、クロガネが提案してきます。

「そんなバカな!?」と声を上げる一同。

「え?我輩(わがはい)いいコトいったケロ?」と、当のケロ吉本人が一番驚いています。

「けど、みんなが建物の中に引きこもって暮すだなんて、現実的じゃないわ!」と、サタミが反論してきます。

「誰が建物の中に引きこもって暮すと言った?」とクロガネ。

「え?違うケロか?」

「暮すのは建物の中じゃない。世界そのものだ」

「!?」と、再び驚く一同。

「同じ思想の者同士が集まって、別の世界に暮せばいいじゃないか。こことは別の世界に!私の能力を使えば、それができる!」

 クロガネの言葉に「あ!」と、みんな声を上げます。

 そう!クロガネの能力は空間に巨大な穴を開け、別の世界へのトンネルを作るというもの。その力を使って、別世界に移住しようというのです。

「なるほどね。まさに集団移民(エクソダス)というわけね」と創造神であるナオミも納得します。

「けど、移住先にも人は住んでるわけでしょ?今度はその人たちとイザコザが起きるんじゃない?」と、サタミはまだ不満がある様子。

「当然そうなるだろうな。ならば、その世界でも同じ考えの者同士を移住させてしまえばいい」と、クロガネはさらに提案してきます。

「ええ!?どういうコト!?」と、さらに驚くサタミ。


 そこに摂理光輪教の教主檜扇(ひおうぎ)アヤメが補足の説明を入れてきます。

「言いたいコトがわかってきたわ。たとえば、我が教団が、ある世界に移住したとする。そこで教団の考えに合わない人は、別の世界に移住してもらう。たとえば、クロガネさんが住む世界にね。逆に、クロガネさんの世界で考え方が合わない人は、私たちの世界に移住できる。それをいくつもの世界でやるわけね」

「そういうコト!」と、クロガネがうなずきます。

「そんなムチャクチャな!」と、反対する人たちも現れます。

「けど、それっておもしろそうよね。ムチャクチャにおもしろそう!」と、ナオミはノリノリです。

「おもしろいかもしれないけど、きっとどこの世界も大混乱になるぜ」と、クーちゃんこと大島空斗が反論します。

「確かに、1度世界は混乱に(おちいる)かもしれない。でも、それさえも時が解決してくれるんじゃない?決めた!私はこの未来を選択するわ!この先、どのような未来が待っていようとも、ここから先は見ない!最終的な決断をくだす!」と、ナオミは(みな)の前で宣言します。

「よろしいのですね?ほんとうに?」と、天使が念を押してきます。

「いいわ!決めちゃって!この選択で!」

「わかりました。では…」と、天使は答えますが、何も起こりません。

「え?どうしたの?何も変わっていないじゃないの」と、ナオミ。

「何も変わってはいませんよ。ただし、今後変わるコトもありません。未来は確定してしまったのですから。今後は、2度と時が巻き戻ることはありません。創造神様は、すでに選択を確定してしまわれたのですから」

「なるほど、そういうコトね。もっと、バ~ッと光り輝いて魔法が発動するものだと思ってたものだから。重要な決断って、意外と地味なモノなのね」

 こうして、未来は確定し、ナオミたちは新しい時間を生きることになりました。


         *


 それからは、皆、非常に忙しい時を過ごしました。

 最初は、世界中の人々の意見を集め、似たような考えの者同士を大きく分類する作業から始めました。

 次に移住先の選定です。クロガネの“異世界同士をトンネルでつなげる能力”は、非常に役に立ちました。これまでは、異世界から魔物を呼び寄せるくらいにしか使っていなかったのに、今回は人間の移動に使い始めたのです。それも、尋常ではない人数の人間を!


 こうして、全ての準備が終わったところで、最初の移住者たちが旅立つコトになりました。

 主なメンバーは、クロガネの一派。サタンの娘であるサタミ。それから、アンアンやケロ吉たち。

 アンアンの移住理由は、こんな感じ。

「このままこの世界にいても、元の地球に戻れる可能性は限りなくゼロに近い。だったら、わずかでも可能性の高い別の世界に行ってみるわ。たとえ、そこが元いた世界でなかったとしてもね」


 ナオミは創造神として、この世界に(とど)まり続けるコトに決めていました。

 ケロ吉は、師匠であるナオミとの別れを惜しみます。

「我輩も新たな世界に挑戦してみたくなったケロ!師匠とは、ここでお別れケロ」

「いってらっしゃい。これは、餞別(せんべつ)よ」

 そう言ってナオミがケロ吉に渡したのは、例のマジック・ウォッチでした。少しの間だけ、急激に身体能力を上げることのできる魔法のアイテムです。

「こ、これは…!!」と驚くケロ吉。

「あなたが持ってる方が役立てられると思って。なにしろ、スピードには自信があるケロ吉ですものね」

 そこにサタミがやって来ます。

「ほんとに行かないつもりなの?ナオミ?」

「ええ。私は私で、この世界で果たすべき役割があるから」

「そう…寂しくなるわね」

「たまには帰ってきてよ。永遠のお別れってわけでもないんだから」

「そうね。気が向いたら、この世界にも戻ってくるわ。向こうの世界がよっぽど楽しくて帰りたくならなければね♪」

「じゃ、行くとするか…」

 クロガネを先頭に別世界へのトンネルを進み始める人々。


 さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。

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