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20話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「んんー、体伸ばせるって素晴らしい!」





拘束は解かぬまま全てお世話をすると言ったサーちゃんに、このままだと頭撫でたり出来ないよと言って拘束魔法を解いてもらった。

良かった。俺の旅が終わるところだった。



半日ぶりに体を動かせて気分爽快。




「それで、これからどうするんだ?」




対面にこれからを尋ねてくるメイ。

俺の右手に腕を組んでうっとりのサラ。




「行きたいところが幾つかあってさ」




出来れば、ここヒリアに来た様にこれまで生活したことのある場所を巡ってみたい。

今どうなっているか気になる人や場所が幾つもある。




「ダメ。ここで暮らす」




「えー俺サーちゃんと旅行したいなぁ」




「行く。絶対行く」




「発言の撤回が早すぎる...」





ここまでサーちゃんの気持ちが強いとは想定外だったが、恐らくは親代わりであった俺への親愛が死によって歪んだ結果。

そのままの俺を見ていれば幻想も醒めようと言うもの。


まぁ子供が親戚のおっちゃんを好きだ好きだと言ってくれる期間は短い。俺たちの関係はそんな感じだ。つまりは今だけのものだろう。



それはそれとして単独で動けなくなった事は残念だが、サーちゃんがいる旅も多分楽しいものになる。

あまり問題だとは思っていない。




そうだ。

死に難くはなったものの、俺はそれを悩みだとは思っていない。

1ヶ月と決めたリミット。アッシュに出した手紙。色々あるが、次の仕事に逸る気持ちは今なりを潜めている。

理由はサーちゃんだ。


強い子に育った。

命に届くとは思わなかったし、能力の幅も広い。

できた弟子を持ち、過去の恩人であろうと倒さなければならないなら倒す意思の強さもある。



他にもいるんじゃないか?

この様に育った人物が。



つまり<他のも見てみたくなった>のだ。

標的組でも、運命力組でも、誰でもいい。



ゲームで過去作のサブクエで助けた登場人物がめちゃくちゃ強くなって再登場した感覚に近い。

懐かしくプレイしたシリーズを辿る旅も悪くない。そう思ってしまった。



幸い移動力には自信がある。

旅行がてら巡って確認するだけなら1ヶ月で十分だ。

行動の軌道修正が必要なら人神からメッセージが届くだろう。いつまでと指定も無かったので時間には余裕があるのだろうし。





「ほな準備して出よっか」




「私、は...もう出れるよ」




「だったら私はここまでだな!師匠と2人で仲良く旅行でもなんでも行ってくれや。私はエゼに戻って報告でも.....」









「ってなんで私も連れてかれてんだよ!?」




「メイは1ヶ月借りるって言ったし...今帰すのは勿体無いよ」




騒ぐメイちゃんと俺達は今空に居た。

みんなで使える移動手段はと考えていたらサーちゃんが手笛を一吹き。数分で手綱を付けた竜が現れその背に乗せられたのだ。




「らしいからちょっと休暇だと思ってさ。俺もメイちゃんと離れるの寂しいなぁ」




「お前が寂しいとかどうでもいいわ!1ヶ月だぞ?帰ったらなんて言われるか...クビだとか言われたらどうすんだよ...」




「そんなの許さない。また王都襲って分からせるから大丈夫」




「それが嫌なんですよ...親に頼ってるみたいで...」




「頼ってくれたら嬉しいよ?」




「ああもう...はい.....」




サーちゃんはかなり過保護と見える。

にしても襲うのがエゼの詰所ではなく王都な辺り中々のお転婆だ。

待てよ...また?




「...サーちゃん王都襲った事あるの?」




「みんなにいじわるするから、だよ」




「いじわるってか...ヒリアに来た騎士団と一悶着あってな。師匠の飛竜狩りでのツテが無かったら指名手配だった」





「マジ?凄...」




こともなげに話すが中々の大事だ。

王都のお役所仕事を功績で曲げさせるとは。

俺なんて少しの違反でも絶対許してくれなかったが...




「そういえばサーちゃんってその飛竜狩りがお仕事なん?」





「うん...私ならいちころ」





「本当に凄いんだぜ。どんな飛竜でも一撃だし逃さねぇ。今じゃ貴族が財布の紐ちぎってでも呼びたがる。あんたがヒリアで色々やったのは聞いてるが、1番の手柄は師匠を助けた事だ。間違いねぇよ」




強引に連れられた割にはサラの事となるとメイちゃんも口数が多めだ。

むふっと心なしドヤ顔のサーちゃんと、腕を組んで頷くメイちゃん。

どちらも誇らしいのだろう。可愛らしい。




にしてもサーちゃん...変わったなぁ。

これが...こっちが素、なのかもな。




「それで、あんたはヒリアを離れてから何してたんだ?生き返ってたんだろ」




興味本位なのだろう。

メイちゃんがなんでも無い顔で聞いて来る。

特に隠すことでもないのでそのまま話す事にした。




「んーそれが直ぐ生き返ったんじゃないのよね。多分4年後くらいかな?一回王都で生き返って、また死んでそっからは勇者パーティの一員やってたよ」




言った側から右手に圧がかかる。

もしかして喋ってなかったか?

最初の説明の時に...ああ、自力で生き返ったとしか言わなかったか。




「お、お前そんな短期間に何回も死んでんのか?」




「蘇る度にほっとけん人多くてね。時間も場所もバラバラやから元の場所にも戻れんし...」




「...」




「骨が軋んでそうな音してますがあのあのあの」





折れそう折れそう。

タップタップとしているとまたメイちゃんが尋ねる。




「それはその、呪いか何かなのか?」




「体質...みたいな?」




「偶に聞くギフトみたいなもんか...?それにしても聞いたことねぇな。生き返るなんて」




ギフト...生まれつき持つ特殊能力の事だ。

同種族と比べても妙に力が強いだとか、なぜか明日の天気が分かるだとか、その種類は多種多様だ。俺の場合神様から与えられた<ゲームのシステム>がこれにあたる。


最初この言葉を知った時、こんなファンタジーな世界ならそりゃ色んな能力を持ってる人がいて当然かと思った。だが実際にはギフトを持つ人物は極端に少ない。

数百数千に1人、なんてレベルでは無い。

小さな国なら全国民で数人、なんてのもザラ。しかも役に立つ能力とは限らないのがミソだ。



小さい頃には夢にまで見た魔法の世界は、案外厳しい現実の元成り立っている。





「じゃあ、ずっと一緒だね」




ようやくサーちゃんが喋ったと思ったら中々重めな言葉が出て来た。




「一緒なのは良いけどなんで力が強まってあがががが」




「でも...もう少し、自分を大切にして欲しい」





ダメージマークで視界が赤色に染まる。

しおらしいのは言葉だけか。




「...そんで、今は何処に向かってんだよ」




「ベルクミアって交易都市。前おった時からもう30年くらい経つんやけど、知り合いの1人くらいおらんかなーって」




「ベルクミア...なんか聞いたことあるが....」




「...聖剣が見つかったところ、だね」




「聖剣...!!そうか、そうですね...!」




サーちゃんが補足する。

そう、アッシュが今使ってる剣だ。

おあつらえ向きに<選ばれしものにしか抜けない>なんて曖昧な注釈がされた問題児。

そして実際、アッシュが触れるまで誰にも抜けなかった最強の剣。



漏れ出す異常な程の魔力量から国によって莫大な金額で買い取られ、鑑定のギフト持ちによってとてつもない力を持つことと、特定の人物にしか扱えない事だけが分かり国の宝物庫へ仕舞い込まれていた品物だ。


見つかったのは当時まだ小さな街だったベルクミア。近くにある遺跡群からの出土品を売り捌く交易拠点。

聖剣を見つけ一攫千金。夢を叶えたある冒険者に続かんと様々な人が押し寄せた事で急成長を遂げた都市。




「あれ、でもこっちであってましたっけ?」




「...ケイ君が一目どうしてもって」





話をしている間に着いたのはヒリアのとある館。

大通りに面し、人の出入りも特に多いこの街の中心。

あまり近付き過ぎないよう、注目を集めないよう太陽を背にして着陸せずに止めてもらう。




「さて、ガゼ君元気かな」




日差しを手で遮りながら目を細める。

多分執務室はあの位置で...居た。





「ふふっ、大人んなったなぁ」




歳の話をすると怒るので正確な年齢は分からないままだったが、出会った時は確実に小学生か中学生くらいの見た目だった。

そこから過ごした期間が3年。そしてここで死んでから14年だから...恐らくは現在30歳前後か。



あの頃から常に顰めっ面だったが、そこは変わらないな。

だが今は威厳がある。

ただ険しい顔をしているだけでは無い。深い堀には、積み重ねた経験と年月が見えるようだ。




「なんで会ってかないんだ?」




「ガゼ君絶対俺のこと働かせるもん」




「...そんなことない、よ」




「ああ、んな事無理に言う人じゃねぇよ」





意外な事に2人から咎められた。




「いーや絶対言うね」




「だったら断れば良いだろ」




「断りたくないから会わないの」




「なんじゃそりゃ」





どうやら2人には甘いらしい。

だが俺たちの関係性はそうじゃない。

あいつに請われたら俺は断れない。

それも悪くないと思ってしまう。そんな魅力がある男なのだ。



今もそうなのだろう。

最初はあいつと俺だけだった執務室は人が増え、俺の視界には沢山の人々が映っている。お飾り領主のガゼ君はもう居ない。



もう、頼れるのは互いだけ...そんなのは遥か昔だ。

だからこそだ。きっと、それでもあいつは俺を必要としてくれる。

だから、俺は断らない。





「よし、満足!バレる前に早よ行こ」





言葉と共に飛び立つ飛竜。

頬を撫でる風は、やけに澄んで何かが静かにほどける気がした。


俺が居なくても、この街はきっとここにある。

次の思い出を見に行こう。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここで一区切り。最初の章の終わりです。

最初に大体の方向性を見て貰いたくここまで高スパンで投稿してみました。

駄文にも関わらず見て下さる方がいる状況に心が躍るようです。見に来て下さった方々、ありがとうございました。


ここからは毎日投稿はストップして少し間を空けます。

2章分今7割くらいなので、そこ書き切って3章触りまで書けたらまた週1、2回で投稿しようかと思っています。

引き続き読んで下さる皆様方、またよろしくお願いいたします。

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