312 また会う日まで 下
余韻を胸に馬車は進み、休憩もしないで領都に着いた。
サマーヒルのことは領都に伝わってないようで、人々は普通に往来しており、なんだなんだと見るばかり。誰かに手を振られることもなく城の門を潜った。
ただ、城の者はわたしたちの帰りを伝えられているようで、兵士たちが左右に並んでおり、馬車を降りたらマルビオ家の方々が勢揃いだった。
もちろん、コノメノウ様がいるからであって、わたしたちを迎えてくれるわけではない。なので、メイベルとマリアラ様は一族の列に並び、わたしはコノメノウ様が乗る馬車のドアを開けた。
むわっとお酒の臭いが外に溢れ出た。この守護聖獣様は底が抜けたバケツなんだから。
「悪酔いしないのですか?」
「揺れもせん馬車で酔うほうがどうかしているわ」
「食料補給のために城に三日ほど滞在します。大人しくしててくださいね」
「大人しくできないそなたに言われたくないわ。酒は?」
「さすがにもうありませんよ。なので、領都にあるワインかエールで我慢してください」
付与魔法は打出の小槌ではない。魔力があっても限界はあるのよ。
「なら、いらん。そなたが創るまで酒を抜くとするよ。少々飲みすぎたしな」
あれが少々ですか。大いに肝臓を壊して欲しいものだわ。せっかくもらっている魔力の半分がお酒に変わっているんだもの。
「ルゼット様。もうしばらくお世話になります」
「ああ。遠慮せず、気の済むまでいてくれて構わない。コノメノウ様。チェレミー嬢からいただいた酒がまだ残っております。部屋に用意しておりますのでご存分にお飲みください」
あ、城にもお酒を渡したの忘れていたわ。
「うむ。そうか。気が利くではないか。部屋に案内せい」
「お酒を抜く話は……」
なんてわたしの突っ込みを無視してずんずんと城の中に逃げていってしまった。いや、侍女を置いていかないの。
「ラグラナ。コノメノウ様の世話をお願いね」
「畏まりました」
城の侍女にコノメノウ様を世話させるのは申し訳ない。ラグラナにさせておきましょう。
「ルゼット様。ありがとうございました。もう手持ちが尽きていましたので」
「いや、なにからなにまでチェレミー嬢に押しつけられんからな。食料は集めてある。好きなだけ持っていってくれて構わない。今日はなにもせずゆっくり休むといい。サマーヒルでは休む暇などなかったのだからな」
「ありがとうございます。正直、疲れが溜まっていたので助かります」
「うむ。マリーヌ。チェレミー嬢を部屋に案内してくれ。マリアラとメイベルも休んでいいぞ。明日、話を聞かせてくれ」
ルゼット様にお辞儀し、マリーヌに案内されて部屋に向かった。




