988 奇術師かな? 下
起きたら夕方になっていた。
……ぐっすり眠っちゃったわね……。
「お嬢様。顔を洗いますか?」
ずっと横にいたのか、ラグラナが尋ねてきた。
「ええ、お願いするわ」
すぐにお湯を沸かしてくれ、桶に入れて持って来てくれた。
グリムワールを出してお湯玉にして顔を突っ込んだ。
口の中も洗って地面にペッ。また顔を突っ込んで顔を洗った。
「はしたないですよ」
叱られながらタオルで顔を拭かれた。なんだか昔を思い出すわね。
「ふー。魔力は戻ったわね」
眠らないと魔力が回復しないってのも面倒よね。おっぱいと触れられる時間が減ってしまうわ。
「やはり体が小さいと魔力放出に耐えられないわね」
きっとおっぱいには夢と希望以外に魔力も詰まっているんじゃな? もしかしたら吸ったら魔力回復するんじゃない?
「……母乳って、栄養あるのかしら……?」
ラグラナのおっぱいに目を向けた。ゴクリ。
「わたしから出ませんし、赤ん坊じゃないんですから母乳を飲んだところで大きくなりませんよ」
「それは残念だわ」
いや、吸えるだけで幸せじゃないかしら? それだけでわたしは十年は戦える気がする!
「変な考えに辿り着いてはいけません」
ガシッと頭をつかまれ、左右に振られた。あなた、昔からわたしに厳しすぎない……?
「わかったわよ。別な方法を考えるわ」
どうやったらおっぱいを吸えるかしら?
「考えてはいけないと言っているのです」
さらに激しく振るラグラナ。や、止めてよ! 首、もげるわ!
「わかったから止めてちょうだい!」
おっぱいを吸う方法は考えないわよ。難しそうだからね。ん? 赤ちゃんプレーとかそそるわね。
ラグラナの手から逃れ、お風呂を作るとする。体もさっぱりさせたいからね。
湖が見えるところにあらよっと。露天風呂、完成っと。
「チェレミー様。食材の補給票を確認してもらえますか?」
「ええ。やっぱり食材の減りが早いかしら?」
「はい。お菓子の材料の減りが激しいですね。冷蔵庫に入れていたお菓子の消費も多いです」
うん。最初からついてきたパターンだわ。気がつかなかった。忍者か! カスが!
「ハァー。今回は補給を多くしましょうか。特に卵は多めにしてちょうだい」
「わかりました」
ジーヌ家から派遣された兵士のところに向かい、近隣の村で食材を買えないかを尋ねてみた。
「わかりました。声をかけてみます」
「お金はちゃんと払うことを伝えておいてね。なんなら代価として軽い病気を治すってのもいいわよ。重病だと無理だけどね」
「どんな病気でもでしょうか?」
わたしの話、聞いてた? これ、重病を連れて来るパターンよね?
「軽い病気ならね。血を吐く病気とかなら無理だから。ただまあ、痛みを和らげるくらいなら簡単かしらね」
ミサンガを一つ出して兵士に渡した。
「重病の者がいるならそれをつけてあげなさい。穏やかに生を全うできるから」
「ありがとうございます」
ハァー。面倒なことにならないといいのだけれど。
 




