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2人の事情

遅くなってしまいました。

いつもより、少〜しだけ長いです。

がんばって読んで頂ければ幸いです。

 沈黙が続く。

 口火を切ったのはレナードだ。


「なぜ、ジークフリート殿がわたしがアッサムという名前だと知っているんだ。」

 ジークが、気持ちを落ち着けるためか、少し間をおく。


「偶然にも見たんです。ダナン宰相の屋敷の森で。ニシアから帰ってきた夜に貴方はリアーノに逢いにきていた。」

 あの時…見られていたのか…

 アッサムの時だと、レナードと同一人物と誰も分からないだろうと、たかを括っていた。


「…そうか。わたしは身代わり失格だな。ジークフリート殿に見破られるなんて…。」

 レナードがギュッと拳を握る。


「いえ…あの森でお見かけした時は、まさかレナード殿下だとは思いませんよ。使用人同士の恋人の逢瀬ぐらいにしか見えなかった。ただ先日の昼にリアーノを探していた時に、貴方が駆けつけてきましたよね。あの時に気づいたんです。」

 不覚にもあの時は、ナンシーさんからの連絡を受け、すぐ自らリアーノを探しに執務室から飛び出した。

 リアーノになにかあったらと必死だった。

 レナードらしくない…行動だ。


「わたしは本当にダメだな。」

 レナードが俯く。

「だが、ただの「アッサム」とわかっていて、なぜ「殿下」とつけた?」

 レナードの鋭い質問にジークの表情が曇る。

「理由はリアーノですよ。リアーノをあの森で見たとき、大変驚きました。わたしがよく知る人に余りにも似ていて…。」

 レナードがピクッとする。


 ジークがひと息つく。

「ここからは俺の推測です。リアーノはどこで生まれたかわからないと言っていた。あの娘の出生の謎と、貴方のような王家の者の身代わりをする者が側にいる…根本的なところに同じ理由があるのでは?」

 レナードが表情を歪める。

 ジークはなにかを悟った。

「だから、「殿下」とお呼びした。…いまはいいです。きっと、すべては言えないでしょうから。そして、わたしもいま、その秘密を知る覚悟はありません。いまはすべてわたしの胸の内におさめておきます。」

「……ジークフリート殿、ありがとう。そうしてもらえると助かる。」

 レナードが「殿下」らしく麗しく微笑む。


「だからと言って恩を売るわけではないのですが、リアーノを少しの間、貸してください。」

 ジークが真っ直ぐにレナードに目を向ける。


「…一体、なにをする気なんだ。」

 レナードが渋い顔で聞く。

「レナード殿下もご存知かと思いますが、ニシアの王家には嫡男がおらず、王女が1人です。だから、わたしの兄が王女の婚約者です。表に出る兄と、そして筆頭公爵家次男のわたしの役割はレナード殿下が一番よくお分かりでしょう。第二皇子であるレナード殿下がこの国の闇や裏を引き受けているなら、わたしもまたニシアの闇と裏を引き受ける役割です。」

「……。ニシアにも闇はあるのか?」

「ええ。リアーノがダナン宰相の屋敷いたことを鑑みて、貴方が密造酒のことをご存知だと拝察します。わたしは1年程前から密命でそれを探っています。」

 …1年も前に…。

「密造酒のことは最近、他の事を調査していて、偶然気づいた。」

「…他の調査とは、偽札…ですよね。」

 ジークがためらいがちに言う。

「!!!それも知っていたのか?」

 レナードが思わず身を乗り出す。

「ええ。この1年、ある貴族の紹介でダナン宰相の屋敷に護衛騎士として潜り込ませてもらい、ダナン宰相が行かれるところはほぼ一緒でしたので。ただ、肝心な部分はわかりません。いつも外での護衛でしたので、ここになにかがあるとしか。」

「そうか…ジークフリート殿、ありがとう。でも、そんなことまで君はわたしに話してしまって良かったのか?わたしは君の信用に足る人間か?わたしは身代わりとして、国民を欺いている立場なのに。」

 レナードの瞳が悲しげだ。

「貴方が誰であろうとも、どんな事情があろうとも、いま国のために、そしてリアーノのために必死でしょう。「レナード殿下」が怪しい僕を見つけて、なりふり構わずここまで連れてくるぐらい… 。」

 ジークがいたずらっぽい表情でレナードを見る。

 レナードは少し居心地悪そうにジークを見る。


「そうだな。ありがとう。だから、なおさらリアーノはジークフリート殿に預けられない。密造酒絡みでリアーノを使う気だろ。」

「そうです。飾り字などを自由に書くあの腕とそして、あの容姿が密造酒と偽札の摘発には必要不可欠です。貴方は国の経済を混乱に陥れる偽札をわたしがニシアに多額の税を納めない大規模な密造酒を解決する。お互いの国の者が手を組んで悪事に手を染めている。だから、我々も手を組まない理由はないでしょ。」

 ジークが強く言う。

 レナードは難しい顔をしたままだ。


 その時、ふたりほぼ同時にハッと気づく。

 人の気配だ。

「ジークフリート殿…。」

「ええ。誰か来たようですね。」


 物陰にそっと身を潜める。

 女の人のようだ…

 大きな木の下で辺りで見回している。

 長い髪が風に揺れている。

 リアーノだ。

 レナードもジークもこのタイミングでのリアーノに驚きを隠せない。お互いの顔を見合わせる。


「リアーノ!!」

 飛び出したのはジークだった。

 なぜ、出て行く!出て行くなっ!

 嫌な予感しかしない。

 ジークが行くなら、出るしかないじゃないか…

  仕方なく、レナードも遅れてリアーノに駆け寄る。


今日もありがとうございました。(≧∇≦)


アッサム=レナード殿下 24歳

ジーク 22歳

ちょいと、アッサムの方がお兄さんですよ。



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