1170 内情 上
アルバン様の復活が思いの外早かった。
お酒で時間を稼いだものの、国の要職にあるだけあってお酒に溺れてくれなかった。あと四日は欲しかったのに。残念だわ。
まあ、それでも強力な生け贄──協力者を確保できた。これでわたしの仕事も減るってものだわ。ククッ。
「コルエン様をこちらにいただけませんか?」
単刀直入にアルバン様に伝えた。
「……そうか……」
あら? 驚きナッシング? もしかして想定してたの?
「はい。是非、聖女教会の教司として、引き抜きたいと考えております。アルバン様としても王城から誰かを送り込みたいと思っているのだから願ったり叶ったりではありません?」
そうは言ってないけど、そうでなければ宰相の懐刀がやって来ることはないでしょうよ。
「なにか要望があるならお聞きしますよ」
こちらからお願いする立場。要望を聞き入れるのはやぶさかではないわ。
「いや、こちらからはない。コルエンが望んだのならな」
やっぱりわたしに取り込まれることを想定していたようだ。さすが宰相の懐刀って感じね。
「ありがとうございます。王城の内情を知っている方がいるならジーヌ家も安心でしょう。意志疎通ができて」
最悪なのは王城と敵対すること。王城の内情を察するくことができるなら擦り合わせもできるってことだ。国から予算をもらう側でもあるからね。
「アルバン様に困り事があれば遠慮なく相談に乗らせてくださいませ。政治的問題でも。個人的問題でも。このお礼はさせていただきます」
腰を下げて頭を垂れた。
「そうならないよう心がけるとしよう。高くつきそうだからな」
政治の中心にいる方はやはり一味も二味も違う。そう簡単にこちらの弱味につけ込んできたりはしないわ。どこぞの国のように上から言ったりしないわ。
「王城にアルバン様がいる限り、安泰のようですね」
その後のことは考えているのかしら? アルバン様の年齢ならお孫さんが結婚していても不思議ではないと思うのだけれど……。
「そうであればよいのだがな」
「問題がない組織などありませんからね。苦労は絶えないでしょうよ」
停滞気味とは言え、なんの問題も起きないってこともない。大きい問題より小さな問題が絶え間なく起こるのでしょうよ。
「わたしでよいのならいつでもご相談に乗らせていただきますわ。コルエン様を引き抜かしてもらうのですから」
貸し借りにしておけば無茶なことも言ってこないでしょう。
「そのときが来たら頼むとしよう」
「期待せず待っておりますわ」
なにもないのが一番でもあるしね。期待して待っているほうが失礼だわ。




