721 平和的に 下
「では、また報告に参りますね」
「次はもっと穏やかな報告をしてくれ。こちらの胃が痛くて堪らんわ」
それは約束できないのでにっこり笑ってみせた。
「ウソでも安心させることを言わんか」
「わたしは、家族に対してウソはつかないと決めていますので」
誘導したりするのはご愛嬌です。
「タルル様。館にお願いします」
ずっと黙っていたタルル様。変なところで空気が読める菓子カスだよ。
「うむ」
短く返事をして館に転移してくれた。
わたしの部屋に転移できたらすぐに呼び鈴を鳴らしてマクライを呼んだ。
「ロッカルのことを叔父様たちに話して来たわ。こちらでも用意を進めておいてちょうだい」
「畏まりました。今後の予定をお訊きしてもよろしいでしょうか?」
「いいわよ。マクライがいないと話が進まないからね」
貴族は補佐をしてくれる者がいないとなにもできない生き物。それを理解できないバカは早々に破綻するでしょうよ。
紙に書いて大まかなスケジュールをマクライに聞かせた。
「五年に及ぶ計画ですか」
「ロッカルがまだ十歳だからね。せめて十五歳にならないと話を進めようがないわ」
婚約は何歳からでも可能だけど、結婚となると十五歳になっていないとどうにもならない。貴族は学園を出て一人前とされる風潮があり、出てないと肩身が狭いことがあったりする。
わたしが学園に入る前に事を起こした理由でもあるわ。学園に行ってないのも婚約されない理由にしたかったからね。
「ロッカル様を学園には入れないので?」
「それはロッカルが望めば行かせるわ。そうでないのならゴズメ王国留学させて箔をつけさせるわ」
外国に留学なんて気軽にできることではない。やっている貴族も数えられるほどでしょう。外に目を向けている貴族はいるでしょうからね。
「そうなるとお嬢様のお歳が」
「わたしは子供を産むつもりはないわ。お兄様かナジェスの子を養子にするなり、ロッカルが他の娘が産んだ子を養子にしても構わないわ。血は残り家は受け継がれるからね」
貴族は血より家を残すために生涯を懸ける生き物。もうDNAに刻まれているんじゃないかしらね? あ、テキトーです。
「お嬢様の子を抱いてみたかったです」
「わたしは異物みたいなものよ。たまたまカルディム家に生まれただけにすぎないわ。わたしのような血は残してはいけないのよ。仮に残したとしてわたしの存在に子供が苦しむわ。決してわたしのように育つことはないのだからね」
ただ、子供を不幸にするだけだと思う。
「お兄様とナジェスがいればカルディム家は安泰。二人の子を抱いてあげなさい」
椅子から立ち上がり、マクライの手をつかんだ。
「わたしがあなたの孫やひ孫を抱いてあげる。健やかに育つようにと願うわ」
それがマクライへの恩返しになると信じてね。




