飛鳥
飛鳥は、二歳くらいになると、御喋りが上手になって、一丁前に、玖一と二人だけでデートの様な事を出来るようになった。
飛鳥というのは、玖一と二人だけで一緒に御出掛けして、良い子で御座りして、玖一と一緒に何か食べて帰って来る、という事が出来る、大人しい子なのだった。
玖一は、飛鳥を喜んで連れ歩いた。
紅子も燐子も、微笑ましく、其れを見ていた。
紅子と燐子は、時々、飛鳥に服を拵えた。
冗談みたいに楽しい、と燐子は思った。
幾らでも着せたい服が思い付いた。
燐子の頭の中でだけは、燐子は子供服のデザイナーだった。
飛鳥のサラサラの髪に、リボンを結んでやるだけでも、イメージが膨らんだ。
燐子は幸福だった。
可愛い服を着せると、飛鳥は、皆に可愛いと言われて、燐子は其れが冗談みたいに嬉しくて、玖一は、大喜びで飛鳥の写真を撮りまくった。
綜一と紅子は、幸福其のものの顔で、膝に、大人しい女の子の孫を抱いた。
時々、綜一が、子供の登場する絵を描くようになった。
燐子は幸福だった。
良かったねぇ、と、綜一が冷やかすように言った。
「三十六年間何も無かったとか言っていたけど、毎日女二人両手に花で、しょっちゅう娘とデートして。急にモテモテじゃないの」
綜一の御道化た言葉にも、玖一は平気になっていた。
「良いでしょう、ね、あぁちゃん」
あぁちゃん、と呼ばれて、飛鳥は、玖一に、抱っこ、と言った。
「おやおや、あぁちゃん全然歩かないねぇ。もう、あんよは、上手だろ?」
んー?と玖一は言ったが、飛鳥は、全く譲らず、抱っこ、と言い続けた。
玖一は、よいしょ、と言って飛鳥を持ち上げた。
「いやー、お父さんが元気なうちに、あぁちゃん、お姉さんになって自分で歩いてくれないと、お父さんギックリ腰になるなぁ」
全く困っていない顔をして、玖一は、困った、困った、と言った。
こりゃ駄目だ、と言って、綜一は笑った。
紅子と燐子は、其れを見て、可笑しくて笑った。
幸福だった。
燐子は二人目を妊娠していた。
次第に飛鳥は、今日は、おじいちゃんとおばあちゃんと寝る、と言う事が多くなった。
一日おきに両親と祖父母の寝室を行ったり来たりするのが楽しかったらしい。
しかし飛鳥は、綜一が、飛鳥が寝る前に本を読んでくれるのが大好きになってしまった。
だから、夜になると、御気に入りの兎の縫い包みと一緒に、綜一と紅子の部屋に向かうようになった。
燐子や玖一が読むのでは、何故か納得してくれなくなった。
要は御祖父ちゃん子という事らしい。
玖一と燐子は、喜ぶ綜一と紅子を、微笑ましく見ていた。




