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クロード様は頬を押さえ、呆気に取られたように私を見た。
「エ、エミリア……?」
「本当に自分のことは差し置いて勝手なことをべらべらと……!! 家の力を利用して自分より身分の下の人間を追い詰めようとするだなんて、恥ずかしくないのですか!? 私はそんな品性のない方、大嫌いですわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、エミリア! 本気で言ったわけじゃないんだ。ただ、君があいつを気に入っているのが悔しくて……」
「私がほかの人と仲良くしてなにが悪いんですの!? そもそも、私はクロード様のように婚約者以外の方と無闇に関わる気などありませんでしたわ! それなのに、私の知らないところで他の生徒を牽制して回るなんて……! 私はあなたの所有物ではありません!」
「知ってたのか……? いや、エミリアを所有物だなんて思ってない! 君を危険から守ろうとしただけだ!」
クロード様は慌て顔になり、先ほどまでの苛立たしげな態度から一転して私をなだめようとする。
そんな態度が余計にいまいましい。
ミアと踊っているところを見せられ、励ましてくれたレスター様のことまで悪く言われ、私の心はクロード様への怒りでいっぱいになっていた。
「……クロード様。やっぱり婚約は解消していただきたいです」
「え、あの、エミリア……」
「二度と私の前に姿を現さないでください!!」
縋るように私の手を掴もうとするクロード様を払いのけ、私は全力で彼の元から走り去った。
ドレスとヒールのせいで走りづらいけれど、構わず庭を駆けていく。
クロード様なんて嫌い。大嫌いだ。
一体私を何だと思っているの?
私のことなんてちっとも見ていなかったくせに、私がほかの人と関わることは制限しようとするなんて。
婚約解消に納得してくれないのは意地ではなくて、所有物だと思っていたものが手元からすり抜けるのが気に入らないからなのかもしれない。どちらにせよ私のことを馬鹿にしている。
「クロード様なんて大嫌い……!」
走りながら、かすれた声で叫ぶ。
クロード様なんて嫌いだ。けれど声に出した瞬間、自分でもわからない痛みが胸を走った。




