853 食後 上
「……疲れました……」
ルーセル様が息をつき、ソファーに座り込んでしまった。
まあ、無理もない。一国の妃を相手にしなければならないのだから。自国で公爵夫人を一人で相手しろってより苛酷でしょうよ。
「よくやりました。初めてであれだけできれば充分でしょう。ただ、わたしの名前を出しすぎですね。あれではルーセル様の思想にわたしが深く入り込んでいることをお妃様に知られました」
「す、すみません!」
「謝らなくてもいいですよ。ルーセル様の側にいれば嫌でもわたしの影響を帯びているとわかりますからね。でも、他ではわたしがこうしたから、わたしがこうだったとしゃべるのは控えたほうがいいでしょう。次はルーセル様の言葉でしゃべってください。わたしから影響されていても自分の口から出た言葉はルーセル様の言葉なんですから」
わたしの影響を受けてないと信じる者はいない。でも、それを口にするかしないかでルーセル様の評価は違ってくるものだ。
「まあ、失敗ではなく注意点なのでそう気にする必要はありませんよ」
「……はい……」
「反省はあと。次はお酒が入るかもしれません。体調は如何ですか?」
ルーセル様は見た目どおりの年齢ではない。ちゃんと成人となっている。
……わたしは生まれたときからおっぱい星人やけどね……。
「はい、大丈夫です。胃の中も消化されていると思います」
それなら大丈夫そうね。
「お酒の耐性を上げておきましょう」
お妃様、結構飲むからね。それに合わせて飲んでも大丈夫なように付与を施しておきましょう。
「そう長いこと談話は続かないでしょう。がんばってください」
「はい。最後まで気は抜きません」
「では、着替えを」
貴婦人の面倒なところは状況によって着替えなくちゃいけないところよね。まあ、着替えがトイレタイムみたいなところがあるから一概に悪いとも言えないのよね。
夕食の席より派手ではない服に着替える。
三十分ほど過ぎたら侍女がやって来た。
「席が用意できました」
「ありがとう。お願いするわ」
侍女に案内され、ガラス張りのテラスみたいなところにやって来た。
お妃様が使うところとは言え、これまた豪奢だこと。畳一枚分のガラスまであるわ。どうやって作っているんだか。割ったら五、六人の首が切り離されそうだわ。
お付きの方々はすでに揃っており、お妃様はまだのようだ。これは、お付きの方々がルーセル様と話せるために作られたのかな?
「ルーセル様。なにかお飲みになられますか? 我が領で作られた葡萄酒がお勧めです」
お付きの方々の中で上位にいるマルンセル公爵夫人がこの場を仕切るようだ。
「それは興味深いですね。いただきたいですわ」
マルンセル公爵夫人自ら葡萄酒を注ぎ、ルーセル様に渡した




