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クロード様に引っ張られるまま、ひたすら庭を歩いた。前を歩くクロード様はまだ怒りが収まらない様子だ。
一体なぜ、私が苛立ちをぶつけられなければならないのかと、うんざりした思いで彼を見る。
しばらく歩いた先の、四阿の前でクロード様はやっと足を止めた。
「エミリア、あいつとはどういう関係だ?」
クロード様は顔を強張らせて尋ねてくる。
「友達です。精霊学や薬草学の授業が一緒なので、たまに話すんです」
「ただの友達とあんな風に二人で会って、手まで握らせるのか?」
クロード様の言いように、私はすっかり呆れてしまった。クロード様なんてミアに腕を組まれても振り払いもせず、楽しそうに話していたくせに。
「レスター様が言っていた通り、先ほどは偶然会っただけです。私が元気がないのを見て声をかけてくださったんです」
「偶然、ね。本当はお前のことを追ってきたんじゃないか? あいつの方はお前のことをただの友達と思っているようには見えなかったぞ」
クロード様は冷たい声で言う。私の胸にどんどん苛立ちが募っていく。
「……まあ、今回のことはいい。これからはあいつと会うなよ。授業でも極力話さないようにしろ」
「……なぜクロード様にそんなことを決められなくてはならないのですか」
「なんだ、文句でもあるのか? お前の婚約者は俺だろ」
「婚約者だからって私の行動を制限する権利はあるのですか? クロード様こそ、さっきまでほかの女の子と踊っていたくせに。勝手過ぎます」
「そ、それは……。さっきは事情があったんだ! 謝っただろ? 俺もこれからはああいうことはないようにするから……」
クロード様はさすがに後ろめたかったようで、目を泳がせる。私の心はどんどん冷えていく。
「いいですよ。クロード様にはもう期待していませんから、好きにしていただいて」
「な……っ」
「クロード様は私に色々不満がおありでしょうけれど、私だって婚約者はもっと思いやりのある方がよかったですわ。私のことをちゃんと見てくれる方が」
クロード様の横暴な態度に呆れて、つい言わなくてもいいことを言ってしまう。見ると、クロード様は引きつった表情を浮かべて私を見ていた。
「レスターみたいな奴がいいのか? お前のことを見張って、一人になったらぬけぬけと声をかけてくるような奴が好みなのか?」
「嫌な言い方をしないでください。レスター様は私を気遣ってくれただけです」
「あんな大した家柄でもない伯爵家出身の男のどこがいいんだ? あんな家、俺がその気になれば簡単に没落に追い込めるぞ。そうだな。手始めにうちの傘下の家を利用して──……」
「いいかげんにしてください!!」
気が付くと、クロード様の頬を思いきり叩いていた。乾いた音が静かな空間に響く。




