第三章 廃屋の堕落 ―黒紫に染まる白銀の騎士― 1
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街道の脇、生い茂る蔓草に隠れるように建つ朽ち果てた廃屋。
かつては猟師の詰め所だったのか、湿った土とカビの匂いが漂う狭い空間にリンドは転がされていた。
カイルの手によって白銀の鎧は無惨に剥ぎ取られ、床に散乱している。
今の彼女を守るのは薄いインナーウェアと、書き換えられた直後の濃いピンクに光り輝く紋章だけだった。
「……はぁ、はぁ……っ……カイル……。お願い、だ……もう、止めて……くれ……これ以上されたら、私が、私じゃ、なくなっちゃう……っ……んあっ!」
リンドは涙に濡れた瞳で、カイルを見上げた。
あれほど冷徹だった彼女の表情は、「己が壊れていく恐怖」と抗えない「カイルからの加虐への期待」とが混濁し、無様に歪んでいた。
その身体は熱く火照り、ほんの少しで触れられただけで絶頂に達してしまうくらいに素肌も敏感になっている。
そんなリンドを見下ろしながら、
「自分じゃなくなる? ……いいじゃないか、リンド。君はもう王家に忠実な『白銀の騎士』である必要はない……これからは俺だけに尻尾を振る『メス犬』になるんだからな」
カイルはそう述べた。
「メス、犬……カイル、の」
「あぁ、そうだとも」
カイルはリンドにそっと近づき、その顎を指先ですくい上げ無理やり自分を見つめさせる。
「ふあぁぁ……」
指先が触れただけで、鋭敏になったリンドの肌がぞわぞわと反応する。
「さぁ、俺の目を見るんだ、リンド」
「あ……あぁぁぁ」
カイルの右目がリンドの内面を覗き込む。
彼女の内面で激しくぶつかり合う「理性」と「本能」。
黄金色の理性の破片が、カイルの放つまがまがしい黒の魔力の渦に飲み込まれ、ドロドロとした色欲に溶けていくのが『視えた』
「だ、め、だ……カイル……お前に見つめられるだけで……私は……私は」
自分が徐々に書き換えられていく恐怖ゆえか、震える声でリンドが言う。
そんな言葉を無視し、カイルが続ける。
「思い出せリンド。君が演習場で俺を蹴り飛ばしたとき……本当は、自分の足に伝わる俺の肌の感触にゾクゾクしていたんだろう? 本当は自分が蹴り飛ばされる側になりたい。俺から蔑みの言葉を浴びせられたい。ずっと抱えていたそんな欲望を、これまでは男を蔑むことで解消していた。そうすることでしか、自分の内側に潜む『獣』を抑え込めなかったんだろう?」
「ちが、う……私は、王国の、騎士、として……っ! 不埒者に制裁を……っ!」
「男に虐げられ興奮しているお前が王国の騎士? はっ! 笑わせるね!」
カイルの手がリンドに伸びる。リンドにカイルの指先が触れた瞬間、
「ふあぁぁぁっ!」
リンドの口から熱い嬌声が漏れた。
「身ぐるみはがされ、憎い男にいいようにされているのにというのに悦びの表情浮かべるなんて……白銀の騎士が聞いてあきれるぞ」
「あっ! いや、そんなこと、いわない、でっ!」
カイルの呟く侮蔑の言葉に、リンドは身体を震わせる。
それは怒りからくるものではなく愉悦からくる震え。侮蔑の言葉に快感を得ている証だった。
「もう、やめ……」
「リンド。白銀の騎士としての君はもう死んだ……見てみろ。君のその紋章。俺がこうして近くにいるだけで、こんなに淫らに脈打っているじゃないか……君の心は否定しても、君の『紋章』は正直だ。欲望を解き放ってほしい。俺に『飼われ』『蔑まれ』『踏みにじられること』を死ぬほど欲しがっているんだ」
そう言いながら、カイルはわざとリンドの右の内股にある紋章を指先でツツツとなぞった。
「あ、が……っ!! ぁああああああああああッ!!」
その瞬間、リンドは悲鳴を上げ背中を弓なりに反らせた。
指先が触れただけの場所から、猛烈な快楽が全身の神経を駆け抜け、リンドの脳を快楽の地獄へと叩き落とす。
「ふふ、すごい感じているね。……リンド、素直に認めろよ。認めれば楽になれるぞ……ほら、言ってごらん『私は、カイル様に蔑まれたいメス犬です。私をカイル様のペットにしてください』とね」
「い……嫌……っ! そんなの、言いたくない……認め、たく……ない……っ、認めたく……あああああっ!」
再びカイルの指先がピンク色の紋章をそっとなぞる。
快楽と愉悦がリンドの身体中を駆け抜け、理性を崩壊させようとしてくる。
リンドは自らの腕をぐっと噛み締め、残されたわずかな理性を繋ぎ止めようと必死に抗った。
だが、そんなリンドのことをカイルは冷酷に笑い、最後の仕上げに取り掛かる。
「無駄な抵抗だ、リンド。これで……おしまいだ」
カイルは自らの右掌を、リンドが所持していた短刀で浅く切り裂いた。
「くっ!」
カイルの右手のひらに広がる赤黒い血液は、禍々しい輝きを放っている。
「……さあ、契約の時間だ。君の魂を俺が買い取ってやろう。これから君は、俺の忠実な犬になる」
「いや……いやぁぁぁぁぁっ!」
最後の抵抗を見せるリンド。そんなリンドを片手でねじ伏せ、カイルはその血濡れた手で彼女の右内腿の紋章を直接、力強く掴んだ。
「……我が血に流れる穢れた因子よ。この者の『本音』を現実にしろ!」
「っ!? ぁ、あああああああぁああああああああああああっ!」
廃屋にこれまでにないリンドの絶叫が響き渡る。
カイルの血が、彼女の紋章の回路に無理やり流れ込み、ピンク色の光を侵食していく。
「あぁぁぁあぁっ! だめっ! だめぇぇっっ! 入ってこないでっ! 私の中に、入りこまないでぇぇぇぇっつ!」
黄金色をしていた彼女の魔力はカイルの赤黒い血と混じり合い、粘り気のある邪悪な黒紫色の魔力へと変質していく。
「あぁぁぁっ! だめっ! やめてぇぇぇっ! これ、だめなのぉぉぉっ! 私がぁぁぁ、私が消えちゃぅ! 私が私でなくなちゃぅぅっ!」
「今こそ生まれ変われ、リンド! 王女に仕える忠犬から、俺に奉仕するメス犬に!」
「いやぁぁぁぁぁっ! だめぇぇぇぇっ!」
リンドの視界が真っ白に染まる。
リンドの脳内にあった「王家への忠誠」「騎士の矜持」「男への嫌悪」といった記憶の断片がカイルの血によって一つずつ塗りつぶされていく。
代わりに刻まれるのは、カイルの指先の感触、カイルの声、カイルへの絶対的な服従心。
「あ、あぁぁぁ……あ、あぁ、あ……」
リンドの絶叫が収まり始めると同時に、彼女の右内腿に浮かんでいたピンク色の紋章は、妖しく、深い『黒紫色』へと変質した。




