ソフィア 7
旦那様の顔が間近にある。
(ライリー様と従兄弟同士だけあって、旦那様の顔も整っていらっしゃる。)
思わずライリー様と比べていると何か勘違いをされたらしい。
事もあろうかキスしようとして来たから、さりげなく顔を背ける。
「申し訳ありませんが、ライリー様にご用があるのを忘れておりましたの。」
言い終わる前に立ち上がる。が何故か後ろから抱きしめられている。
もがけばもがく程力が強くなる。
あんなにも恋しかった旦那様に抱きしめられているのに、わたしの頭の中にはライリー様の顔が浮かんでいる。
全身の震えと、鳥肌に限界を迎えた頃
「アインス!何をしているんだ!!」
旦那様から離されたわたしは、ライリー様の腕の中へ閉じ込められた。
「ライが他の女性を相手にしている間、私が美しい人の相手をしていただけだよ。」
「相手をしているのに何故抱きつく必要が?」
「お酒を飲まれたからかな?ふらついて転びそうになった所を支えて差し上げたんだよ。」
ねっ?とわたしの顔を覗き込む。
わたしは顔を見られたく無くて、ライリー様の胸に顔を埋める。
旦那様は仕方がないなぁ、と小声で言った。
「次お会いしたらお名前を聞かせてください。」
ライリー様は旦那様がベランダから出て行くのを確かめると、胸の中で震えているわたしに顔を落とす。
「フィア、何かされましたか?」
「手を、握られただけですわ。」
それでも身体の震えは治らず、ライリー様はわたしを屋敷へと送り届けてくれた。
わたしをアンに預けると、ライリー様はすぐにお義父様の元へと向かって行った。
お風呂へ入りホットミルクを飲んでいると、お義母様が入って来た。
「ライリーから話は聞きました。その、大丈夫?」
「すみません、驚いてしまって・・」
正直、思い出すだけでも震えてくる。
そんなわたしを心配したお義母様は、明日話があるから今日はこのまま休みなさい。と、ベッドまで着いて来てくれた。
(いったい何の話かしら?)
そう思いながらも疲れていたのか、直に眠りについた。
次の日、お義父様に呼ばれ応接室へと向かうと
お義父様、お義母様。ライリー様と何故か旦那様も居た。
今日のわたしは夜会バージョンでは無いので、ドレスもメイクも地味だ。
そのせいか?旦那様はわたしを見ようともしなかったが、その代わりライリー様は旦那様に気付かれないように微笑んでくれた。
「ソフィア、アインスから話があるそうだ。二人で聞くかい?それともここで聞くかい?」
お義父様とお義母様はわたしの意思を尊重してくれる。
ライリー様は少し心配そうにわたしを見ているが、当の旦那様はわたしと目を合わせない。
こんな方と二人きりになるのは怖かったが、皆んながいたら聞きたい事も聞かないと思い、
「出来たら二人で・・」
と答えた。
お義母様は 隣の部屋に居るから。 と言って部屋から出て行かれた。
ライリー様はお義父様に背中を押されながら出て行く。
夫婦だが夫婦らしく無いため、扉の外にアンが控えることになった。
旦那様はアンが淹れたお茶を一口飲むと口を開いた。
「結婚二年目だが君と離縁したいと思う。」