↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/17

大抵のことは見知った顔の大人が決めている②






 持ってきた荷物を隅に置き、自分もボールを手に取る。


 先生が来るのはいつも遅いので、多少練習していても問題はない。


 久しぶりにボールに触るとワクワクした。


 自分にも戦闘民族的な面があったことに驚くが、ボールを持つとダムダムしたくなるぐらい自然なことだ。仕方ない。


 シュートのタッチを確かめていると、どこか疲れた様子のやつがアリーナに顔を出した。


 そいつは麓山(はやま)という。


 大学に進学して以降の友人であり、それ以上に同じ道を歩む同志と互いを認めた仲だ。


 なかなか珍しい名前で、山麓(さんろく)の字をひっくり返してハヤマと読むらしい。


 出会った頃はどうにもピンとこず、何度も名前を確認していた。


 軽く手を挙げ挨拶すると、ようやく気付いたらしい。


 よく考えれば、あの疲れは自分の密かな実験のせいか? 


 そうではないと願いたいが、登校してくる時間は同じなので否定できない。どこかですれ違った疑惑が残る。


 今日はなるべく労(ねぎら)っておこう。


 麓山が持ってきたのはペットボトルだけで、ずいぶん身軽だった。服装も普段着に近い。


 入り口の近くに飲み物を置くと、こちらに歩いて来る。


 オタク同士、話をするならとりあえずこの話題だろう。


 「最近、アニメ観てる?」


 きっとこの答えが、互いの近況を把握するのに一番手っ取り早い。


 「いや全然。一人暮らしはやること多くて、ほとんど手出せてない」


 「アニメを見れぬとは、憧(あこが)れの一人暮らしはやはり大変なのか……。一人暮らしは当分延期だな」


 「まあ、そう言うなって一人暮らしも楽しいからさ。そう言えば今期はどんな感じ?」


 「まだ撮りためてる段階だからなんとも言えんが、三年間待ちに待った二期がポシャったからな。怖くて次に行けん」


 観る前の期待値が高かった分、自分でハードルを上げすぎたのだろう。


 そのクオリティーの低さに、もはや怒りは湧(わ)かず、ただ悲しかった。


 それに対して麓山は残念そうに


 「あー、あれか。俺は悪くないと思ったけど、やっぱり絵が気になった?」


とボールを吟味しながら言う。


 「……そんな感じ。原作で読んだときは良かった。麓山がイケるって言うならイケそうな気もする。……まあ、作画は帰ってこないだろうし、三期にワンチャンってところ」


 いつの間にか麓山もボールを手にしていた。


 何人もボールの誘惑に抗えないらしく、麓山も例外ではなかったようだ。


 その後、場所を移しても談議(だんぎ)は続き、互いにあれこれ話す。


 知っていることから知らないことまで、その両方で大いに盛り上がった。これだからヲタクは辞められない。


 その間、麓山に頼まれてシュートをレクシャーしたりと案外(あんがい)楽しい忙しさだった。 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。