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裏八十七話  魔王ペダルと囚人ドライブ

 ――シア視点。

 アイシャがレイアさんの工房へと向かったこの日、私はジリーと共にフューラの工房へ。

 「来たぞー」「どうぞー」

 返事があったので入ろうとしたら、ジリーに笑われた。

 「あはは、シアも声かけるようになってんだね」

 「カナタがそうしていたからな。それに何も言わずに扉を開けるのは何かと危険であろう?」

 「んまーそうだね」

 という事で中へ。

 入ると既に私が注文していた品々が並んでいた。

 ジリーのスクーターは……白い布で覆われている。見えないように目隠しをしているのだな。しかし……妙に大きい。

 「あたしのはあれかい?」

 「そうですけど、お楽しみはまだ先ですよ」

 「自信満々だねー。っしゃ、楽しみにしとく!」


 フューラは最初に机の上にあった銃を手に取った。

 「まずはシアさん用の銃ですね。カナタさんのものと基本は変わりませんが、先ほどの健康診断の結果から、若干の変更を加えてあります」

 「変更とは?」

 「カナタさんの銃はカナタさんに一番合うように作っていますが、シアさんに合うとは限りませんよね?」

 「確かに」

 「それにシアさんは背が高くても女性ですから」「胸もないけどなー」「おいっ!」

 いきなりジリーが突っ込んできたので驚いたし、胸がないのは私が一番気にしている部分なのだが!

 「あはは。えーと、続けますね。ともかく女性でも扱えるように改良を施してあります。試射してみてください」

 という事で銃を渡された。持った感触としては、以前のものとそう変わらない。見た目も同一だ。

 「分かった。的はあれでいいのだな?」

 「はい」

 壁に的を描いた紙の張ってある鉄板がかけてある。

 ……カナタの経験も入っているので外すという事はないと思うのだが、少々不安だ。


 レーザーポインタが付いているので赤い光点で狙いがしっかりと定められるのは助かる。

 我ながら過剰と思えるほどしっかりと狙い、慎重に引き金を引いた。

 タタタッ! といい感じの銃声。……あれ?

 「フューラ、銃声を変えたのか?」

 「はい。正しくは変わっちゃったんですけど。実は事前にリサさんにアドバイスを頂いて、より属性魔法が強力に発揮するようにしてあります。その関係で音が変わっちゃったんですね。……で、結果はこれですか」

 あっさりと言ってのけてくれたが、結構な負担をかけてしまったのではないか? と聞く間もなく次の話へ。

 「きっちり三発ともヒットしていますね。カナタさんと比べると若干ブレてはいますけど、これくらいならば充分に許容範囲内ですし、使っていけば馴染んでブレもより小さくなるでしょう」

 「あたしから見てもいいところなんじゃねーのかな」

 フューラからだけの評価ではどうかと思ったが、ジリーからもそう言われたのならば心強い。

 「……そうか。私としても直すようなところは見受けられなかった」

 「ならば銃は完成ですね」

 「ああ。……代わりにこちらはフューラが預かっておいてくれ」

 「はい。確かにお預かりしました」

 カナタの銃はカナタのものだ。なので今はフューラに預けた。これが一番安心出来るからな。


 「次に……先にシアさんの分を終わらせますか。スクーターの運転方法は?」

 「大丈夫、カナタの運転を見ていたので覚えている。自分で言うのも何だが、問題は乗れるかどうかだけだ」

 あの後も自転車には何度か乗っており、足を着けずに工房一周は出来るようになった。

 「そうですか。一応跨ってエンジンを掛けてみてくれますか? 微調整の必要もありますので」

 という事で跨り、えー……ブレーキを握り締めるのだったか? と思ったら違った。あれ?

 「それは反重力エンジンの操作です。赤いボタンを押してください」

 「あっ、そうだそうだ」

 エンジン音は以前と変わらず。その後微調整も完了し、スクーターは問題なく直った。

 「本当に大丈夫なんですか? 全損させたらさすがに僕でも怒りますよ?」

 「……私の自信は空前の灯火だ」

 「そのまま炎上だけはしないように」

 「はい……」

 フューラが怒ると私の命に関わる。絶対に事故は回避せねば。



 「お待たせしました。ジリーさんの分に行きましょう」

 「まってましたー!」

 ははは、本当に嬉しそうだ。

 フューラは白い布を……慎重にはがした。そういえばスクーターの時には盛大に引っ掛けて壊したのだったな。

 「うおおおおおおお!!」

 そして現れたスクー……いや、大きいのでバイクだな。それを見てジリーが大興奮している。

 「作ったのは僕ですけど、実質的にはモーリスさんからのプレゼントですよね。お気に召し」「ました! ましたました!! うっひょおおおおい!!」

 バイクのカウル部分に顔を近づけその体勢のまま跳ねているジリー。そのあまりのリアクションに私もフューラも大笑い!


 ジリーに用意されたバイクの種類は……何と言えばいいのだろうか?

 カナタのと東京時代の知識とを総動員して例えるのならば、サングラスに黒い革ジャンを着たオジサンが乗り回すような、大型のバイクだ。もちろんスクーターと同じく地上から十センチほど浮いているホバイクである。

 外装は赤く、所々に鏡面加工がしてあり、かなり派手。マフラーは左に二本あり、これまた鏡のようにピカピカに磨かれている。

 そして右側にサイドカーが付いているのだが、その造り自体は一般的なものである。……いや、かなり頑強に作ってあるな。そしてモーリス用ではあるが大人が乗っても余裕があるサイズだ。恐らくはモーリスが成長し大人になってからでも使えるようにとの配慮だろう。

 「僕の知ってる交通ルールが右側通行なのでサイドカーも右に付けました。一応取ってもそのまま走行出来ますし、バランスは自動で調整される仕組みにしてあります」

 相変わらず無駄に技術が詰まっている。


 「そうだ、エンジン掛けますね」

 「おおー! あっ、あたしがやってみていい? 動かしはしないからさ」

 「……ええ。それじゃあキーをそこに差し込んで、軽く捻ってください」

 「はぁーい」

 こちらは普通にキーでのスタートなのだな。

 「んしょっと」

 ジリーはバイクに跨りキーを捻る。すると至極あっさりとエンジンが始動した。そのエンジン音は見事にドドドドという重低音の塊。

 「おおーっ! あはははは! あたしこういう音大好き!!」

 「それは良かった。ジリーさんにも似合っていますし、この選択は大正解ですね」

 「だーいせーいかーい!」

 童心に戻って大はしゃぎのジリー。……いや、ジリーの場合はむしろ今、童心を手に入れているのか。



 ジリーの興奮が一段落したところで次の話へ。

 「シアさんは何度か自転車で練習していますが、ジリーさんにも講習を受けてもらいます。まずはシアさんと同じく自転車で工房を周回し、腕試しです」

 「いよぉし、燃えてきたー!」

 さて運動神経抜群のジリーはどのようなパフォーマンスを見せてくれるのであろうか。

 外に出て私の時と同じように自転車に跨るジリー。

 「はい。シアさんもですよ」

 「え? ……二台目!? いつの間に……」

 ふらふらするジリーを突付いてやろうかと思っていたら、まさか私も一緒にフューラに突付かれる羽目になるとは。

 自転車は私もジリーも、通称ママチャリである。見た目はほぼ同じで、違いと言えば色とサビの有無程度だろうか。

 ――カナタと世界を渡る時、私は前カゴに入れられて、旅立ちに丁度いい場所を探した。もう鳥の姿に戻る事はないだろうが、もしもカナタが戻ってきて、私がまた鳥の姿になったのならば、またカゴに入ってカナタの運転で散歩でもしたいものだ。


 「先にどちらが一周するか、勝負と行きましょうか」

 二人でのんびりサイクリングかと思ったら、フューラが煽ってきた。

 「……ふっ、私は既に一度も足を着かずに一周出来るようになっている。したがってこの勝負、私が勝つのは決定事項だ!」

 「へえぇー……ならその鼻っ柱、ポッキリ折ってやらねーとな!」

 この勝負、負ける訳には行かないっ!

 「コースは工房一周。僕も後ろから追いますけど、もしもの場合には威嚇射撃をしますので、その時は止まってくださいね。では行きますよ」

 お互い前傾姿勢になり、いつでも風になる準備は出来た!



 ――自転車対決開始。ここからはフューラ視点でお送りいたします。

 はい、いたされます。

 僕は普段の服装の状態で飛行装置を取り出し、追う体勢に。以前も少し話に出しましたが、現在の僕には規制や制限がないので、今まで出来なかったこのような事が出来るようになっているんですね。……まあ、お二人ともそれどころではないようですが。

 ではスタートの合図。

 「レディー……ゴー!」

 「んがああっ!」「うるあぁあ!」

 意外にもシアさんが好スタートを切りジリーさんに先行。一方ジリーさんは初めての自転車のはずなのに安定して漕いでいます。さすがは運動神経抜群……という訳でもないような? なにか妙に小慣れている感じがあります。

 「ジリーさん、もしかして自転車乗った事ありますか?」

 「あ!? あるけど?」

 やっぱり。ジリーさんの時代ならば自転車があってもおかしくありませんからね。


 まずは第一コーナー。直角の左カーブです。

 速度を落とさずシアさんがアウト・イン・アウトで綺麗に抜け、ジリーさんもそれを追い問題なく抜けました。

 ……あ、ジリーさんのこれは余裕を見せているんですね。シアさんに花を持たせているのか、最後でぶっちぎるつもりなのか。

 第二コーナーは右左と曲がるクランク。最初シアさんはここで止まりましたが……明らかに遅くなりました。肝の小さい魔王様ですね。

 一方ジリーさんは綺麗に抜け、あっさりとシアさんをパス。

 「ああっ!」「へっへーん」

 さてこれでシアさんも本気になった様子で、猛追を開始。

 しかし工房の外周を周るだけなのでコーナーはあと三つ、全て左直角コーナーです。

 ……どう考えてもジリーさんが勝ちますよね、これ。


 第三コーナーは両者綺麗に曲がり、バックストレートへ。

 「ヘヴィロード!」

 おっと、シアさんが魔法を使いましたね。途端にジリーさんの動きが悪くなり、速度も落ちました。

 「あっ……んずーぅーるぅーいぃーぞぉーっ!!」

 「はっはっはーっ、私は魔王なのだー!」

 まあ……魔法禁止とは言っていませんでしたからね。それに魔王らしい部分をようやく見られましたから。


 どうやらシアさんか掛けた魔法は、重量を増やして相手の動きを遅くする効果のようです。なので恐らくはペダルを重くされたのでしょう。

 僕と並走状態になると、ジリーさんが怒鳴ってきました。

 「フューラ! 魔法禁止じゃねーのかよ!」

 「ルールは工房一周だけですよ。まあ周囲への被害が出そうならば止めますけど」

 「んだおらあああっ!!」

 途端にジリーさんが前傾姿勢を取り、一気に速度を上げました。さすがと言いますか、人間離れしていますね。


 バックストレートが終わり左カーブ。

 「魔王に手加減などないのだー! はっはっはーっ!」

 「うっせ! このアマ!」

 おやおや。

 二人ともカーブを綺麗に抜け「アースウェイブ!」っとシアさんが大人気なく追加で魔法を使いました。地面がうねり始めましたね。そこまで極端な起伏ではないですが、これはこれですごく邪魔そう。

 「はーっはっはっはーっ!」

 「……よし、キレた!」

 そう一言、ジリーさんが自転車ごと軽く跳ね、ドスン! と強く着地。

 「なっ!? それアリなのか!?」

 シアさんが驚いていますね。そしてジリーさんが急加速! おや、そういえば地面のうねりがなくなっています。もしや?


 そのまま最終コーナーを曲がり、あとはホームストレート勝負。

 「負けたくなあぁーい!」

 「うるぉあああああっ!!」

 シアさんもジリーさんも前傾姿勢の立ち漕ぎで全速力。しかし先ほどまでの差からシアさんが有利か?

 「ディスグラヴィド!」「見切ってんだよ!」

 シアさんのこの魔法は、確か空間に作用して重力を増やす魔法だったはず。偽魔王戦で使用していましたね。

 しかし明らかにそれっぽい光が現れるので、ジリーさんはあっさりとかわしました。そしてシアさんは魔法に気を取られて減速。これぞ策士策におぼれると。

 「まずいいいぃっ!」

 「んだるぁあああっ!!」

 並びました!

 ゴールまであと五十メートル。僕は先回りします。……え? 僕が一番楽しんでいるって? 正解です。


 「いいぃぃやあぁぁぁ」

 「んがあああああっ!!」

 お互い一歩も譲らず……今ゴール!


 「はぁ……はぁ……もうだめ……魔王はもう動けない……」

 「ったく……体力ねー魔王だな……はぁ……」

 お互い息が上がっていますね。シアさんはもう地面に寝そべっていますよ。

 「気が済みましたか?」

 「どちらが勝った?」「どっちが勝った?」

 お二人とも同じ事を言いますか。

 「僅差で……僕の勝利です」

 「おいっ!」「おいっ!」

 「あはは!」

 ここで優劣を付けて喧嘩になったら困りますから。……ありえないですけど。

 あ、ちなみにお二人には伝えませんが、実際にはジリーさんの勝ちです。あれだけ妨害をしておいて負ける魔王様……むしろ魔王だからこそ負けたのでしょうか? 存在自体が負けフラグですね。はい、メタ発言でした。



 ――一息ついて。

 一旦工房内に戻ってきました。

 「いやーまさか魔王の癖にあんなみみっちい妨害してくるとはねー」

 「みみっ……否定出来ない……」

 「確かにあの妨害は大人気ありませんでしたね」

 「うぅ……」

 シアさんは、知れば知るほど魔王とは程遠い人物であると明らかになっていきますね。

 「しかしあれでも一応は手加減をしたのだぞ? ……というか、私から言わせてもらえば、魔法を気合で打ち破って見せたジリーこそどうかしているぞ?」

 「あはは。いやーこの前レイアに協力してもらってあたしの特殊能力を解明しただろ? それで武器や防具を壊せるなら、魔法も壊せるんじゃねーかなって。まさか上手く行くとは思わなかったけどね」


 するとシアさんは顎に手を当て思案。

 「武器防具だけではなく魔法までか……もしかしたら……いや、やめておこう」

 「何独り言を言ってるんですか? 僕たちにも聞かせてもらうほうが解決の糸口が見つかる確率は上がりますよ?」

 「いや、これはそういう種類の話ではないのだ。……が、そうだな。魔法を打ち破れるのならば、呪いも打ち破れるのではないかと思ったのだ」

 「あ、モーリスのか!」

 なるほど。確かにジリーさんの破壊能力ならば呪いも壊す事が出来るかもしれませんね。

 「そう。……しかし呪いという物は、強引に引き剥がすと、とんでもない副作用を引き起こす事があるのだ。下手をすればモーリスやジリーの命に関わる事になる」

 「そっか。んじゃ正攻法じゃないとダメって事だね。分かったよ」

 やはり呪いという物は扱いに慎重を期するものなんですね。


 「……だから、あたしからも頼む。モーリスの呪いを解くのに協力してくれ」

 シアさんに向かって、しっかりと頭を下げたジリーさん。それをシアさんは笑って迎えました。

 「はっはっはっ、何を今更。私は魔王だぞ? 魔族の悩みは私の悩み。そして仲間の悩みは私の悩みだ。必ずやモーリスの呪いを解いてやるとも」

 「……さすが魔王、こういう部分は本当に頼りになるね。胸はないけど!」「おいっ!」

 いいツッコミが入ったところで解散です。



 ――自宅。シア視点。

 フューラとは別れ、私とジリーは一足先に自宅へ。

 「っつーか、あの魔法ってなんだったんだい?」

 「ああ。まずヘヴィロードは特定の物の重量を増加させる。先ほどはペダルに掛けたので、漕ぐ際に大きな力が必要となったのだ」

 「あ、ハンドルは軽いのにペダルだけ異様に重くなったのはそういう事かい」

 「そういう事だ。そしてこれはアイシャの持つ特殊能力と同じと考えて差し支えない。ただこちらは重量であり応用範囲に優れ、アイシャのは重力であり反応速度に優れている。アイシャは小人族であるし一瞬で動きを変える必要があるので、あの特殊能力との親和性はかなりのものだ。その分負担も大きいようだがな」

 偽魔王戦でアイシャの負担を一部受け持ったが、その負担の大きさには正直驚いた。そしてアイシャを哀れんでしまいそうになった。もちろんそのような事をすれば、アイシャから鉄拳が飛んでくるのは目に見えているのだが。


 「次のアースウェイブは、地面を波打たせ相手の足元をすくい転ばせる事を目的とした魔法だ。今回の場合は凹凸によりハンドルが取られ、直進出来ないようにするのが目的だった。しかしまさかあのような方法で打ち破ってしまうとは」

 「ははは。その感想はあたし自身もだよ。そうだ、リサさんにも協力してもらおうっと」

 「そうだな。リサさんは私よりも魔法に詳しい」

 もしもリサさんがズー教団の時に行ったあの強力な魔法障壁を、ジリーが突破出来るとしたら? これはとんでもなく強力な力となりうる。


 「ただいまー」

 おっと、この声はアイシャだな。

 「おかえり。お、モーリスも一緒だったのか」

 (うん)

 小さなコンビが仲良く手を繋いで帰ってきた。

 「ねえモーリスってさ、身長十センチも伸びてたんだから。私すっかり抜かれてたー」

 「ははは。まあ小人族はどうしても仕方がないであろう。モーリスは恐らく栄養価の高い食事のおかげで、今まで抑えられていた分一気に成長したのだろう」

 (――――――!)

 「おっと、確かにそうだな」

 草じゃないんだから! と怒られてしまった。

 「それと、はい。あんたにお土産」

 「私に? 何だ突然甘くなったな。中身は……これはお土産とは言わないぞ?」

 「あはは! まあいいじゃん。さっさと着替えなさい」

 命令か……。



 それでは部屋に戻りお着替えである。

 「……誰も見てはいないな」

 これでも女性なのでな。裸を見られるのには抵抗がある。

 上着を脱ぎワイシャツを脱ぎ、残念ながら不要かと思えるほどのブラを脱ぎ……うーん、やはりどう見ても胸がない……。

 「まな板!」「なっ!? 覗くなバカタレ!」

 うぅ……。


 さて、着替えも終わったのでお披露目である。

 「どうだ?」

 「うーん、結構ラフだね。ジリーよりもかも」

 「そうだねー。ってかあたしのシャツは伸びただけなんだけど」

 (――、――――?)

 まあまあの反応か。そもそも気楽に着られる事を前提として頼んだのだから、これくらいの反応でよし。

 服装だが、シャツは長袖で、色は水色でかなり大きくゆったりサイズ。ズボンはジャージ生地で黒。こちらもゆったりサイズだ。


 (――! ――――!)

 「あーはいはい、この文字の意味だな」

 モーリスに、シャツに書かれた文字が何なのかと催促されてしまった。

 「これはだな、カナタの時代、カナタの国の言葉で「魔王」と書いてある。どうだ、格好いいだろう?」

 「ぶふっ、あはははははは!!!」「あっはははは!!」(あはははは!!)

 三人とも大爆笑。

 「……っふーん! いいもん! どうせそうなると思ってたもん! いいもんいいもん!」

 「あはははは!! だって、だって……んにゃはははははは!!」

 そこまで馬鹿笑いしなくても……。


 ともかく、この日は夜中寝るまでずーっと、アイシャは笑い続けていたし、帰ってきたフューラとリサさんにも大笑いされてしまった。

 ……自信あったのになぁ……。



どこかで見た事のある副題? 気のせい気のせい。

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