736 その先へ
やはり前世の知識と経験があるってアドバンテージあるものなのね。
ルゼット様はその先のことに考えが至らなかった。その先が大事だというのにね。
「悪巧みか?」
寝室で物思いに耽っていたらコノメノウ様が入って来た。なんです?
「思考に思考を重ねた結果、ここに酒があると判断した」
うん。もっと崇高な思考に頭を使いなさいよ。頭、酒でいっぱいか。
ベッドの下にある引き出しを引いた。ちょっと!
「新しく寝台を新調したときに気づくべきだった。ククノヒメ──ミコノトに拐われたとき、寝台にいろいろ隠しておったことに」
名探偵さん。答え合わせは他でやってくださいません? わたし、これから就寝なんですけど。
「ほら、あった。時間的にハクカ梅か?」
ベッドに隠していた白夏梅で作ったお酒の小樽を取り出した。
「まだ寝かせているところなんですけど」
「そなたの力があれば必要あるまい。わたしに飲まれまいと隠していたんだろうが」
そうだよ。せっかく隠していたのに。どんな執念だよ。
「どうやって開けるんだ?」
「それは止めてください。飲むならこちらを飲んでください」
バレてしまったのなら仕方がない。諦めて棚にある蓋のついた壺をコノメノウ様に渡した。
「リンゴのブランデーにハクカ梅を漬けたものです」
「ほぉう。そんな方法もあるのか」
「結果に辿り着くのは一つではないということです」
「そなたが求める答えも一つではあるまい」
「ある意味、一つでありたくさんでもあります。未来は決まっていせんからね」
「たまにそなたがどこを見ているかわからぬときがありよ」
「あら、わかってくれるときかある口振りですね?」
「悪巧みしているときはよくわかるよ。無邪気に笑っているからな。わからないのは遠くを見ているときだ。そなたしか見えないものを見ているからな」
ただ、遠くにあるおっぱいを見ているだけですけどね。あれは絶対にいいおっぱいだ、ってね。
……まあ、そんなこと考えているなんて同じおっぱい星人だけでしょうね……。
「ここは、居心地がよいですか?」
あと、それはゴクゴク飲むものではありませんよ。ちゃんと味わって飲んでくださいな。
「とてもいいな。うるさい巫女もおらんし、どこにも自由に行ける。なにより、美味い酒が尽きることがない。そなたは軽々しく死ぬなよ。まだまだ美味い酒を作ってもらわんといかんのだからな」
「わたしはお酒を作るだけの存在ですか」
「わたしにとって酒は生きる目的だ。楽しみだ。酒のない世など生きている価値もない。そなたをそれと同等に扱っているまでだ」
お酒と同等ってのもなんだがな~って気持ちになるわ……ん?
「……わたし、コノメノウ様に気に入られてます……?」
同等にって、そういうこと?
「それ以上でもなければそれ以下でもない、ということだ」
「コノメノウ様、ツンデレ──痛っ!」
光の速さでデコピンされてしまった。
「ツンデレがなんなのか知らんが、なんか物凄く不快だ。二度と口にするな」
プンプン怒って寝室を出て行ってしまった。
………………。
…………。
……。
まさかのツンデレキャラだったわ。




