湘北高校バスケ部に「遊戯王」旋風!?
湘北高校バスケ部の練習中、体育館にはいつもの熱気が満ちていた。
リバウンドの音、シューズのきしむ音、そして安西先生の穏やかな声。
しかし、最近、練習後の部室で奇妙な光景が繰り広げられていた。
発端は、宮城リョータだった。
ある日、彼は部室で一枚のカードを弄んでいた。
「なんだ、それ?」と桜木花道が覗き込むと、そこには禍々しいイラストが描かれたモンスターがいた。
それが、トレーディングカードゲーム「遊戯王」との湘北バスケ部員の出会いだった。
「これ、めっちゃ面白ぇんすよ! デュエルって言って、モンスター出して戦わせるんす!」宮城は目を輝かせながら説明した。
最初は半信半疑だった面々も、宮城の熱弁と、彼が持参したスターターデッキで実際にデュエルを体験するうちに、その奥深さに魅了されていった。
各部員の「遊戯王」スタイル
特にのめり込んだのは、やはり桜木だった。
彼は持ち前の負けず嫌いを発揮し、すぐに「オレは天才デュエリストだ!」と豪語し始めた。
しかし、彼のデッキは「赤色のカードがカッコいい」という理由だけで組まれた、お世辞にも戦略的とは言えないものだった。
それでも、たまに繰り出す予期せぬカードの組み合わせが、相手を翻弄することもあった。
流川楓は、最初は全く興味を示さなかった。しかし、桜木が騒がしくデュエルしているのを横目で見ていたある日、突如として「…やってみる」と一言。
彼のデュエルスタイルは、バスケ同様にクールかつ効率的で、無駄のないプレイングで相手を追い詰めていく。そのプレイングは、まるで「眠れる獅子」のようだった。
三井寿は、最初は「こんな子供の遊び、付き合ってられるか」と一蹴していたが、一度宮城に挑まれて敗北したことで、闘志に火がついた。
彼は戦略を練るのが得意で、デッキ構築にも時間を惜しまない。時には夜遅くまでカードショップに入り浸り、レアカードを探す姿も目撃された。
赤木剛憲は、最初は部活動に影響が出ることを懸念し、厳しい目を向けていた。
しかし、ある日、宮城が持ってきた「ゴッド・オブ・アタック」という、いかにも強そうなモンスターカードを見て、「…これは、バスケの精神に通じるものがあるな」と呟いた。
それ以来、彼もこっそりデッキを組み始め、部室の隅で三井と真剣な顔でデュエルしている姿が見られるようになった。
彼のデッキは、堅実な守備と確実な攻撃を重視した、まさに「ゴリ」らしいスタイルだった。
練習とデュエルの狭間で
練習中、パスミスをしたり、シュートを外したりすると、宮城が「今のプレイングは甘いっすよ、ダンナ!」などと、遊戯王の用語を交えて指摘する場面も増えた。
安西先生も、最初は戸惑っていたが、部員たちのコミュニケーションが活発になり、集中力が増していることに気づくと、静かに見守るようになった。
「デュエルは、相手の動きを読み、戦略を立てる。それはバスケにも通じるものがありますね…ホッホッホ」と、安西先生はニコニコしながら部員たちを見つめていた。
湘北バスケ部は、バスケの練習に励みながらも、「遊戯王」という新たな共通の趣味を見つけ、さらに結束を深めていくのだった。
そして、彼らの次の目標は、バスケ全国制覇と、部内デュエル大会での優勝…かもしれない。