~第296夜~「邪神、勇者、時々人(その86)」
永遠にも思える選択肢の繰り返しに、創造神たるナオミはあきらめかけます。そうして、神の座を他人に譲り渡したいとさえ考えるようになりました。
そんな様子を見て、天使が語りかけてきます。
「以前は、そのような神も存在いたしました。そもそもあなた様もまた、別の神のあとを引き継いだ者のひとりなのです」
「そうなの!?」と驚くナオミ。
「ハイ。以前の神が生きるコトに飽きた頃、ちょうどあなた様が天界へと現れたのです。これ幸いとばかりに、神の座を譲り渡し、自分はこの世界から消滅してしまったのです」
「じゃあ、私も誰かに神の座を譲ることができるわけ?」
「もちろん。そうなさいますか?」
「ウ、ウ~ン…それはちょっと待って。その手は最終手段ね。その前に、もう1度試してみたいコトがあるの。さあ!もう1度、時を動かしてちょうだい!」
「承知いたしました」
天使が両手をかかげると、時の止まった世界に動きが生まれます。ゆっくりと流れ始める時間。
*
何度目の未来予測でしょうか?
前回と同じように、ナオミの頭の中だけに響き渡る天使の声。
(ここから先が選択肢ですよ。さあ、敵になる者と味方になる者をお選びください)
「みんな、聞いてもらえる?」
ザッと、声の主であるナオミの方を向く一同。その場にはサタミ、檜扇アヤメ、摂理光輪教の信者たち、クロガネ、その一派である大恩リツたち、空斗、ケロ吉に、百郎、千郎、その兄弟たるクローン人間たち、アンアンやマミヤ・ウェーバーなどの姿もあります。
「ここ最近、私が体験したコトを聞いてちょうだい」
そうして語り始める、この世界の創造神であるナオミ。
長い長い時間をかけ、これまで繰り返してきた未来選択とその結末を語り続け終えました。
あまりに突拍子のない話に、全員が静まりかえります。
沈黙を破ったのはクロガネでした。
「なるほど。君が創造神として苦労してきたのは理解できた。で、我々にどうしろと?相変わらず決定権は君にある。脆弱な人間である我々にできるコトなど何もないと思うのだが?」
コクンと小さくうなずいてからナオミは言いました。
「私は今まで、この世界の未来を変えようとしてきた。でも、どうしても望む未来に行き着くコトはなかった。なぜなのか?理由は簡単だった。私は“私の考えだけ”で未来を選ぼうとしていたからよ!」
「それのどこがいけないんだ?お前が神ならば、自分の理想に従って未来を選んで何が悪い?」と、クーちゃんこと空斗。
「それが間違いだったのよ!確かに、この世界を生み出したのは記憶を失う前の私だったのかもしれない。けれども、この世界にはもう大勢の人たちが住んでいる。だったら、世界の行く末は、この世界に住んでいる者たち全員で決めるべきなのよ!」
ザワザワと声を上げる人々。
「確かに、それは一理ある」
「けど、この世界に住む住民って言ったって、いろんな考えの奴がいるんだぜ?全員の意見をまとめるコトなんてできるのか?」
「そうだ!そうだ!人数が増えれば増えるほど、余計にまとまりはなくなっていく。結局、堂々巡りになるのは目に見えてるじゃないか!」
早くも意見が割れ始める人々。
「見ての通りだ。この場にいる者たちだけでも、すでに意見が割れている。まして、世界中の人間たちの希望を聞くとなれば、さらに事態はややこしくなるだけなのではないかね?」と、クロガネがナオミに向かって言いました。
「確かに。でも、それでも、私ひとりの考えだけで決めるよりはマシだと思う」
「だが、よいアイデアが出たとして、どうやってそれを実現させるつもりなのだ?結局は、創造神であるナオミくんの裁量にまかせられるのでは?」
「最終的にはね。それでも、アイデアを出して欲しいの。それがヒントとなって、何かしらの解決の糸口につながるかも…」
ナオミとクロガネの会話を聞いていた人々も頭をひねって考えます。
「アイデアねぇ」「ヒントかぁ」
そこにケロ吉が意見します。
「結局のところ、みんなが争うからいけないんだケロ!みんな仲良くすれば何も問題は起こらないケロ!」
「そんなコトができれば、苦労はしないさ。それぞれの人間に、それぞれの考え方や生き方があり、ぶつかり合ってるから争いになるんだろう?だったら、みんなが自我を抑えて生きろってコトか?」と、クーちゃん。
「それは、我々の望むところではないな。“自由こそが全て”と信じて生きている者にとって、自我を抑えて生きるなど拷問以外の何ものでもない」と、クロガネ。
「そうよ!そうよ!自由気まま自分勝手に生きているから、楽しんでしょ!」と、サタミも同意します。
「だったら、みんなバラバラに生きていくしかないケロ!壁を作って、建物の中に引きこもって、自分だけの世界の中で生きていけばいいケロ!」
「そんなムチャクチャな…」と、みんなあきれてしまいました。
ところが、ひとりだけ、クロガネだけはケロ吉の意見に何かを見出します。
「いや、待てよ。それはナイスアイデアかもしれない…」
「え!?」と驚く一同。
さて、この続きは、また明日の夜に語るといたしましょう。




