第10話 ポールダンスは正式なスポーツ競技らしい
「ふふ、お待たせ」「あっ、かっこいい!」
ちょっとお邪魔した橋本園美渡さんのお部屋、
陽菜ちゃん、れいさんと真ん中にポールが縦に突っかえている前で待っていると、
ウォークインクローゼットから着替えた色気溢れるお姉さんがやってきた、インストラクターみたい。
(グレーの厚いスポーツブラにスパッツ、凄く健全なやつです!)
いや、ここで『健全とは』とか言わないよ、
少なくとも男性が過度に変な気分にはならない感じの、
だってヨガ教室の看板に出てる写真みたいな姿なのだから!
「うふ、控えめな格好にしてみたわ」「それで?!」
「リョーちゃん、前に見た時はもっと薄いレオタードだったわ」
「おそらく涼一さんには~、刺激が強すぎるかと~」「ま、まあ、ポールダンスですからね」
ポールに絡みつく橋本さん。
「涼一君、改めてポールダンスの知識はどんなの?」
「あっ、言っても良いのでしょうか」「15歳なりにね」
「その、大人のお店で際どいお姿の女性が、妖艶なダンスを」
もう雰囲気が、それである。
「良いかしら、20年くらい前からもうポールダンスは立派な競技よ」
「そうなんですか」「ええ、別名ポールスポーツともポールバレエとも呼ばれてるわ」
「真面目な、種目なんですね」「もはや世界的に正式なスポーツ競技よ」「し、失礼しました」
いかがわしく無いんだ。
「ではこれから簡単なポールダンスをお見せするわ」
「このポール、大丈夫なんですか?」「しっかり回してあるから」
「リョーちゃん、上と下を回して突っ張り棒を固定するタイプよ、私が全力で登って試したから大丈夫」
いやそれ陽菜ちゃん軽くない?
と思ったけどここはスルーしておこう。
「では曲を……」
スマホを操作すると、
何だか神秘的な音楽が聞こえてきた、
そしてポールに身体をつけて、腕でしっかり持って全身を浮かせる。
(おお、これは凄い!)
そして突き出たお尻の迫力が凄まじい、
いやそんな所を見ていないでスポーツ競技、
バレエダンスの種類として見ないと、うん、身体がやわらかい。
(すごい動きだ、軟体動物みたい)
しかもポールを中心に回っている、
セクシーだ、そしてよく見たらお尻の大きさとは別で、
胸も結構おおき、いやそういう雑念で見ちゃ駄目だ、スポーツなんだから!
(でも将来、オリンピック競技とかになるんだろうか)
いやそこまでガチ勢だったら気を使う、
などと見惚れていたら音楽が終わった。
「ふう、とりあえずはこんな感じよ」
ぱちぱちぱちと、
とりあえずはみんなで拍手。
「思っていたよりダンスというかバレエというか」
「なかなか力が必要ですよね~」「登るだけならこのお姉さんも出来るんだけどねえ」
「ふふ、ただこれはあくまでも趣味だから」「それでも凄い、大したものですよ」「涼一君に褒められると嬉しいわ」
ベッドの上に置いてあった、
長いタオルで汗をぬぐっている、
少し青みがかったセミロングの髪がこれもこれでセクシー。
「趣味っていうことは大会とかは」
「アマチュアのね、大きい大会は観に行くわ」
「観覧の方ですか」「涼一くん、一緒に行く?」「うーーーん」
さすがにそこまでは。
「涼一さんは~、趣味は~」
「部活じゃなくて? 趣味ならJリーグ観戦かな」
「サッカーですか~」「応援しているチームがあってね」
高校の部活どうしよう、
許されるなら帰宅部でもいいかな。
「あっ、部屋にマフラーがあったわね」
「うん、陽菜ちゃんが出してくれたタオルマフラーとかユニとか」
「私に会うサイズのユニフォームもあるからしら」「キッズデーのが、あっ」「何よ」
大人は貰えないんだった。
一方でスポーツドリンクを呑んで落ち着く橋本さん。
「こっちに来たら時間が取れるからポールダンスが捗るわ」
「橋本さん、こっちへ来る前は」「ふふっ。園美渡って呼んで欲しいわ」
「じゃ、じゃあ……えみとさんは実家とかでは」「当時は工場の手伝いが忙しくてね、本当に日曜くらいしか」
実家が工場なんだ、
ポールに登るようになったのも、
何か関係があるのかも知れないな。
(あと、こちらも『園美渡』さんではなく『えみと』さんと呼んでしまう)
まあ細かいニュアンスの話はいいとして。
「居なくなって大丈夫なんですか?」
「もう平気よ、埼玉の大きい銀行から融資して貰って持ち直したわ」
「なぜに埼玉」「東京の金融機関全部に断られて」「結構、崖っぷちだったんですね」「命拾いよ」
なぜか妖艶に僕に微笑む。
「はしもっちゃん、そろそろ」
「あっそうね、遠藤様が早めにご夕食を」
「作りに行くんですか」「私もお手伝い致します~」
ということで、
再度着替えるえみとさんを残し、
部屋を出たのでした、いやあ、あのポールはしっかりしてたなあ。
(僕が挑戦する気は無いけど!)
めっちゃ筋肉痛を起こしそう。
「じゃあリョーちゃんは部屋でくつろいでて」
「ええっと僕もお手伝いは」「今日は~、おもてなしさせてくださ~い」
「ま、まあ、そこまで言われたら」「それとも誰かと、いちゃつきたいのかしら?」「いえ、それは、まだ」
あっ、『まだ』とか言っちゃった。
(とりあえず、自室に帰ろう)
こうして戻ると、
部屋の前で待っていたのは……!!
「涼一」
「あっ景香お姉ちゃん」
「ふたりっきりで、お話できる?」「う、うん」
やばい、
ちょっと緊張しちゃう。




