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小さな出会い

人によっては地雷かと思います。


それと、この話自体に作者からの特定の意図が込められている

などという事はありません。

話の流れ的な物なので、深く考えず読んで頂けるとありがたいです。


大丈夫な方のみどうぞ。

 文化祭で椿先輩が駆け付けるのが遅くなったのは、例の焼きそば屋台でちょうど接客中だったからだとか。責任感の強い先輩らしい。

 空条先輩からも、今回自分は生徒会の仕事で動くから自分のクラスを優先しろ、と言われていたらしい。

 その一言が無ければもっと早くに来ていたのだろうが、良くも悪くも椿先輩は空条先輩に忠実だ。


 先輩曰く、あの時は周りに生徒も大勢いたし、大袈裟な事にならないと睨んでいたそうだが、何せ相手が悪かった。

 結局この一件で、椿先輩も生徒会入りをする事になった。

 年末から年明けのイベント内容を考えるに、現在の空条家は相当ピリピリして来ているみたいだ。



 それから少々遅くなったが、木森君が同好会に参加する事になった。

 というか、いつまでたっても参加のそぶりさえ無い木森君に業を煮やした私が、させた。


 あちこちに根回しはしてたし何度も勧誘もしてたけど、最終的な切っ掛けは、恒例のお茶会中に友美の忘れものを好意で届けてもらった時に私が一杯飲んでけと誘ったのが始まり。

 観月先輩からも是非に、と言われ、白樹、東雲の1年コンビにも飲んでけよと誘われ、どことなく渋々席に着いた木森君を、あの時の話も踏まえ、同好会に参加させませんかと言ったのも私。


 流石に空条本家の一人息子を筆頭に、学園の有名人の集うこの非公式同好会に中途参加する勇気は無いと、例によって断固拒否といった風情だった所に、

「ね、参加しない?木森くんも一緒なら、きっともっと楽しくなると思うんだけどなあ」

 と友美の必殺おねだりが炸裂し、

「俺は別に構わないですよ、先輩方。木森とはあんまり話した事無かったし、せっかくだからさ、これを機会に仲良くやろうぜ」

 と、無駄にイイ笑顔の白樹君が後押し。

「でも、僕甘い物苦手だし…」

 何とか逃亡しようと木森君が逃げ口上を述べると、

「僕も良いと思うけどな、1年が増えるの大賛成!」

「甘い物苦手なら、甘くないお菓子も用意するよ?」

 木森君が甘い物苦手と知って途端に囲いに走った東雲君(新しい玩具ゲット!)と、苦手な人にこそ食べて貰いたいと闘志を燃やす観月先輩。

「…………」

 椿先輩も同類を逃がすものかと熱い視線を送る。

「そういえば例のカタログ、新しいのこれからだっけ?」

「ぅわあああああ!」

 大した事言ってないでしょうが、木森君。

 あと、君の趣味はそんな必死に隠す様な趣味じゃないと思うよ。

 ただ単に一般人からすればマイナーかつマニアックに見えるだけで。

「こりゃ逃げらんねえぞ、木森」

「観念するんだな」

 先生と空条先輩がさじを投げ、こうして木森君の同好会参加がめでたく決定したと言う訳だ。


 木森君からは、カタログの件は後日持参と言われた。

 ちょっとほじくって聞いたところ、夏の大祭で腕の良い造型師さんと知り合ったらしく、素体づくりの方にも手を出し始めたんだとか。

 ゲーム中描かれていない部分では、こんなディープな話になっていたとはね、としみじみ思ってしまった。


 木森君が時期的には遅参だったものの、何はともあれ、これでガーデンティーパーティーメンバー、全員集合!

 なんかこう、妙な達成感がじわっと。



 そんな11月の第1週。

 とある小さな出会いがあった。


 天気のいい日曜日、私は友美と近所の公園へ来ていた。

 ここは郊外の植物園ほど大きくは無いが、小さな池や小さな林があって、近所の人の散歩コースになっている場所だった。

 この時期は、あちこちに植えられた楓が鮮やかに色づいているので、ジョギングがてら紅葉狩りに行こうと友美を誘ったのだ。

 そういえばいつだったか、白樹君とここを通りかかった事があったっけ?


 噂をすれば影、とはよく言ったもので。

 実際に口にしなくとも、それは当てはまるらしい。

「あれ、白樹くんじゃない?」

 気が付いたのは友美だった。

 公園の入り口から少し入った所で、白樹君らしき人物が何故かしゃがみ込んでいた。

「白樹くん」

 友美が声を掛けると、本当に珍しく何か戸惑った様な白樹君がゆっくり振り向いた。

「あー、篠原に央川…」

「どうかしたの?」

 弱り切った様な、普段見せた事のないその表情に友美も驚いたのか、ちょっと上ずった声で友美が聞くと、白樹君は立ち上がって少し体をずらした。

「あ…」

 そこには、小さな白い体を震わせている、仔犬が一匹。


 びしっ、と思わず固まった。


「いや、散歩に来ただけのつもりだったんだけど、こいつ見つけちゃってさ…」

 苦り切った声で言う。

「2人は?この公園良く利用するんだっけ?」

「私の家も櫻ちゃん家もこの近所だから、昔からここは良く知ってるよ。今日は紅葉見に来ようかって、櫻ちゃんが」

「そっか…、央川とはその話した事あったけど、本当によく来てるんだな」

 ああ、思い出した。確か体育祭の直前だった気がする。 


 にしても、ここらで一度ブチ切れても良いかなあ。


 この世界のイベント発生の法則、ぜんっぜんわっかんない!!


 なんなの!?今日だって、友美と一緒だよ!?

 本人の気持ちを確認した事は無いけど、もうイベント的には空条先輩の個人ルート入ってんだよ!?何でここで白樹君のイベントが起こる訳!?ありえない!

 それとも私!?私が悪いの!?

 だったら私だけで良いじゃん!何で友美も一緒なの!?どっちのイベントかはっきりしてよ!理解できないんだけど!ホント勘弁!

 ハイハイさすが現実!妙な所で理不尽だって知ってたけど!知ってたけど!!(2回)



 一度起こってしまえば、内容に関しては良く知った物なので、思い出しながら進行を見守るだけで済むんだけどさ…。

 いや、そうとも限らないか。1学期の頃とか見た事無いイベント(と言って良いものか)になっていたしなあ。

 まあ、今回に関しては知っているイベントなので、戸惑わずに済みそうだが。


 多少気分が落ち着いた所で、改めて「彼」を見やる。

 薄汚れた白い毛に包まれた小さな体。首輪も無いし、この時期の子が一匹で外に出るなんて考えにくい。

 きっと箱か何かに入れられ捨てられたのを、自力で出てきちゃったんだろう。もしかしたら怪我の1つでもしているかもしれない。

 風邪をひいているのか、うずくまり、時折「ぴー」と鼻水交じりのか細い鳴き声をだす。

 私は、はあ、と1つ溜息をついて携帯を掛け始めた。

「友美、近所の動物病院、出来れば評判の良いとこ」

 指差しで指示。

「あっ、うん!」

 友美も慌てて携帯をいじり始めた。

「央川?」

「白樹君はその子抱いて、体温下がってる筈だから出来るだけ温めて」

「え、あ、ああ」

 どれくらい彷徨っていたか知らないけど、体力も体温もかなり下がっている筈。

 助かるって信じてるけど、知ってるけど、この世界が現実である限り、絶対は無い。だから、出来るだけの事はしないと。

「もしもし?」

 私の家は誰も居ないからダメ、東雲、観月家、篠原のお家は食べ物関係だからアウト。空条のお家はそれどころじゃないから論外。同じ理由で椿先輩も除外。木森君家はマンションの上、小さな仔犬が住むには色々危険物が置いてあるのでセルフボツ。

 となると、クラスの友達で大丈夫そうな子の家から順番に。後は親戚かな?こっちは望み薄だけど。

「私、央川だけど…」


 結局3件掛けて駄目だった所に、白樹君が待ったをかけた。

「俺、引き取るよ」

 その言葉に携帯を掛け始めた手を止めた。


 一応“そうなる予定”だったけど、まあ、後押しになったなら良かったかな。

 この件に関しては、別に飼い主が白樹君じゃなきゃいけない理由も無いし。

 大切なのはこの白い「彼」が今後幸せに暮らせるかどうかだ。

「良いの?」

 友美が心配そうに聞いた。

「俺ん家一人暮らしで、セキュリティのしっかりしてる所だけど、ペット可なんだよ。もちろん条件はあるけどな。多分大丈夫だろ」

「そっか、白樹くんの家ってマンションだったっけ?」

「ああ」

 そっけなく返す。自分の事を聞かれるのは、まだ少し苦手意識があるのだろう。

「白樹君、念のためにマンションの管理人さんに確認してみたら?それで友美の方、病院は?」

 話題を切り替え促す。

「あっ、ええとね」

 友美の先導で近くの動物病院へ。白樹君は仔犬を抱えながら器用に電話を掛け始めた。


 良く考えたら、ここで二手に分かれてホームセンターに行って買い出し、って手もあるんだよな。

 まあでも後回しでも良いか。飼い主の希望って言うのもあるだろうし、お金の問題もあるしね。

 ここまで関わったからには、後の事を全部白樹君に任せると言う選択肢は私にも友美にも無かった。

 白樹君は良い顔をしなかったけど、全部自腹だと金額が大変な額になってしまうので、病院は割り勘、この後行く予定のホームセンターでもみんなで出し合う、それから先は白樹君の負担、と言う事で納得してもらった。

 多分ワクチンとか、予防接種とか、月々の薬とか、それだけでも結構かかると思うんだ。後、役所で登録とかね。頑張れ、白樹君。

 ……家族は頼らないと思うんだよね。空条ほどじゃないにしろ、彼の家庭環境も複雑な筈だ。


「こんなに混んでいるとは思わなかったよ」

「まあ、この近所にはここだけだから」

 入ってすぐに人の多さにげんなりする。気持ちは分かるけどさ、

「ほらほら2人とも、まずは受付しないと」

 カウンターに陣どり受付をお願いする。

「名前、どうするの?」

「ぴーすけ」

 友美の言葉にきっぱりと返す。

「ぴーすけ?」

「もう決めちゃったの?」

「うん」

 白樹君にもきっぱりと言う。

 ホントなら白樹君がな名付け親なんだけどね、無駄は省く方向で。

 てか、この名前以外あり得ない。ぴすぴす鳴くからぴーすけ。


「ぴーすけだよ、この子はぴーすけ」

 手を伸ばし、白樹君に抱かれた彼の鼻をつつく。


 ぴす、と“ぴーすけ”が鼻を鳴らした。



「大事なくて良かったね」

 病院は1時間近く待つ事になった。

 顔を出したお医者様と看護婦さんに少し見て貰った所、緊急性は無いと判断され、小さな毛布とストーブを用意してもらい、順番を待った。

 今すぐどうこうはなさそうだが、野外にいて体力が低下していると言う事と、お腹の中に何が居るのか分からないのでひと通り検査すると言う事で、数日入院して検査と経過観察することになった。

 市内のホームセンターに移動してぴーすけのお買い物。

 どれくらい大きくなるのか私にも分からない。雑種だと思うし、ED後のエピローグには彼自身についての描写は無かった気がする。

 …足は結構しっかりしてた気がするんだよな。まあ、今すぐ急に大きくはならないだろうし、とりあえずは小さめサイズで揃えて、と。


「白樹君、どっちの柄が良い?」

「うーん、こっち?」

 犬用ベッドに敷く小さな毛布を選ぶ。

 寒くなって来たから、あったかいもふもふした手触りのやつが良いだろう。

「これとか手触り良さそうだけどね」

「おっ、いいな、これ」

 すぐ隣で手を伸ばして手触りを確認する。

 満足できる手触りだったのか、いつもの白樹君の笑顔で、俺もこれ欲しいかも、ってにかっと笑った。

 ……あれ?ここまで至近距離なの、久しぶり?

「…あんまり高すぎるのは止めた方が良いよ、使っている内に汚れて来るから、洗ったり干したりしてると1年位しか持たないし」

 さすがにちょっと意識する。

 こう見えても私現役JKですよ!かっこいい同級生がすぐ隣にいたらドキッとするんです!しちゃうんですよ!

 …誰に言っているんだか。

 思わず自己ツッコミをした後、気を取り直して白樹君とペットフードコーナーに足を向けた。


「央川って犬飼った事あるの?」

 すぐ後ろからそんな事を聞かれる。

「ないよ」

 家は親が居ない事も多かったし、弟も妹もそんなに動物に執心した事が無かったから、ペットを飼う、と言う話は出た事が無かった。

「その割に詳しいな」

「これ位皆知ってる事じゃないの?」

 良く分かんないけど。

 ああ、でもそうかな。予防接種の話とか月一で投与しなければならない薬の話とか、実際に飼っている人でもなければ知らない事なのかもしれない。


「――――」


 何処か心の遠くの方で、誰かが優しく、少し切なく、何かを呼ぶ声が聞こえた気がした。


「興味のある奴なら知っててもおかしくないだろうけどな」

 白樹君には少し苦笑されたみたいだった。


 ペットフードコーナーについて子犬用の餌を物色。

 何を食べるか分からないから数種類選ぶか、それとも病院で食べた食餌を聞いてからの方が良いかな?

「動物は好きだよ、好みはあるけど」

 大きい犬とかは怖くて触れない。爬虫類とかもパス。至って一般的ですよ?

「もしかして、自分で飼えたら飼ってた?」

「多分ね」

 ぴーすけは“昔から”好きだったし、条件さえ合えば家で引き取ることも真っ先に考えた筈だ。

「気に入ったんだ?ぴーすけの事」

「んー?好きだよ」

「ちょっと会っただけなのに?結構あいつボロボロだったよな?そんなでもか?」

 笑う。

 そう言う君だって数ヵ月後にはメロメロじゃないか。

「気に入ったっていうか、見た瞬間、ああ、ぴーすけだ、って思ったんだよ」

 ぴーすけだから好きっていう部分はあると思う。多分白樹君には分からないだろうけど。

「なんだそりゃ」

 案の定白樹君は、良く分からなそうな誤魔化し交じりの笑顔を浮かべていた。



 ぴーすけの退院の日には、私と友美も付き添った。

 深刻な怪我も病気も無し、体調的には大丈夫と医師の太鼓判を貰ったが、しばらくは外出禁止の日々が続くのだろう。

「よかったね、ぴーすけくん!」

 友美は自分の事のように喜んだ。

「篠原も央川も有り難うな、色々面倒かけちゃってさ」

「良いんだよ!私だってほっとけなかったんだもん、白樹くんが引き取ってくれてホントに安心した!」

「ああ、こいつの事は俺に任せとけって」

 白樹君がぴーすけを抱いて力強く請け負う。

 用意した真新しいキャリーケースに入れる前に、ぴーすけに手を伸ばす。

 これでしばらくお別れかと思うと、やっぱり残念だ。

 抱かれたぴーすけの頭を撫でる。

「ご主人をよろしくね、ぴーすけ」

 少しでも、白樹君の心の支えになってくれますように。


 いや、なるんだっけ。

 今後のシナリオを思い浮かべる。

 展開に直接関係する事は無くても、白樹君と友美のキューピッド役をしっかり務め上げた彼だ。

 この現実でもしっかり彼を支えてくれるだろう。

(あれ?)

 そうか、と思う。

 そもそもこれは、友美と白樹君の恋愛イベントだったのだなあと改めて気づく。

(恋愛分どっか行ったな)

 苦笑して手を引っ込める。

「もういいよ」

 ぴーすけを抱いたままの白樹君に告げる。

「あ、ああ」

 少し戸惑った様子の白樹君が、ぴーすけをキャリーケースに入れ、私達は病院を後にした。


 友美と二人、ぴーすけの事について話しながら家路をたどる。


 すぐ後ろで、ぴーすけのキャリーケースを抱えた白樹君がじっと見つめている事に、私は気付かなかった。


「櫻ちゃん、白樹君じっとこっち見てるよ?何でだろ」

「え」

「ふふっ、もしかしたら親身になってくれた櫻ちゃんの事、意識しちゃったのかもしれないよ?」



 そんな風にこそっと耳打ちして来た友美の一言が無ければ。



 えー……?





イベントならしょうがない。


そう言う事で流してやってください。

あと、わんこ飼うって事はそんな簡単な事じゃねえ、っていう突っ込みもあるでしょうが、どうぞ流してやって下さい。


所詮この話はご都合です。ゲーム内のイベントが元になっている時点で推して知るべしなんです。


こまけぇこたいいんだよ


あと、主人公さんはJKって言葉が使いたかっただけ。

おい、そこの年齢詐称。あれ?今さら?


ぴーすけ:雑種いぬ、中、小型犬? 特技、わたあめ?

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