個人の犠牲なしに集団は成り立たない①
「バスケは運動量が多いですから、息が苦しくなると思います。マスクを外してもいいですからね!」
佐藤先生のそんな忠告もあり、マスクを外してから再度集まる。
どうやらジャンプボールから始めるようで、先生がコートの真ん中でボールを真上に投げていた。
その近くにはオレンジ色のゼッケンを着た一年男子が立っている。彼がジャンプボールを跳ぶらしい。
緑から人を出すなら同じ学年、性別である自分か麓山がいいだろう。
民主的なお話し合いが必要だ。
「どっちが行く?」
「……俺はいいかなあ。ボールは頼んだ」
麓山が譲ってくれたので、代わりに自分がコート中央へと向かう。
ジャンプボールは跳んでボールを弾くだけに見えて、なかなか奥が深い。
どこに落とすかでチームに流れがもたらされることもあり、馬鹿にできないのだ。
これがガチガチの公式戦だった場合、両者とも速攻を警戒して、それぞれ自身がディフェンスする相手についている頃だろう。
「では……始め!」
佐藤先生の大きなかけ声とともにボールは放たれた。
上にまっすぐ飛んでいるが、声量のわりにその高さは低い。相手との身長差はあるものの、これは取れる。
すかさず跳びつき、バネの差でボールを捉えた。自分の垂直跳び80センチは伊達じゃない。
チラッとだが、前に走って行く篠崎先輩が見えた。
「麓山、前!」
とりあえず目が合った麓山にボールを弾く。
麓山にはあの短い言葉で意味が伝わったようで、キャッチしてすぐにボールを前に投げた。
「先輩!」
ゴール近くまで走っていた篠崎先輩がボールを受け取り、シュートに移る。
まだオレンジ側は誰も間に合っていない。
先輩の手から放たれたボールはあっさりとネットをくぐり、2対0。
先輩が駆け寄ってくる。
「二人ともいい判断だったよ。やっぱ経験者がいると違うね」
「自分より先輩ですよ。どうして前に走ったんですか?」
普通、初見であんなことはしない。
「うーん。なんか行けそうだったから行ったとしか言えないなあ……」
先輩の勘は恐ろしいな。運動神経がいいとそこまで分かるものか。
先輩一人でワンサイドゲームができそうだ。
篠崎先輩は攻めに動いてくれるようなので、自分はしばらく様子を見よう。




