878 カスまっしぐら 下
「商業連合会の者はいるかしら?」
「はい。部屋を与えたので決定できる者は常に一人はおります」
「呼んでちょうだい」
すぐにやって来たのはサイナバ商会のルストルだった。
ラデカルと同じ規模の商会で、主に建築を行う商会だったはず。ラデカルの陰にいたからそんなにしゃべったことはいのよね。
「いきなりごめんなさいね。倉庫をいくつか借りて欲しいの」
「畏まりました。すぐに手配します。数や場所、他にご要望はおありでしょうか?」
決定権を持っているだけに賢いようだわ。
「そうね。気温に左右されなくて石で築かれた倉庫か地下倉庫がいいわね。樽を置くから運び入れがしやすいのがいいわね。数は二から三、可能なら五つ。王城に近いところがいいかしら? なければ貴族街の近くでも構わないわ」
メモをするルストル。そう言えば、メモする商人が増えたわよね。わたしが原因かしら?
「お急ぎでしょうか?」
「そう急ぎではないわ。そうね。一月以内ならありがたいわね。でも、どうしてもってわけではないからそれ以上かかっても問題ないわ」
一月以内ならわたしがいるし、それ以上かかるなら館から運び出せばいい。人気にならなければ、だけどね。
お妃様が好んだと広まれば、我も我もと続くかもしれない。そうなったときを見越して倉庫に移しておきたいのよね。
「わかりました。そのように進めます」
「ありがとう。ちなみになのだけれど、サイナバ商会ってラルフ様とお仕事したことがあるかしら?」
「いえ、ありません。わたしどもは民相手の商売ですので」
「職人は結構抱えたりするの?」
「組合員としているのは二百人くらいでしょうか? 王都では中の下、と言ったところです」
「貴族が使いそうな台車を作れるかしら? 百ほど欲しいのよ。これは急ぎね」
デザインしたものをルストルに渡した。
「お願いできるかしら? 王城で使うかもしれないのよ」
ミシエリル様が欲しそうに見ていた。きっと求められるでしょう。
「畏まりました。他の組合にも声をかけてみます」
「ありがとう。サイナバ商会の名を出してもいいかしら? もし訊かれたら答えたいから」
「はい、問題ありません。是非ともサイナバ商会をよろしくお願い致します」
それはありがたい。仕事をサイナバ商会に回せるわ。
「また来るわ。そのときに進捗状況を聞かせてちょうだい。急ぎのときはルージュンに声をかけなさい。なるべく早く来るから」
チョコレートをコーティングしたバームクーヘンを空中に放り投げると、カスがまっしぐらに飛びついた。
この方、プライドとかないのかしら? あ、ないですね。それは失礼しました。




