大抵のことは見知った顔の大人が決めている②
持ってきた荷物を隅に置き、自分もボールを手に取る。
先生が来るのはいつも遅いので、多少練習していても問題はない。
久しぶりにボールに触るとワクワクした。
自分にも戦闘民族的な面があったことに驚くが、ボールを持つとダムダムしたくなるぐらい自然なことだ。仕方ない。
シュートのタッチを確かめていると、どこか疲れた様子のやつがアリーナに顔を出した。
そいつは麓山という。
大学に進学して以降の友人であり、それ以上に同じ道を歩む同志と互いを認めた仲だ。
なかなか珍しい名前で、山麓の字をひっくり返してハヤマと読むらしい。
出会った頃はどうにもピンとこず、何度も名前を確認していた。
軽く手を挙げ挨拶すると、ようやく気付いたらしい。
よく考えれば、あの疲れは自分の密かな実験のせいか?
そうではないと願いたいが、登校してくる時間は同じなので否定できない。どこかですれ違った疑惑が残る。
今日はなるべく労っておこう。
麓山が持ってきたのはペットボトルだけで、ずいぶん身軽だった。服装も普段着に近い。
入り口の近くに飲み物を置くと、こちらに歩いて来る。
オタク同士、話をするならとりあえずこの話題だろう。
「最近、アニメ観てる?」
きっとこの答えが、互いの近況を把握するのに一番手っ取り早い。
「いや全然。一人暮らしはやること多くて、ほとんど手出せてない」
「アニメを見れぬとは、憧れの一人暮らしはやはり大変なのか……。一人暮らしは当分延期だな」
「まあ、そう言うなって一人暮らしも楽しいからさ。そう言えば今期はどんな感じ?」
「まだ撮りためてる段階だからなんとも言えんが、三年間待ちに待った二期がポシャったからな。怖くて次に行けん」
観る前の期待値が高かった分、自分でハードルを上げすぎたのだろう。
そのクオリティーの低さに、もはや怒りは湧かず、ただ悲しかった。
それに対して麓山は残念そうに
「あー、あれか。俺は悪くないと思ったけど、やっぱり絵が気になった?」
とボールを吟味しながら言う。
「……そんな感じ。原作で読んだときは良かった。麓山がイケるって言うならイケそうな気もする。……まあ、作画は帰ってこないだろうし、三期にワンチャンってところ」
いつの間にか麓山もボールを手にしていた。
何人もボールの誘惑に抗えないらしく、麓山も例外ではなかったようだ。
その後、場所を移しても談議は続き、互いにあれこれ話す。
知っていることから知らないことまで、その両方で大いに盛り上がった。これだからヲタクは辞められない。
その間、麓山に頼まれてシュートをレクシャーしたりと案外楽しい忙しさだった。




