第二十七話 オー! モーレツー!
――四日目。
「もう慣れたから全員俺の家に集まっていても何も言わんぞ」
「でも言ってるじゃん」
「うるさいうるさい!」
という事で四日目スタート。本日はコロシアムでロデオ大会、その後ロデオで使った暴れ牛をそのまま再利用しての牛追い祭り。
「ロデオ誰出るー?」
「って出る気なのかよ!」
「はあーい」
と、手を挙げたのはまさかのリサさん。
「いやね、ロデオって分かってますか? 暴れ牛の背中に乗るんですよ? 吹っ飛ばされたり蹴られたり角で突かれたりするんですよ?」
「ええ、もちろん分かっていますとも。なにせ経験者ですから」
「あー経験者ならば安心……って、ええっ!?」
全員で驚き固まってしまった。
「チェリノス、とりわけわたくしの統治していた小国は冬が厳しく長いので、農業の出来ない間は狩りや畜産で凌いでおります。そして娯楽も少ない地域なので、必然的にロデオのように家畜を使用した娯楽が存在しているのです。踏み締めて固くなった雪の地面で、牛や馬、それから鹿を使って、どれほど豪快に乗りこなせるかという内容になりますね」
まさに雪上ロデオか。……あ、リサさんがモフモフなのって寒さに順応したからなのかも。というか一度でいいからあのしっぽモフりたい。
そしてフューラからも質問が出た。
「えっと、ちなみにリサさんはどれほど乗りこなしたんですか?」
「わたくしは確か――十五秒ほどが最高記録です。もっと長く乗りこなした方もおられますので、記録としては平均的でしょうか」
「なるほどなー。それならば……いや、判断はアイシャに任せるよ。どれくらい激しいものなのか知ってるのはアイシャだけだ」
「え、私? そうだなー……私も毎年見に行ってる訳じゃないから断言は出来ないけど、十五秒乗っていられるならば大丈夫じゃないかな。あ、でも絶対に無茶しないでくださいね。異世界であっても一応は王女様だって事を肝に銘じてください」
「はい。承知致しました」
んーすごく不安。だけどリサさんも結構大胆な所があるからやってくれるかな?
――コロシアム、ロデオ会場。
到着したらもう人だらけ。出店やフリマ、歌劇でもかなりの人だったが、密度が数段違う感じ。
「出場登録してきますね」
「色々と気を付けて」
「ふふっ、そうですね。色々と気を付けます」
どうやらようやく分かってくれた様子。散々口をすっぱくして言ってきた甲斐があった。
さて俺たちは中へ。
「ねーカナタも出場しなよ」
「無茶言うなよ。大体俺はそういうのは苦手なんだよ。……まあ牛追いは参加してもいいけど」
「あはは、ちょっとやる気だ」
そりゃそうだ。アイシャにリサさんにジリーが参加して、俺が参加しないのは勿体ない。といっても出場出来そうなのは牛追いだけだからな。
「カナタさんが出るならば僕も出ますよ。一応盾役ですから」
「あたしも牛追い出たい!」
二人とも楽しむ気満々だ。まあせっかくの祭りだものな。
「じゃー私も出るー」
「アイシャは駄目。お前にはレイアさんの剣を見定めるっていう大事な役割があるだろ。なのにその前に怪我でもしてみろ。恥では済まない話になるぞ」
「……そうだね。じゃあ私は見てる」
時々自分がどういう立場なのかを忘れるのが、こいつの問題点だな。
コロシアム内はやはりとんでもない賑わい。それでもどうにか席を見つけ、座って待つ。十分ほどでまたスピーカーのような魔法が使われ、声が響いた。
「はーい皆様お待たせいたしましたー! グラティア王国謝肉祭名物、ロデオ大会の開始です! 司会進行および実況はわたくしカミマクールと」「昨日ぶりのバジートフがお送りいたします」
「またこの二人なのか」
「去年もだったよ」
ずっとコンビでやってるのか。そういえば息ぴったりだ。
「さーてこのロデオ大会ですが、途中参加オーケーとなっております。もしも心がホットしてうおーあちー! となった方は、どしどしご参加くださーい」
おいおい仮にもロデオ大会だぞ? オープン過ぎやしないか? と横を見ると、心がアッチッチしてるのが約三名。何これ俺が冷めてるだけ? 違うよね? 俺間違ってないよね??
――ロデオ大会開始。
さて競技開始となったが、牛を使うブルクラスと馬を使うブロンコクラスとで分かれており、牛は八秒以上振り落とされずに耐え、どれだけ派手に暴れさせる事が出来るか。馬はどれだけの秒数耐えられるかという競技の振り分けになっていた。
「リサさんはどっちなんだろうね?」
「どっちにも出てくる予感がします」
「あはは……あり得る」
そしてアイシャとフューラの会話どおり、リサさんはどちらにも出場していた。
「さーてブルクラス次の挑戦者はこちらー。えー……リサ選手ですね。獣人族でも希少なシルバーフォックスの血筋を持つ方です」
「なんというか、こういう競技には出てきそうにない、高貴な雰囲気のある方ですね。果たしてどれほどのパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか? 注目です」
柵が開き早速大暴れし、まるで逆立ちするかのように後ろ足を蹴り上げ、何度も飛び跳ねる猛牛。リサさんは片手で綱を引きつつ、もう片手を空に突き上げ、雄叫びを上げながら豪快に乗り回している。まるで普段の姿からは想像出来ない光景。
「これには驚きだ! 素人とは思えない豪快な手綱捌き!」
観衆からも大きな声援が送られており、八秒を経過してもまだ乗っている! と思ったらさすがに耐えられなくなったか、やんわり振り落とされた。どうやら怪我はない様子。
「女性でこのパフォーマンスは素晴らしい! 観客の皆さんもそう思いますよね!」
煽る実況者に拍手や口笛で答える観客。リサさんは自慢げに手を振って控え室へと消えた。
「さて次ですが……あれ? えーブロンコクラスの出場選手なんですがー、またリサ選手です!」
「あはははは!」「ヒューヒュー!」
笑いと口笛による声援を受け、再びリサさん登場。
「ブルクラスを終わってすぐのブロンコクラスですけど、大丈夫ですか?」
リサさんはしっかりお辞儀。こういうところにリサさんの本物の王女様らしさが垣間見える。
「順番を入れ替える事も出来ますけど、本当にいいですか? 無理しないでくださいね」
口が「はい」と動き再度頭を下げたリサさん。ほぼ休憩なしで連続とは、気を付けろと言った俺の言葉は届いていなかった様子。残念だ。
馬にまたがる狐という何ともな光景。そして柵が解き放たれ競技スタート。一見して先ほどの牛よりもド派手に跳ね上がる暴れ馬。これさすがに怪我しそうだな……。
「さー注目のリサ選手ですが、こちらも豪快に乗りこなしております!」
確かに豪快だけど、中身三十六歳は心配で仕方がないよ。
「十秒経過して……あ! 危ないっ!!」
馬が嘶き立ち上がり、背から倒れるように転がってしまった。ギリギリで逃げたリサさんだが、見てる側としても肝が冷えた。
「リサ選手お怪我はありませんか?」
うなづき観客に手を振る余裕を見せるリサさん。今の危険行為自体はリサさんに非はないが、あとで話しておかなければ。
「さてお前らはどうするよ?」
「いやー、今のを見ちゃったら遠慮しちゃいますよ」
「あたしもだね。自分が同じ状況になったらきっと逃げる余裕を持ってないよ」
「カナタに止めてもらってよかった……」
三人ともすっかり熱が冷めたな。アイシャに至っては青くなっている。個人的には”それでもチャレンジ”となるかと思ったのだが、何事もない選択をしたのであれば俺も安心出来る。
結果発表の前に参加賞をもらって帰ってきたリサさん。
「もう少し行けるかと思ったのですけど、後転してしまいましたね」
「もっと青い顔して帰ってくるかと思ってたんですけど、まだ余裕あったみたいですね」
「そう……えーっと……あー、あははー」
俺たちの顔を見て安心したのか、途端に手が震えだし、笑顔のまま涙を蓄えたリサさん。やっぱり怖かったんだな。両方の競技に間髪いれず参加するという危険行為を注意しようかと思ったが、さすがにこんな表情を見せられては――。
するとアイシャがリサさんの手を握った。
「私がいるから、もう安心でしょ?」
「……ふふっ、そうですね」
さすがは勇者様。あっさりとリサさんの震えが止まり、しっかりとした笑顔を見せてくれた。
大会結果だが、リサさんは惜しくも入賞ならず、ブルクラスで四位、ブロンコクラスでは十一位だった。
「確かに参加賞のみでしたが、しかし久しぶりに熱くなれました。これでアーティファクトの製作にも力が入るというものです」
一皮剥けたというよりはストレス発散完了かな? 事実スッキリした表情をしている。
後は慰労も兼ねて一旦外で食事。牛追いは昼二時からスタートなので、それまではのんびりしていよう。
――牛追いスタート地点。
四日目後半は牛追い祭り。コースは西大通から北上し、北大通までのL字区間約一キロ。昨日の競馬コースで言えば登坂区間だな。ただしこちらはより複雑で狭い道なので、本気で逃げる必要がある。
「アイシャはリサさんとシアとで観戦な。怪我したらリサさんに治してもらおうっと」
「魔力を持たないカナタさんに効くかは保証しかねますけどね」
「だからこその実験台ですよ。なーフューラ?」
「ぼ、僕は精密機械なんですっ!」
実際は科学的ではない魔法という存在が怖いだけなんだろうな。
「さてさてーこちら牛追いスタート地点に来ておりまーす」
この声、またあの二人か。
「おっ、昨日の競馬ランナーでぶっちぎりの優勝を果たしたジリー選手を発見っ! ちょっとお話を聞いてみましょうか」
三毛っぽい猫耳娘がこちらへ。確かバジートフさん。狙いは俺の横にいるジリーなので静かに見守るか。。
「はーいジリー選手よろしいですか?」
ちらっとこちらを見て確認を取るジリー。俺もあちらに気付かれない程度に頷く。
「いいよ。あーそれでも昨日も言ったけど深い話は駄目」
「そうでしたね。えー昨日の今日ですけど、疲れはありませんか?」
「んー、な……あるよー。そりゃーねーあれだけ走ったんだ、当然だね」
はぐらかしたな。いいぞ。
「んではそちらの方とはどのようなご関係で?」
げっ、気付かれてた。やっちまったという表情でこちらを見やるジリー。仕方がないな。
「俺は監視役ですよ。相手は服役囚ですからね。んで混乱のうちに逃げられちゃ困るんで、俺も走ります」
「あ、なるほどなるほどそういう事でしたか、これは失礼致しました」
これで猫耳娘は離れてくれた。
「……いやーびっくりしたね」
「全くだ。猫だから洞察力が鋭いのかな? ともかく、怪我しないように走ろう。フューラも人前で超回復能力見せるのはまずいんだから、気を付けて走れよ」
「はい、分かりました」
「んでは牛さんのご機嫌をうかがってみましょうー」
ロデオで使用した六頭の牛と、その後ろに追い立てるため追加で六頭、合計十二頭の牛に追いかけられるこの催し。距離は一キロと短いが、道幅は牛二頭が並んだら逃げ場がないほどに狭く、しかも直角カーブにクランク、そして上り坂とバリエーション豊かだ。
「……はい、牛さんは鼻息荒く、モーいつでも突撃してやるぞ! といった感じです」
「なるほどー。牛なだけにモーですね。さてスタートまで残り一分! 参加者の方々は命の覚悟を決め、死に物狂いで走り抜いてください!」
「素手で倒せる自信があれば対峙してもいいですよ?」
いや無理だろ。……ひとりを除いて。と思い横を見たら目が合った。すると物凄く強く首を横に振られた。ジリーでも無理か。そりゃそうだな。背中に突き刺さる牛からの闘気殺気は尋常じゃない。
……追いつかれたらさっさと柵外に逃げようっと。
――牛追いスタート。
王宮の鐘が鳴り、牛追いが始まった。
「三十六計逃げるに如かず!」
脱兎の如く全力で走り出す俺たち参加者。そして追い立てる牛たち。……ってジリーわざと遅れやがった!
全力で逃げつつもチラチラと後方確認。ジリーの奴余裕ぶっこいて牛を煽っていやがる。あーいう事してるとだな「んぎゃああああっ!!」ほらな。
「おおっとジリー選手、角でお尻を突かれた! 怪我はない様子だが、これは危ない!」
そして全速力で走ってきて、一瞬で俺たちと並んだ。まるでギャグ漫画だな。
「やーいやーい」
「うるせっ! ……うわっ……まずっ」
そう一言、柵を飛び越えてジリー脱落。……ん? 一瞬肌色のモモが見えたような……気のせいか?
さてこちらだが、フューラは俺と速度を合わせているが、周りは結構足が速い。従って現在俺は最下位集団の中だ。
「さー牛追いはここから細い多重クランクへと入っていきます。数年に一度はここでひとり死ぬんですよねー」
やめい! こちとら全力なのに牛がすぐそこに来てんだから!
「大丈夫ですか?」
「お前が大丈夫過ぎなんだよ!」
「あはは」
こいつめ……ともかく今は止まらない事に集中!
軽自動車一台分程度の狭い道で、左右に振られまくる多重クランクがこれでもかと続く。これ人が死ぬ理由って間違いなく踏まれての圧死だろ! コース設計変えろよ!
「おおっと前方で一名転んだぞ!」
ほら来た! 巻き込まれないようにしないと。……いた! 転倒者を確認した俺は、人の上を飛び越える。
「んがあああっ!」
思わず力み、とんでもない声が出てしまった。これフューラに聞かれてないだろうな。
さあ後はこの坂を上りきればゴールだ。
「もう大丈夫そうなので、僕はお先に失礼しまーす」
「あっ! この薄情者!」
本当に俺を置いて速度を上げやがった! ってか牛さんも速度上げてきてるんですけど!
「俺だってオーバードライブくらい出来んよ!」
ま、嘘だけど。
ともかく追いつかれたら最低でも怪我、当たりどころが悪けりゃ死亡。足がつっても構わないから全速力だ!
ゴールが見えた。牛さんとはかなり近いが、ギリギリどうにかなる! ……といいな!
なんて思っているとあっさりとゴール。すぐさま柵を乗り越え逃げる。
「いやー間に合いましたね。八割方の確率で怪我すると思ってたんですけどね。あはは」
「お前なあ!」
と文句を言おうとした瞬間、柵を乗り越えて牛が一頭こちらに突っ込んできた!
「うおっ!? ……と?」
「え、えっ!? 何でこっち来るんですか!! いやあああああー!!」
俺が文句を言うより先に、牛に追いかけられ反省させられているフューラ。
んー、そうか白衣がヒラヒラしてるから、マタドールの布と同じ効果になってるのか。これは愉快愉快、ざまあざまあ。
その後フューラは必死に近くの木に登り、事なきを得ましたとさ。
――牛追いを終わり合流。
「……あ、あのー……カナタさ……」
散々牛に追いかけられ凹んでいるフューラ。そして別の理由で凹んでいるのがもうひとり。ジリーだ。
「真面目に走らないからあーなるんだよ。あのまま怪我してたらどうするつもりだったんだよ?」
「ごめん。……んで……えっと……」
「なんだよ、言いたい事があるならはっきり言えよ」
するとどうした事か、しとしと泣き出した。え? 俺そこまで強くは言ってねーよ?
「あーえっとね、ジリーお尻を角で突かれた時に……破けちゃったんだって」
「ズボンか? そりゃー」「パンツも」「……は!? え!?」
話をまとめるとこうなる。尻を突かれた時にズボンに大穴が開いて、しかも全力疾走した際におパンツまでも破けた。つまりお尻丸見えで全力疾走したという訳だな。……誰か録画してないか!?
「それで、私のやリサさん、フューラのでもサイズが合わないから、カナタのズボンを貸してもらいたいんだ」
「あれ? でもお前ジリーの服預かってなかったっけ?」
「下着はさすがに預かってないよ。それに……」
ん? 言いよどんだ。と思ったら次はリサさん。
「実は……ですね、先ほど急ぎ取りに行ったら、磨り減っていたところが虫に食われていまして、穴が開いていたのですよ。しかもその場所がお尻。なので今は替えがないのですよ」
ジリーなだけに尻ーに縁がある、なんて言ったら間違いなく殺される。
「……分かったよ。それならアイシャ、俺が金出すから下着を買いに行ってくれ」
「うん、分かった」
俺たちは一旦分かれ、俺はズボンを取りに自宅、ジリーとフューラは工房で待機、アイシャとリサさんで下着選びとなった。
――自宅。
「さーてと、どうしようかなー?」
タンスを漁り、相手は女性なので気を遣いつつ選ぶ。といっても全て男物だ。本当に迷う。
「あ、そういえばそこにも女性がいたな。シアが選んでくれるか?」
(……ううん)
「なんでよ? 人の服は選びたくないってか?」
(違う)
「いいのがないのか」
(それも違う)
「じゃあ……もしかして服装趣味がダサいのか?」
(……うん)
久々にこんなに恥ずかしそうなシアを見た。そうかそうか、魔王ファッションはクソダサなのか。きっと派手な色したヨレヨレのTシャツに、でっかく”魔王”とかプリントされてるんだろう。……さすがにないな。
仕方がないので自分で選ぶ。
俺が選んだのは、もう着ないであろう水色のチノパン。元世界で買ったはいいが俺には少しきつく、一度履いただけでそのままになっていたのだ。ジリーは俺よりも細身なので問題ないだろう。それに見せパンも出来る。……それで選んだんじゃないぞ?
「これでいいな。お前も魔王様姿に戻れたら俺の服着てみるか?」
(うん! うん!)
すんごい喜びよう。
「それじゃーもしも俺が先に死んだら自由に着ていいぞー」
(……ううん)
「ははは、冗談だよ。先に死ぬなって言いたいんだろ? それくらい分かってるよ」
(うん)
さて、工房に出発だ。
――フューラの工房。
「おーい」
「あ、ちょっと待ってください」
だろうな。俺はズボンをシアに渡し、扉に穴を開けて先に入ってもらった。すると丁度アイシャたちも来た。
「買ったか?」
「うん。お金は私から出すからいいよ。これくらいは負担しないと」
「そっか。ズボンはシアに預けてもう中だよ。俺は外で待機するから、終わったら声かけてくれ」
「分かった」
扉に耳を付けると……何も聞こえないな。
「入っていいよー」
「さてさてどんな……っておいっ!!」
急いで背中を向けた。ジリーの奴、わざとズボンを履かずにおパンツ姿でいやがった! ピンクの縞パンは眼福ではあるけど、さすがに丸見えはよろしくない。
「えー? 中身は三十六歳なんだろ? そんな恥ずかしがんなよー」
「お前はもっと恥ずかしがれ! バカタレが!」
「あはは! んじゃちゃんと履くよ。もう少しそうしておいてね」
年頃の娘にあるまじき行為だ。
「いいよ」
「全くもう、っておいっ!!」
冗談じゃないぞ、アイシャとリサさんまでおパンツ姿になっていやがった! これは背中を向けつつ本気で怒る。
「お前らはあの時の事を全く反省してないんだな! 分かった! そういう事するならばもう二度と会う事はない!」
「あ、ご、ごめん! 冗談だから! すぐ着替えるから!」
わらわらと急ぐ音が聞こえ……誰だコケたのは? 音が軽いからアイシャかな?
俺は一旦外に出て、窓越しに見える位置で待機。中からは見えるだろうが、外から中は見えない。これで帰ったと勘違いされる事はないだろう。
数分後シアが来た。
「終わったか?」
(うん)
「よし」
これでまだ反省の色が見えないならば、本気で激怒してやろう。
扉を開けて再度工房内へ。四人とも服装を正し小さくなっていた。
「全くお前らは、冗談で済む事と済まない事の区別もつかんのか? 俺は昨日言ったよな? 反省は口ではなく態度で示せと。その結果がこれか? お前らの反省はこういうやり方なのか? そういう痴態を晒してると、いつか取り返しのつかない事になるぞ」
目を合わせようとしない四人。それどころかパンツ見せただけで怒るなよとでも言いたげに頬が膨れているので、余計に腹が立ってきた。
「俺が怒ってるのはな、ああいう姿をした事だけじゃない。今日のお前らは醜態が過ぎるんだよ! 散々気を付けろとあれだけ言ってもまた危険行為に走る! 無闇に牛を煽った挙句服に穴は開ける! 人を置き去りにした結果牛に追いかけられて木にしがみつく! 仕舞いには年頃の娘が人前で堂々とパンツ見せる! 本当に、全くもって、どこまでも呆れる!」
これにはさすがに四人とも一言も発せなくなっている。
「次は怒らないからな」
「……え?」
一瞬許されたと勘違いしたな。
「怒る前に捨てる」
「あ……」
捨てるとは言ったがその気はない。俺の中では脅し文句なだけで、既にそれが簡単には出来ないほどに絆を持っているからだ。しかしこの怒りは本物。
「これでも中身は年長者だからと、俺なりに力を貸してきたつもりだったが、厚意を丸ごと全てドブに捨てられた気分だよ」
「ごめん……なさい」
さて、もうさっさと終わらせて帰ろう。お腹もすいた。
「ジリー、立て」
無言で従うジリー。
「サイズは……合ってるな。きつかったら言えよ」
「大丈夫。丁度だよ」
「そうか、よかった。それじゃあ俺は帰る」
あとは自分たちだけで考えさせよう。
しかし、その答えを聞くのは、当分先になった――。




