第9話 インナーバルコニーというらしい
「こちらです~」
「あっ広い、そして左右が壁」
「インナーバルコニーっていうやつね」
これだと強い風が吹いていても大丈夫そうだ、
野沢麗さんがくるくる回ってみせる、
おさげやスカートが舞うが、なによりお胸がぶるんぶるん。
「ちなみにこういうのもあるわ」
いつのまにかミニ脚立を持ってきていた陽菜ちゃんが乗って、
高い位置のリモコン(といっても普通は普通に手が届く)を操作すると、
上からバーが降りてきた、これ洗濯用の物干し竿か、雨の日も干せるなこれ。
「重さ制限がありますか~、ぶら下がって遊んじゃ駄目ですよ~」
と重そうな胸で言う野沢さん、
ってずいぶん低くまで下がったな、
陽菜ちゃんが脚立なしで手が届く位置まで。
「重さが大丈夫ならブランコにでもするんだけどね」
「あとハンモックとかもですか」「まあ屋上があるし」
「洗濯物は~、乾燥機も買ってありますから~、無理に干さなくても~」
バルコニーから外を見る、
やっぱり47階は普通に高すぎて怖いな、
あとそこまで行くとやっぱ風が凄いや。
(野沢さんも眼鏡を気にする強さだ)
うん、お胸じゃなく顔をしっかり見よう、
おさげも風でなびいちゃってる、陽菜ちゃんも脚立持ってきた、
とはいえ脚立に登っても、ようやく首が手すりに乗る高さだな、背伸びして。
「って脚立の上で背伸びは危ないよ陽菜ちゃん」
「子供が産まれても転落防止はばっちりね、ね、リョーちゃん」
「ええっと野沢さん」「麗です~」「で、ではその、れいさん」「はい~」
なぜかかしこまった感じの『麗』さんって言い方じゃなく、
すこしやわらかい『れい』さんって呼んでしまう、雰囲気のせいか、
大きすぎる胸を気にして声が少し震えるからか、いやそんなのニュアンスの問題か。
「ご相談というのは」
「ここの使い道です~」
「布団とか干すエリアでは?」「何か置きましょ~」
ここに更に物置とか設置したいのかな?
「例えば」「お花とか~」
「あっそういう」「きょ~かちゃんは野菜を育てたいと~」
「でも7人分も?!」「あくまで趣味かと~」「うーん、日当たり的には大丈夫かなあ」
陽菜ちゃんが脚立を肩にかける。
「あんまり鉢植えとか置くと大変なことになるわよ」
「えっ、台風で落ちちゃうとか?」「ううん虫よ、蚊の大量発生とか」
「47階で?!」「虫は人にくっついてくるからね、タワマンあるあるよ」
じゃあ隣の住民に迷惑かけちゃう、
ってこのフロアはちゃんと住むのは僕らだけだっけ、
だとしても下の階とか蚊がいっぱい来たら迷惑だよね。
「じゃあ管理できる数のお花とかなら」
「ちなみにおケイさんはバスケのゴールを設置したいって」
「えっ、あれか3on3みたいな」「屋上に置かせて貰えばって言っておいたけど」
あとバスケのボールが、
外へ落ちて大惨事になる可能性もあるか。
「ちなみに陽菜ちゃんの希望する使い道は」
「ステージでも組んでショーでもするかしら?」
「それこそ屋上で」「あと下の談話室ね」「迷惑じゃなければいいけど」
だったらキッズルームだな。
「涼一さんは~」
「えっ僕?! たまに乗り出して、外見て黄昏られるならいいかな」
「何か過去にあったのでしょ~か~」「ううん何も、まあ、まったく無かった訳じゃないけど」
さて、もういいかな。
「では~、とりあえず鉢植えをひとつ~」
「うん、僕は良いよ、あとは父さんと、あとリーダーの」
「田中さんですね~、帰って来たら改めてお話してきます~」
あっそうだ!
「上のプールって夏の間だけだよね、ここに露天風呂を設置してみるというのは」
「それは~、面白い考えだと思います~」「あっリョーちゃん、やっぱり私たちと入りたいの?」
「いやいやそうじゃなくって、気持ち良さそうだなって、この高さなら覗かれないだろうし、星空も綺麗だろうし」
ドローンとか飛んできたら、知らない。
「では~、戻りましょ~」
「あっはい、れいさんってもう荷物の整理は」
「終わってます~、大きいサイズのブラとか見ますか~?」「いやそんな」
むしろ見せたいのだろうか。
「レイちゃんは海外の通販サイトで買ってるのよね」
「種類豊富で~、セクシーなのも多いですが~、買い過ぎ注意ですね~」
「私なんかも、もっとお姉さんっぽいのが欲しいんだけどね、リョーちゃん選んでくれる?!」「さて、次はどこへ行こうかなあ」
室内に戻ると今度は、
めっちゃ大人な色気のお姉さんが……!
「ふふ、涼一君、インナーバルコニーはどうだったかしら?」
「色々と使い道の夢が広がりました、あっ、橋本さんの趣味って確か」
「ポールダンスよ」「それをあそこに立てるのは」「外に?!」「あっそうか、冬は寒いか」
公園の登り棒じゃないんだから。
「良かったら私の部屋のを見る?」
「ポールですよね、ちょっと気になります」
「では~、行きましょう~」「ご一緒するわ」「う、うん」
こうして丸瀬さん野沢さんと一緒に、
橋本さんのお部屋へお邪魔するのでした、
そういや他の寝室へ入るの初めてだな、私室か。




