大抵のことは見知った顔の大人が決めている③
ぼちぼち人が集まり始めた頃に、佐藤先生がゼッケンや出席簿を持って現れた。
毎回絶妙なタイミングで来るのだから不思議である。教師の勘ってやつだろうか。
すでに先生の辺りがぽわぽわし始めているが、それは気にしたら負けだ。
最後の一人がアリーナに着く。どうやら十人揃っているらしい。
他の講義だったら人数が半分くらいになってる時期に、全員参加とは出席率良すぎだ。
やはり佐藤先生(神)のお蔭なのか?
集合がかかると、ダムダムしていた自分と麓山はボールを籠に戻し、先生のいる方に向かった。
佐藤先生は全員がいることを確認すると、自信満々な様子で授業を始めた。
「では、今日はバスケをやっていきたいと思います!」
この先に不安を覚えるが、これは序盤。まだまだ挽回可能だ。
「試合形式でいくので、皆さん、ゼッケンを着てください。オレンジか緑のゼッケンを配ります」
今日の先生は普通過ぎるな。明日は槍でも降るかもしれない。
そう言われて待っていると、先生は突然思い出した様子で少し落ち着きなく全体に問いかけた。
「バスケ経験者はいますかー?」
おずおずと手を挙げると、自分以外にはいなかったようだ。
先生は控えめな主張を見つけると
「なるほど、経験者ですかー……。では、それも考慮して配ります」
と言い、近くにいた学生からゼッケンを手渡していった。
「なんか経験者で不味かったかね?」
苦笑いで麓山に聞けば
「先生、忘れっぽいから……」
と同じような表情が返ってきた。
初回の講義に書いた紙では、経験のあるスポーツ欄にバッチリと『バスケ』と書いたはずだ。
読めない字で書いたとかそんなこともない。
佐藤先生も受け持ちの学生が多いのだ。神が自分を忘れていたわけじゃない……ないったらない。




