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第五十七話  メセルスタン宗国

 ――自宅。リサさん視点。

 「んじゃ、また留守にするよ。今回はシア置いていくから頼んだよ」

 「はあーい」(はあーい)

 カナタさんとアイシャさんは、改めて帰省へ。シアさんは同行を拒否したので、今回はわたくしたちとお留守番です。

 「それで、何故アイシャさんたちと一緒には行かなかったのですか?」

 (……)

 無言で目線を逸らされました。大方お二人に嫉妬したのでしょう。

 「それではわたくしたちはいつも通り、わたくしは図書館、フューラさんは工房、モーリスさんとシアさんは王宮でお勉強に励んでくださいね」



 ――王立図書館。

 わたくしは元々研究者ですので、本に囲まれているのが好きなのです。もちろん目的はありますけれどね。

 「おはようございます」

 「あ、おはようございます。今日もですか?」

 「はい。今のうちに調べておかなければいけない事が山のようにありますので」

 「そうですか。いつもお疲れ様です」

 すっかり司書さんとも顔なじみです。というか、これほど毎日利用しているのはわたくしくらいでしょうね。


 現在わたくしはリビル館長の許可を得て、特例として地下書庫への出入りをさせていただいております。

 これには一つ目にモーリスさんの解呪方法の模索があります。しかしこちらはわたくしは専門外ですし、なによりも呪術の項では触れてはいけない赤帯の書物が多く、その調査はほとんど進んでいません。

 そして二つ目に、アイシャさんの属性付与魔法についての調査。これは幾つか情報があり、過去には剣に属性を宿す魔法があったとの表記を見つけました。その内容から察するに、アイシャさんはただの剣士ではなく、いわゆる魔法剣士なのでしょう。しかしこれが勇者だからこそなのか、はたまた全く別のところから湧いて出た才能なのかまではまだ掴めてはいません。

 三つ目に……これは皆さんには話しておりませんが、元世界への帰還方法に関する調査を行っています。しかしこれについてはモーリスさんの解呪方法以上に手掛かりがありません。そもそもわたくしたちとこの世界とに”どのような何か”があるのかという、最低限の関係性すらも……。しかしわたくしはチェリノス連合王国第十三王女として、必ず帰還してみせます。

 本日はやはり帰還方法を見つける事に尽力いたしましょう。



 ――幾許か。

 「あーいたいた。リサ様申し訳ありませんが急用です」

 司書さんが青い顔をしてやってきました。

 「急用とは?」

 「それが……モーリスさんが王宮に来ていないそうなのです」

 「という事はシアさんも?」

 「私には、モーリスさんが来ていないとしか。なので至急王宮へと」

 「分かりました」

 シアさんもモーリスさんも自ら失踪するとは考えにくいです。となると、何者かにさらわれたか。しかしお二人とも一筋縄ではいかない人物ですから、力ずくではない別の方法を使ったとも考えられますね。



 ――王宮。

 わたくしが到着すると、丁度フューラさんも来ました。無言で目を合わせ、トム王様の元へと急ぎます。

 「火急の呼び出し申し訳ありません。改めて説明しますと、カキア大臣がモーリス君とシアさんを待っていたのですが一向に来る気配がない。様子を見ていたものの、あまりにも遅いので兵を出し探させたところ、人さらいがあったとの報告が入ってきました。相手は鳥を頭に乗せた白い髪の子供。恐らくはモーリスさんとシアさんでしょう」

 「……どのようにさらわれたのでしょうか?」

 「それは……っと来ましたね」

 兵に連れられ男性が一名こちらへ来ましたね。人さらい……ではないでしょう。となると目撃者ですね。


 「――私が店の準備をしていると、いつも見る白い子が来たので見ていたら、黒のローブを着た三人組が子供と頭の鳥を捕まえてそのまま転送したんです。助ける暇もない、一瞬の出来事でした」

 雑踏の中だったのでモーリスさんの読心能力が遮られていたのでしょうね。そして気付く間もない一瞬の犯行。ならばモーリスさんでもどうしようもなかったと納得がいきます。

 「相手は魔族でしょうか?」

 「あなたは?」

 「身内です」

 少しわたくしたちを見やった後、男性はわたくしたちが何者かを理解したように顔色を変えました。

 「角は見えませんでした。ただローブの胸に紋章がありました」

 「どのような?」

 「――うーん、一瞬だったから曖昧なんですよ。ただ金の刺繍で……それこそ頭の上に乗ってた鳥に似ていたような気が」

 「ズー教団」

 わたくし、フューラさん、そしてトム王様の三人の声が重なりました。間違いありませんね。


 目撃者さんを帰した後、わたくしたちは早速ミーティングを開始。

 「……まずいですね」

 不安を絵に描いたようなフューラさん。フューラさんのこのような表情は久しぶりに見ました。

 「戦闘行為でない場合、オーナーもサブオーナーもいない現状では僕は制限を解除出来ません。それはつまり、血を流すような行為は一切出来ないという事です。……リサさん、申し訳ありません」

 「いいえ、それはフューラさんが機械である以上は仕方のない事なのでしょう? ならばフューラさんが謝る事ではありませんよ」

 しかしこれは、もしもの時にはわたくしたった一人で事態を解決しなければならない、という事を意味します。


 「王様、そちらから出せる情報は?」

 「あまりありません。ただ現在の本拠地はメセルスタンにあるとだけ」

 他国ですか。しかも相手は宗教国家。

 「……なので、もしも二人がメセルスタン領内に連行されていた場合、こちらとしては手が出せない」

 「それは承知しております。わたくしだってこれでも王女なのですよ?」

 あくまでも冗談めかして注意してみました。

 「あ、あはは、そうでしたね。すっかり皆さんとの生活に馴染んでいるので、忘れるところでした」

 「それは褒め言葉と取らせていただきますね」

 「あの、真剣にお願いします」

 フューラさんから横槍が入りました。

 「ちっちっちっ、余裕を持つ事の意義を分かっておられませんねー。このような時だからこそ冷静に周りを見渡せる余裕というものが必要なのですよ」

 「……余裕なくてすみませんね」

 おや、これまた珍しい反応ですね。という事はフューラさんの中では本当に余裕がないのでしょうね。


 「メセルスタンに入国するのであれば、私から一筆書かせていただきます。それから領内では宗教的な会話は禁止です。神や使徒などの言葉も駄目です。メセルスタンという国はそれほどまでに厳格であり、排他的なのです」

 「さすがは宗教国家といったところでしょうか。まあわたくしはチェリノスではあまり宗教には関わりませんでしたので、そういう言葉が出る事はないでしょう。フューラさんは?」

 「僕は……そもそも僕の存在自体が異端ですからね。シャックリ教皇でしたか、あの方にまで話が行ってしまうとなると、僕は肩身の狭い思いをするでしょうね」

 どちらにせよメセルスタン内で活動をするのであれば、シャックリ教皇との邂逅は避けられないでしょう。

 「ならばいっそ、シャックリ教皇にお目通りをいたしましょう」

 「えっ!?」

 見事にフューラさんもトム王様も驚きました。

 「メセルスタン領内では現在宗教的な対立があるとの話でしたよね? なればこそ、わたくしたちの目的を明確にお伝えするのですよ。……あわよくば騙し利用します」

 「……リサさん、本気ですか?」

 「本気ですよ。そしてわたくしの目算ではこれが一番迅速に、そして安全に事態を解決させます」

 驚き口が開いているフューラさん。

 「ふふっ、わたくしを誰だとお思いですか? わたくしはチェリノス連合王国の第十三王女なのですよ。わたくしの双肩には数十万という民衆の生活と命が掛かっていたのです。このような事態を解決出来ずして、如何にして民を率いる事が出来ましょうか!」

 「……御見それいたしました」

 フューラさんよりも先にトム王様が頭を下げましたね。そしてそれを見てフューラさんは余計に目が点になっています。



 ――メセルスタン国境。

 メセルスタンへは必ず国境で入国許可を頂かなければいけないとの事で、まずは国境まで来ました。

 「身分証と宗教証明書を」

 「はい」

 わたくしが渡したのはトム王様から頂いた紹介状。なにせわたくしもフューラさんも、そのどちらの書類も所持しておりませんから。

 「これは?」

 「グラティア王からの紹介状です。わたくしたちは故あって身分を明かす事が出来ないのです」

 「……待ってなさい」

 強行突破をする理由もありませんので、ここは素直に待ち、先方の出方をうかがいます。

 「……問題は僕だと思いますよ」

 「怒られたいのですか?」

 「いえ、でも」「しつこいですよ」

 フューラさんの心配も分かりますが、ここは臆せず待つべきですから。


 数分で警備兵が戻ってきました。

 「確認が取れましたのでどうぞ。ただし身分証と宗教証明書を所持していないという事は、メセルスタン内で犯罪に巻き込まれたとしても、我々は一切関与する事はありません。そのつもりで」

 「ええ、承知しております。お手間を取らせました」

 正確には少し違いますが、これで入国審査は完了です。

 「さて、転送屋さんを探して早速シャックリ教皇の元へと向かいましょう」

 「あの……」

 「もう、なんですか?」

 フューラさんは先ほどからずっとこの調子です。

 「えっと、ごめんなさい。僕は帰ろうかと」

 「はあ!?」

 「その、カナタさんやジリーさんが、僕たちのいない間に帰ってきたら困るのではないかなと。なので……」

 「……はあ、呆れました。そんなに嫌ならば勝手に帰りなさい! そんなフューラさんは足手まといなだけです!」

 もう知りません。わたくし一人で行く事にします。



 ――メセルスタン首府、バルサレツカ。

 「ようこそメセルスタンの中心地、バルサレツカへ」

 「よろしくお願いいたします」

 さて到着したここバルサレツカですが……転送屋さんの横に地図が張り出されていました。街の全景ですが、これは計画して作られた都市のようですね。王宮のような中央府を起点とし、その周囲に水路を設け、放射状に大通りが広がり、そしてそれらを複数の環状道路が繋いでいます。

 ……これは、円形に形作られた蜘蛛の巣と言えば分かりやすいでしょう。

 街の建物は乳白色の石レンガで統一されており、街路樹も各所に配置され、清楚な雰囲気が漂います。そしてその中心には、街のどこからでも見えるであろう、一際高くそびえる塔。

 「つまり、あちらに見える塔が中央府ですね」

 では、向かいましょう。



 ――メセルスタン中央府。

 中央府入り口手前にある水路まで来ました。水路の幅は一キロ近くあるでしょうか。さすがに泳いでは渡れませんので、橋を探しましょう。


 ……橋がありませんでした。仕方がないので門兵と思われる方に声をかけます。しかしいるのは兵というには軽装というか、白いローブに身を包んだ魔術師さんにしか見えません。とにかくお話をしてみましょう。

 「申し訳ございません、シャックリ教皇様にお目通りを願いたいのですが」

 「身分証と宗教証明書を」

 この国では全てにおいてその二つが必要なのですね。

 「これで」

 「ん? ……グラティアからの使者か。待ちなさい」

 やはり門兵だったようです。門兵が両手を掲げ魔法を発動させると、ゆっくりと水中から橋が現れました。無駄な……いえ、よく出来たギミックですね。

 「入って左に受付の者がいるので、再度これを見せなさい」

 「承知いたしました」

 橋を渡っていますと、街の側から少しずつ橋が水中に沈んでいきます。何も知らないと怖いでしょうね。……わたくしですか? 空を飛べば済みますので。

 ……しかし歩くと意外と長いです。とはいえ無闇に魔法を使うのは怒られるでしょうから我慢我慢。


 ようやく中央府に到着。左に受付の方がいらっしゃるのでしたよね? えーと……。

 「ようこそ」「わっ! とびっくりしました」

 「ははは、これは失礼致しました」

 入った途端に声をかけられたものですから、驚いてしまいました。

 「こちらで受付を行いますので、身分証と宗教証明書の提示をお願いします」

 「えー、これで」

 「……親書ですか? 少々お待ちください」

 門兵は事務的で愛想のない方でしたが、受付の方からは柔らかい笑顔を見せていただけました。

 やはり人を招く立場ならば笑顔で応対しなければいけませんよね。


 数分後先ほどの受付の方がいらして、わたくしを案内してくださいました。

 移動中も兵士と思われる方がいるのですが、皆さん魔術師の格好をしておられます。恐らくこの国においては剣術よりも魔法が重要視されているのでしょう。

 その後は塔をどんどんと登って行きます。さすがに疲れますねこれ。そして到着したのは執務室のようです。王制ではないので謁見の間というものを用意していない可能性もありますが。

 「失礼いたします」

 「どうぞ」

 さて、彼の方はどのような表情でわたくしを迎えてくださるのでしょうか。と思ったら執務中でこちらを見ていただけておりません。

 「えー、グラティアからの使者の方……ああっ!?」

 ようやくこちらを見たと思ったら、それはそれは見事な驚きぶりです。つまりわたくしの顔をしっかりと覚えていたという事ですね。

 「ふふっ、覚えていただけて光栄に存じます。シャックリ教皇様」

 「……あ……えー……も、申し訳ない。名前が……」

 「リサと申します」

 「ああ! そうだそうだ。確か異世界の王女殿下であったと記憶しております」

 「はい。しかし今はあくまでも勇者の仲間であり、一市民であります。なのでそこまでかしこまらなくても結構ですよ」

 これで第一関門は突破と言っても差し支えないでしょう。


 椅子に座り、さてここからが本番です。

 「……」

 当然といえば当然ですが、明らかに警戒されていますね。

 「今回はわたくし一人しかおりませんよ」

 「そう……ですか。……それで、なに用かな?」

 「ズー教団。もちろんご存知ですよね? そしてその本拠地がメセルスタン領内にある事も」

 訝しむというよりは、こちらの裏を探っておられる様子の教皇様。

 「……名前は知っているが、それが我が国の領内にあるとは初耳だ」

 「いいえ、教皇様はご存知のはずですよ。でなければ先ほどの書類は何だったのですか?」

 「……見たのか」

 「見えたのですよ。ズー教団に対する問責裁判という文字が。仮にも一国の長であらせられるにしては、脇が甘いと言わざるを得ません。それとも、そこまで頭が回らないほどに追い込まれた状況にあるのでしょうかね?」

 ……音には聞こえませんでしたが、口元では舌打ちをしました。

 「なーにが異世界の王女だ。貴様のようなひよっこに何が分かる。私はこの席に十五年間も座り続けているのだぞ」

 「おやおや、わたくしはこの世に生を受けてから十九年間、一日も休む事なく王女として民衆を束ねておりましたよ? 国長としてはわたくしのほうが長く座り続けておりますし、その間に戦争も経験しております。協議の場でお話したはずですが、お忘れですか?」

 少々の嘘は挟みましたが、ぐぬぬというとても小気味良い表情をいただきました。……わたくし黒いでしょうかね? いえ、毛の色ではありませんよ。


 「こちらは張り合い続ける気はございませんので、次へと話を進めさせていただきます」

 「……ああ、私も職務が詰まっている」

 嘘ですね。恐らく教皇様はあまり職務に忠実な方ではありません。そして今現在は民衆の前にもあまりお出になられないのではないでしょうか。その判断材料はこの部屋そのもの。ですが、それは後ほど。

 「ズー教団というのは巨鳥ズーを神と崇め信奉する集団であり、一部では武装蜂起するのではないかという話もあるそうですね?」

 「……ああ」

 拗ねていますね。全く、お子様なんですから。まるで何処かの誰かさんのようです。

 「端的に申し上げます。魔王プロトシアがズー教団にさらわれました」

 「……はい!?」

 「そしてもう一人、わたくしたちの仲間である魔族の少年も一緒にいなくなりました。ああ彼は最近仲間に加わった方で、一時行方不明になっていた方とは別ですよ」

 「待て待て! それではズー教団が魔族の秘密組織であるという事か!?」

 「断言は出来ませんが、恐らくは違います。お二人をさらった集団には角がなかったとの目撃証言がありますので」

 教皇様はようやく全てを飲み込んで、こちらの意図に感付き始めた様子です。


 「つまりは我々にその二人を救出しろという事か」

 「惜しいですね。正しくは勇者の仲間であるわたくしたちが、メセルスタン領内で活動する事への承諾、及び無用な介入をしないという確約をいただきたいのです」

 「……邪魔をするなという事か?」

 鈍いお人ですね。さすがに少しイラッとしてしまいます。

 「いえ、そちらはそちらで動いていただいて結構です。ただしこちらへ剣先を向ける真似はしないようにと、そういう事です」

 「もしも」「潰します」

 「……もしも我々が」「どちらであってもです」

 もしもズー教団が、もしもメセルスタンが、わたくしたちに牙を向けた場合どうするのか、という質問でしょうが、そんなもの聞くまでもなく決まっていますでしょうに。

 「教皇様も、わたくしたちのようにひとつ覚悟をお決めになってはいかがですか? それではわたくしはズー教団の本拠地探しへと向かいますので、これで」


 「……んー分かった! 私の負けだ!」

 わたくしが席を立とうとしたところで、ついに教皇様は音を上げました。

 「ズー教団の本拠地は既に分かっている。しかし国内のごたごたのせいでそちらまで手が回らない。宗派の対立が起こっている事はご存知だと思うが、このままでは魔族との戦争以前に内戦状態へと移行しかねないのだ。私とて板ばさみなのだよ」

 「それは教皇様自らが招いた事態であるのですよね?」

 「な……」

 驚いたという事は、こんな簡単な事にすら気付かないほどの人物なのですね。このようなお粗末な人物に、罪もない民衆が踊らされ、そして友を相手に剣を交えようとしている。そう考えると、どうにも腹の虫が収まらなくなってしまいました。

 わたくし、怒ります。

 「いいですか? この部屋を見渡せば一目瞭然なのですよ。お高い装飾品や絵画が所狭しと並び、そしてそれらに統一性が全くない。絵画を例に挙げるならば、抽象絵画の横に写実主義、その横にはモダニズム。彼らは一体何の因果でこんな並びをさせられているのか。このような部屋の持ち主が厳格な単一宗教国家の長? あり得ません! しかし教皇様はここに居られます。そして以前の協議の時、ルーディシュに嫌がらせをして裏金を要求しているという話がありましたよね。その裏金、各宗派にも要求しておられたのでは? おおかた特定宗派に対する優遇措置を取るなどと謳ったのでしょう。そして増長し続けた各宗派による要求が教皇様の持つ許容量を超え、要求の不成立が不満となって一気に表面化した。それが宗派間の対立をより強くしてしまい、お互いがお互いに罪を擦り付けようとしている。これがメセルスタン内で起こっている宗教闘争の、ひいては内戦への火種の正体です」

 ……わたくしはチェリノス内の序列では十三番目と下にいたのですが、しかし民衆を守るという事柄に対しては、誰よりも強く想い続けたという自負があります。だからこそ民衆を疎かにし私腹を肥やす事にしか目の行っていない教皇様のような人物は……出来る事ならばここで燃やしてやりたいほどなのです。


 尚も驚き固まり続ける教皇様。

 「わたくしの最低限の要求、メセルスタン領内での行動の自由とこちらへは介入しない事。確約していただけますね?」

 「……あ、えー……」

 「確約して、い・た・だ・け・ま・す・ね?」

 「わ、分かった分かった。勇者一行の行動の自由を保証しよう。だからその手に持つ炎を仕舞ってくれ」

 おっと、無意識に本気で燃やそうとしていました。

 いっそやってしまうのが民のためでしょうが……ともかく、これで自由に動けます。

 「最後にひとつ。この事はわたくしの口から漏らす事はございませんので、そこはご安心くださいね。それでは、ごきげんよう」

 最後はあくまでさらっと去ります。本音を言うのならば、もう一秒たりともこのような方と同じ空気を吸いたくないのですよ。


 こうしてわたくしは、単身でズー教団壊滅へと動く事となりました。



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